第25話 演目:種植え その3
「“花火“!」
「はぁあ!!」
フィリアが爆発を起こし、ムサメが刀に風を纏わせて振り切る。
しかし魔物たちは無傷。
攻撃の無効化が行われたのだ。
「これで12回目……片方だけを無効化するわけでも一定回数防ぐわけでもないのか……いや、その一定回数はなんぼか分からんから排除するのはあかんか」
「ねぇフィリアちゃん!まだ続けるの?本当に魔力がしんどくなってきたよ!?」
「ああ、すまんな。もうちょい付き合ってくれ」
フィリアはムサメから威力の高い攻撃を連発するように言われていた。
これまでの攻撃無効化の傾向からして広範囲殲滅、多くの魔物をターゲットにした攻撃は必ず無効化されたからだ。いくつかの攻撃が通る以上、無効化は無敵ではない。
何かカラクリがあるのだ。
今の所、ムサメは解明できていないが。
しかし、確実に。魔物たちを追い詰めていた。
「“鮮火“!!」
赤い光線が降り注ぐ。
魔物たちは回避すらせず、真っ直ぐに突っ込んできた。
やはり魔物たちは無傷でフィリアとムサメがそれぞれの獲物で対処する。
「くそっ!絶対に一気に倒させてくれへんな!少しずつ削るしかないんか?」
ムサメは苛立っていた。
三分間、色々考えた結果。攻撃の無効化は大きな攻撃が来た後には行われないのではないか?だった。
フィリアの“花火“に広範囲に向けての“鮮火“。ムサメの刀に風を纏わせての一閃。
それらが無効化された後の攻撃は必ず通じていたのだ。
ムサメはそれで確信したのだ。
だから大技連発という戦法をとった。
しかし実際には上手くいっていない。
何回大技をぶつけても無効化される。
上手くいくどころか、攻撃を連続で無効化されてこっちの士気が下がってしまった。
攻撃が無効化されることで魔物の攻撃がこちらに当たることも多くなってきた。
そのことがムサメを苛立たせ、焦らせ、いつもの冷静な態度を奪っていく。
そして敗北的な思考の扉を開かせていた。
『やばいやばいやばい……このままだと全めt……』
「ムサメちゃん!」
「……フィリア?」
致命的な敗北思考に入りかけていたムサメの意識が浮上する。
「落ちついて!顔が怖いよ!」
「余計なお世話じゃボケ!これは生まれつきや!」
「ご、ごめん!そういうつもりじゃ……」
「余計な言い争いしないの!目の前のことに集中しなさい!」
「っさいのぉ……」
いつもの下らない言い争い。
それがムサメを普段の調子に戻した。
頭のエンジンが掛かる。視野が広がり、冷静に情報を処理し始める。
「ムサメちゃん。多分5匹」
「オーケー。ナイス情報や」
主語のない会話。
前提を共有していないと伝わらない会話。
しかし、このチームにはそれで充分だった。
「しゃあ!じゃあ行くで!私が捌いて」
「私が倒す!」
「なら私は補助ね」
合図は無かった。
が、三人はそれぞれの役割にあった場所に展開する。
ムサメが前衛で他二人が後衛で固まっている。
魔物はムサメに飛びつくが、ムサメはそれを的確に捌いていく。
オキの変幻自在の剣術に比べれば単調に突っ込んでくるだけの魔物など簡単に捌ける。
仮に負傷してもセレナが即座に回復してくれる。
そしてムサメが捌くついでに後ろに弾いた魔物の数が5匹になると。
「“鮮火“!」
5つの光線が空を走り、魔物たちに直撃する。
攻撃の無効化は行われず、キッチリ5匹仕留める。
「やった!上手くいったよムサメちゃん!」
「よっしゃあ!!このまま攻めるで!!」
「了解!」
変わらず突進してくる魔物を捌きながら、キッチリ5匹を二人の方へ弾く。
それをフィリアが“鮮火“で貫き、仕留める。
「おっと。それはさせないわよ」
ムサメの背後から奇襲を仕掛けていた魔物をセレナの魔法で仕留める。
また同じ方法で魔物を仕留める。
何故急に無効化をされなくなったのか。
それは無効化が行われる条件を見抜いたからだ。
フィリアは攻撃が無効化されてからムサメ同様、相手のことを観察していた。
ムサメは無効化の上限を探っていたが、フィリアはまた別の視点で無効化の攻略を図っていた。
即ち、攻撃を受ける際の相手の数だ。
