第20話 人口大氾濫進行

中国地方戦線基地に来て一ヶ月ほど経った。

不安だったチーム分けも三人一緒のチームになって、今日も中国地方戦線で魔物を倒す。

今のところ大きな怪我も負ってないし、結構バランスの良いチームだと思うんだよね。


彩楓ちゃんが最前線で魔物と斬り合って、私は彩楓のサポート兼、中距離火力。涼菜ちゃんは後方から回復を飛ばしてくれる。というか彩楓ちゃんがすごい。

師匠のオキさんの訓練を受けたからか、攻撃の受け流し方とカウンターがすごく上手い!


もう二度とやりたないわ!と叫んでたけど。

確かにどれだけ打ち込んでも一切掠りもせずにカウンターが飛んでくるのは心が折れそう……。

彩楓ちゃん、訓練を重ねる毎に絆創膏が増えてたしね。


涼菜ちゃんもとても強力な回復を飛ばしてくれる。

訓練期間にガーベルさんからひたすら人体の仕組みについて講義されていたみたいで。

しかも知見を深めるためと病院に連れて行かれて、手術室に入って手術の様子を見学させられたり。


とってもためになるし、実際に回復の腕は上がったけど、もう二度とごめんだわ。とは涼菜ちゃんの言だ。

私も厳しい訓練を受けたと思ってたけど、二人も苦労したんだなぁ。

ちなみに私ももう訓練は受けたくない。爆発、結構痛い。骨に響く感じがして時々折れてるんじゃないかって思うもん。


「今日はこの辺にしときましょう」


「やなぁ。いやぁ疲れた」


「お疲れ二人とも」


「フィリアもなぁ。しかしフィリアの魔法は火力高いな」


「そうね。ほとんど一撃で倒してるわ」


「ありがとう。訓練のおかげだね」


「魔力の圧縮だったかしら?」


「そうそう。私は魔力量が少ないからね。魔力圧縮して節約しないと」


プルルルル……


ポケットから振動と音が鳴る。

基地から支給されたスマホだ。


「お?電話来てるで」


「出るわね。もしもし」


『もしもし!フィリアさんのチームですか!?』


「は、はい。そうですけど……どうしたんですか?」


大氾濫進行スタンピードです!中国地方戦線で大氾濫進行スタンピードが起きたんですよ!

すぐに撤退してください!運転手には話を通してますので今すぐ撤退してください!」


大氾濫進行スタンピードとは何らかの原因で魔物たちが街に大量に進軍してくる現象のこと。

規模はピンからキリまであって、小さいのものだと1日で制圧できたりするが、大きいものになると逆に一日もかからずに街が制圧される。


大氾濫進行スタンピードは規模の大小に関わらず、作戦を立てないと鎮圧は無理だ。

だから撤退しろと言われたんだろう。


「分かりました!今から撤退します!」


私たちは無言でお互いを見て車の方へ走り出した。

転移装置とかがあれば良かったんだけど、そんな便利なものはないからね!

運転手さんは私たちが乗り込んだのを確認すると一気に加速して基地へと帰還した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さてさて?これで魔物たちの誘導は完了と。じゃあとは潜入するだけだね」


大氾濫進行スタンピード、思ったより力技で再現したな

:いやまぁ確かに効率的ではあるけど……


「だってわざわざ全員使役するのめんどいんだもん。なら後方で特級に暴れてもらって魔物を押し出した方が楽じゃん」


ちなみに暴れてもらってるのはジャガーの魔物の窮奇。

絶望的なまでの戦力差があるから窮奇のロストは考えなくてもいい。

いやぁ魔力で餌付けしまくってたら、めっちゃ強くなったよね。


ぐるぐる言いながら甘えてくるのが可愛すぎてついつい多めに上げちゃうんだよね。

もちろん他の特級も可愛いから平等な量を上げてるけど。


「さて。じゃあ増員の人員が確認でき次第、飴で隠れてついて行こうか」


:あ、魔法少女たちの戦いも見たい

:確かに気になる

フェシズ:今度の参考になるから良いわね


「魔法少女の戦いかぁ。僕も気になるけど、目的は侵入だから無理なんだよねぇ」


:二窓機能使えばいけるぞ

:え、それ配信者にも出来たっけ?

