第24話 演目:種植え その2
赤い閃光が乱れ降る。
それは蠅の魔物たちに降り注ぎ、爆発を起こす。
しかし砂塵が晴れるとそこには傷一つない魔物たちの姿。
「ちくしょうが!!」
すかさずムサメが風を付与した刀で切り掛かるが、硬質な音を響かせて弾かれる。
「しまっ!」
今度は蠅の魔物の反撃がムサメを襲う。
腕を噛みちぎられ、タックルを受けて転倒する。
その隙を逃さず別の魔物たちが一斉にムサメへと群がる。
「させない!!」
フィリアが“鮮火“を降らして牽制する。
蠅の魔物は急ブレーキをかけて攻撃を避ける。
その隙にセレナがムサメを回復させる。
「あーもー!どういうことや!?いきなり私らの攻撃が通じんようになった!」
「最初は一方的に倒せてたのに、どうして………」
「はいはい落ち着いて。前にも攻撃が通じない敵はいたでしょう?
その時は」
「攻撃の威力をあげる。だよねセレナちゃん!」
「ええ。大丈夫よ最初に比べたらもう半分もいないわ。このまま押し切るわよ!」
「うん!ってアレ?ムサメちゃん?」
「ん。ああ、すまんな。ちょっと考え事してた」
ムサメはこう考えていた。
ホンマにそれでええんか?と。
ムサメが疑問を持つのは攻撃が通じない時と攻撃が通じる時。二つの場面があるからだ。
これまでの経験だと後者の場面でフィリアや自分の攻撃の威力が上がったと見るべきだ。
もし自分の攻撃のみ、通じる時と通じない時があるならムサメはそれで納得した。
ムサメは刀を降るようになってまだ間もない。故に自分の攻撃の威力など大雑把にしか調節できない。
しかし今回はどれも同じくらいの力で振ったし、自分はそう思っている。
そのため、自分だけなら納得しただろう。
だがしかし。フィリアは違う。
訓練期間中、魔力制御を磨き続けた彼女は三人の中で、いや基地内の魔法少女の中でも頭ひとつ抜けて魔力制御が上手だ。そして魔法の威力、特に放出系は魔力制御が上手いほど威力の調節が上手い。
なのでフィリアの攻撃に威力のムラはないはずなのだ。
それなのに攻撃の通じる時と通じない時がある。
それが彼女の中で疑問となっていた。
「何か、法則があるんやろなぁ……」
「え、ムサメちゃん?」
「ごめん、ちょっと確かめたいことがあってな。攻撃の威力は上げずに戦ってみいひんか?何や違和感があってなぁ」
「な、何で!?このままじゃ私たちの魔力が……
どうしようセレナちゃん」
「……分かったわ。ムサメがそういうなら何かあるんでしょう。でもタイムリミットは3分よ。それを超えたら攻撃の威力をあげる方針に切り替える」
「ありがと。じゃあ行くで!!」
「「うん!」」
初動はフィリアの“花火“。
魔物たちが固まっている場所で大爆発を起こして砂塵を吹きあげる。
それを目隠しにムサメが一気に接近する。
粉塵が晴れると同時に切り掛かる。
魔物たちは爆発で数も減った様子も傷付いた様子もなかった。
ムサメはお構いなしに切り掛かる。
今度は隙が少なく、もし体制を崩されてもすぐに修正が効くように振る。
刀は抵抗もなく、魔物を切り裂く。
「フィリアは通さず、私のは通る……か」
ムサメが続け様に魔物を切り裂いていく。
背後ではフィリアも“赤刀“で何匹が屠っている。
「よーし!大きいのいくよ!!」
フィリアが大きく腕をあげる。
頭上では圧縮された火が燦然と輝き、今にも暴発しそうだ。
そして腕を振り下ろす。
「“鮮火“!!」
大量の“鮮火“が魔物たちに降り注ぐ。
この技はこのチームの決まり手のようなもの。
強力な力を持った魔物も数の多い魔物もこの技で倒してきた。
砂塵が晴れるとそこには無傷の魔物たち。
しかし、すでに接近していたムサメが超速で切り掛かる。
刀には風を纏わせ、範囲が拡大している一振り。
まるで居合いのような鋭さとスピードで振り抜く。
が、今度はカキン!と弾かれる。
「ちっ!これはダメなんか!」
「ムサメちゃん!危ない!」
フィリアが再び“鮮火“を大量に降らせてムサメをフォローする。
この攻撃を魔物たちはバラバラに散開して回避する。
「ムサメちゃん大丈……ムサメちゃん!