フィリアも大技は必ず無効化され、その後は攻撃が通じていることには気づいていた。
そしてムサメは気づいていなかったが、相手が大技を受けた時に全ての個体が攻撃の無効化が行われていたわけではなかった。
毎回必ず3〜5匹は仕留めていた。
それに気づいたフィリアはこう考えた。
攻撃の無効化は5匹以上の場合なのではないか?と。
そして実際、攻撃の的を5匹に絞ると攻撃の無効化が行われていない。
「よっしゃ!ラスト5匹や!」
「任せて!“花火“!」
最後は派手に“花火“で仕留める。
「はぁはぁはぁ………ああぁ長かった!!」
「はっはっはっ……ホンマにな……どれぐらい戦ってたんや?」
「ざっと4時間ってところかしら……長かったわね……」
普段の出動時間とほぼ一緒だ。
同一の相手にここまで時間を掛けたのは初めてのことだった。
三人は疲労困憊で地面に倒れ伏していた。
三人は少しの間休憩した後、作戦室へと向かった。
戦闘完了の報告のためだ。
そして作戦室に到着すると、そこにはまだバタバタと忙しそうに走り回る職員の人たちがいた。
「あのぉ……」
「何!?ってあ、フィリアさんたちですね」
「は、はい。戦闘完了の報告を……あの、何かあったんですか?」
「はい……それも大事が……」
「えっと……それは一体……」
嫌な汗が背中を流れる。
「神戸市が魔物に襲撃されました……」
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【計画始動】演目:種植え【戦えない配信者】
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:ポツポツとベルゼ討伐完了したとこが増えてきたな……
:だなぁ……結局古参たちは耐性獲得メカニズム教えてくれなかったし
古参の神その1:だって説明が難しいし……
古参の神その2:だって説明面倒だし……
古参の神その3:こういうのって考察した方が面白いのよ
:おい、その2
:その1とその3の理由なら納得だけどなぁ
:じゃあ考察話していいか?
:お、いいぞ
:ありがと。多分クールタイムがあるんじゃないかと思う。一定時間のクールタイムがあるから被害の多い攻撃だけを無効化して被害が少ないのは許容してるんだ。
:あーぽいな
フィリア:不正解ね。クールタイムはないわ。でも被害の多い少ないは掠ってる所はあるわ
:マジか。結構自信あったんだが……
:あ、広範囲攻撃連続で撃ってるとこある
:ほんとだ
:この子らってメルヘスが魔法少女の基地に潜入した時の子達じゃない?
:ああ!!
:見たことあると思った!
:確かに連続で撃ってるな。そしてその全てを無効化してる
:クールタイムの説は無くなったな
:じゃあいい?
:お、新しい考察か?
:いいぞー!
:じゃあ。恐らく、無効化するのは攻撃を受ける数に関係してると思う。一定以上の数が攻撃を受けたら攻撃を無効化するって感じ
:ちなみに根拠は?
:いろんな画面を見てたけど、広範囲攻撃の時に全部の個体が攻撃無効化してたわけじゃない。何匹かは倒されてた
:ん〜?
:あ、ほんとだ
:よく気づくなぁこんな細かいとこ
:それでジャッジは?
古参の神その2:うーん微妙だなぁ
古参の神その3:そうねぇ…正解といえばそうだけど
古参の神その1:でもそれは今回の場合だろ?
:なんだなんだ?
:本当にどんなメカニズムしてるんだ……
フィリア:私的には今回の場合のみ正解といって良いと思うわ。本来のメカニズムとは違うけどね
:おお。お墨付きが出た
:ぶい
:お?保険が発動したな
:視点が切り替わったね
:おーおー派手にやってるねぇ
:さて、今メルヘスちゃんは何をやってるんだろうねぇ
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何だかんだ筆が進んでます。
フィリアたちは結局消極的手段でベルゼたちを倒しましたが、実は一網打尽にできる方法があるんです。もちろん耐性をつける前に一気に倒すってのはなしですよ?
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