:出来るぞ

フェシズ:出来るわよ。作ったの私だし

:製作者の出来わよ。は強いw


「二窓機能?何それ」


:単純に配信画面を二つに増やす機能だな

:一つは配信主の視点、一つは固定カメラ視点みたいなこと出来る


「へー便利だね!早速使おう。えーと二窓二窓………あった。

何々?視点を設定してください?」


:それでもう一つの画面に映す視点を設定する

:魔物の視点でいいんじゃない?

フェシズ:空飛ぶやつが良いわね


「あ、じゃあ夜雀の視点にしよう。夜雀飛んで。

えーと、出来てる?」


:出来てる

:完璧

フェシズ:空からは見えやすいわねー


「よしよし。お、あのヘリは当たりなんじゃない?」


:人が降りてきてる!

:結構多いw

:これなら姿消さなくてもいけるんじゃない?w


「まぁ確かにあの人数ならいけるかもだけど、念には念を入れてちゃんと飴食べるよ」


ポケットから月隠れの飴を取り出して食べる。

これミルク味で美味しんだよね。


「よし!では潜入を開始する!」


:がんばれー!

:ファイト!


降りてききた人たちはやっぱり作戦室の増員メンバーだったらしく、結構すんなり侵入できた。


「さて、では資料探しといきましょうか!」


まずは後ろの壁に埋め込まれている本棚から。

何々?魔物の増減表。ハズレ。

次は……年間予算。ハズレ。


基地内マップ。ハズレ。

魔力研究論文。ちょっと興味あるので拝借。

今月の献立表。学校じゃあるまいし。ハズレ。


魔物の種類・中国地方戦線。欲しいので拝借。

SM本。何でここにあるの?ハズレ。

魔法少女出撃後の報告書集・1。うーん、参考にはなりそうだけど………。


魔法少女出撃後の報告書集・2

魔法少女出撃後の報告書集・3

魔法少女出撃後の報告書集・4

      ・

      ・

      ・

めっちゃいっぱいある。

というかこれ以降全部これシリーズ。

次は………怖いけど、後ろのガラスに囲まれた部屋に入ってみる。


ないね。紙の資料が全くない。

座ってる人がパソコンを見て色々指示出してるからパソコンを見たいけど、周りにめっちゃ人いるんだよなぁ。諦めよう。


「全然見つかんない」


:今更だけど、紙の資料じゃなくて電子データじゃね?

:時代は電子化!!

フェシズ:うっかりだったわねぇ

:冷静に考えると普通、電子資料だよな


「………どうしよ」


:本当にどうしようか

:電子データだとマジで難しい

:色々セキュリティが厳しいからねぇ

フェシズ:で、でも!転移装置らしきものはなかったじゃない!

それが分かっただけでも収穫だわ!


「………それもそうだね。少なくとも転移装置は無いことは分かったから良いか。

これ以上大氾濫進行スタンピードを続けてると、より警戒されちゃって本来の目的達成に支障が出る」


でも最大の不安要素が出来ちゃったなぁ。

もし転移系の魔法少女がいたら計算が大幅に狂う。

もう本当に神頼みしか出来ないけど……… 。


「…………脱出する」


:気をつけて!

:気づかれないようにね!

フェシズ:脱出したら今後の計画を練り直しましょう!


数時間後、大氾濫進行スタンピードは沈静化した。

すぐに情報は共有されたらしく、それぞれの支部の警戒度が上がっちゃった。

あーあ失敗したなぁ………。


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読んでいただきありがとうございます。

今回はメルヘスの失敗例みたいなのを書いてみました。

まぁ悪巧みとか計画とかって予定通りには行かないよねって話です。


というか普段配信者とか見ないので他にどんな機能あるのか知らないw

流石にスパチャとかは知ってますが、他はさっぱりですねw

勉強してきます。

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