第34話 関門解錠のキー

「………はい結構です。これでリハビリは終了です。

本当によく頑張りましたね」


「ありがとうございます!」


長かった……!

まさか半年ちょいも掛かるなんてねぇ。

怪我自体は三、四ヶ月くらいで治ったんだけど、リハビリが長かった。


しばらくベットで寝たきりだったから最初の方なんかちょっと歩いただけで息が切れるくらいだったよ。

腕は一部の傷が神経とか筋にまで到達してたみたいで、軽い物しか持てなかった。ちなみに胴体に巻いてた包帯の下にあった背中の大きな傷は痛々しい跡を残してる。


もちろん敢えて。そっちの方が被害者感が出て良いかなって。

跡が残るような治療は神癒のイヤリングの癒しオプションで設定出来た。

配信でこの傷跡残せないかなって呟いたらママが教えてくれたんだよね。


特に引き攣ることは無いからほんとに飾りみたいな物だね。


「明日に魔法省の方達が来られると聞いています。

怪我は治りましたが、安静にしていてくださいね」


「はい。今までお世話になりました」


「いえ、少し早いですが退院おめでとうございます」


「ありがとうございます」


リハビリ棟から離れて僕の病室………じゃなくて診察室へ向かう。

最後の確認ってやつだ。

レントゲン撮って、膝をハンマーみたいなので叩かれて、腕を揉まれて、最後に背中の傷を見られる。


「うーん……やっぱりこの傷は残っちゃいますね……霧島さん」


「はい」


「包帯はなるべく取らないでください。この傷だと肌着が擦れるだけでも結構痛いと思うので。

お風呂の時以外は常につけていてください」


「分かりました」


「一応、痛み止めは出しておきますのでこの後、薬を受け取ってください。

ではこれで終了です。お疲れ様でした」


「ありがとうございました」


さて、と。

では明日に向けて準備をしようか。

といっても持っていくものはほとんどないけど。

精々、替えの包帯くらい?


あ、アレを買っておかないと。

えーと、ショップを起動して………あったあった。

位階アップ(一時)の薬水。お値段何と6000ポイント。


これを飲むと一時的にだけど一つ上の位階になれる。

そのまんまの効果だね。

なんでこのタイミングなのかと言うと意外と1000ポイント集めるのが大変だった事。


効果時間が三日な事。そして結構な“酔い”が発生するから。

この“酔い“ってのが洒落にならないらしい。

平衡感覚は無くなって立てなくなり、記憶は混濁。


効果が無くなってもしばらくは頭痛が残り、吐き気も残る。

なのに見た目に一切の変化が無いからいやらしい。

頭痛や吐き気はともかく、平衡感覚がなくなるのと記憶の混濁は何とかして慣れないといけない。


本当なら昨日の時点から慣らしておきたかったけど、体調不良を見抜かれて入院期間が伸びたら6000ポイントがパーだ。だから最終検査後の今しかない!

コルクの栓がポンと音を立てて外れる。


匂いは……柑橘系のさっぱりした感じ。ほんとに詐欺なアイテムだな………。

恐る恐る口を近づけて……コクリと一口含む。


「これ、レッド⚪︎ルだ」


懸念していた凄まじい“酔い“は来ない。

アレ?もしかして警戒しすぎたのかな?


「警戒して損したなぁ」


残りを一気に飲み干す。

あーケミカルフレーバー。


「アレ?世界が傾いて……」


バタンと音が鳴り、意識の接続が切れる。

全部飲み切ってからかよ………!!




チュンチュンチュン………


「……まぶし」


僕……何で寝てたんだ?

やばい、昨日の記憶が全くない。

ていうか頭痛い。割れそう。


え、二日酔い?

もしかして昨日お酒飲んだ?

周りを見渡してみると床に落ちているビンとコルクがある。


「もしかして……」


配信魔法を発動して購入履歴を見る。

最新の一番上には位階アップ(一時)の薬水が。

そういうことか………。


「あー吐きそう」


しばらくはこの頭痛と吐き気との格闘かぁ。

というか記憶の混濁ってレベルじゃなかったね。

もはや記憶の部分消去だよ。


未だに思い出せないもん。

もう絶対飲まない………。

でもこれで最後の関門を突破できる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後の関門とは……。

今日は短めです。これも全て学校が悪い。

学校、だるーい。

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