セレナちゃん回復!」
「分かったわ!」
ムサメは足と頭から出血をしていた。
魔物たちが散開して攻撃を回避した際、何匹かがムサメに攻撃したのだ。
「っつー……あいつら毎回噛み付いてくんなや!
乙女の柔肌に傷が残ったらどうすんねん!!」
「大丈夫よ私が治すんだから。それよりもうすぐ3分よ。何か分かったの?」
「ああ。何となく、やけどな。多分間違ってへん」
「そう。じゃあ反撃開始よ!」
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【計画始動】演目:種植え【戦えない配信者】
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フェシズ:……ってわけなの。
:なるほどなぁ。攻撃の耐性を急速に獲得するのか。
:しかもあの数。本当に厄介だな。
:実際、どこの画面でも魔法少女は苦戦してるな
:ああ。六華らしき魔法少女にも有効みたいだ
古参の神その1:ただ、耐性の獲得メカニズムを考えると……
古参の神その3:ええ…多分六華にはそろそろ突破されるわね。
古参の神その2:まぁ元々時間稼ぎって役割だし、充分なんじゃない?
:え、どういうこと?
:あ、攻撃が通じてる。
:ほんとだ。耐性を獲得するんじゃないの?
:アレじゃね?一時的なだけとか。
古参の神その1:いやまあ確かに一時的といえばそうだけど。
フェシズ:一応、条件を満たしてる間は永続ね。
:ん〜?どういうことだ?
:あ、六華らしき魔法少女が倒し切った。
:うわぁ……早いなぁ。
古参の神その3:メルヘスくんは早速保険を使うのかしら?
フェシズ:んー、それは無いわね。
:そりゃまたなんで?
フェシズ:保険ってワームのことでしょう?
ワームだとどうしても攻撃の受け性能がベルゼに劣っちゃうから六華に当てるとなると悪手なの。
:でもベルゼが全滅した場合の保険でしょ?使わないのはおかしいでしょ。
フェシズ:使わないわけじゃないわ。タイミングの問題なのよ。ワームは速攻倒されると意味がないの。
ワームの仕事は負傷者を増やすこと。それが最高効率なのが、一斉蜂起なの。
古参の神その2:なるほどな。そう言われると納得だ。
古参の神その1:でも問題はその一斉蜂起が行われるまで六華の時間稼ぎ役がいないってことだな
古参の神その3:あ!六華の画面見て!
:ウオォ!!ナイスタイミング!!
:メルヘスちゃん、もしかして配信外で仕込んでた!?
フェシズ:ありえる……あの子なら「サプラ〜イズ!」って言ってそうだわ。
:あー言ってそう。
:目に浮かぶわ
古参の神その1:これだからメルヘスの配信はやめられない!!
古参の神その2:これだからメルヘスちゃんの配信はやめられない!!
古参の神その3:これだからメルヘスくんの配信はやめられない!!
:シンクロしてて草。
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何だかんだで書いちゃいました。
やっぱり書きやすいですね。
あ、ベルゼの攻撃の無効化のメカニズム分かりますか?
正直分かったらびっくりです。
でも無効化するか攻撃を受けるかの切り替えのメカニズムは分かると思います。
ヒントは『時間稼ぎ』です。
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