第8話 ミッション・イン・⚪︎ッシブル

ハ〜イ、メルヘスだよーん。

現在僕は小学校の廊下を堂々と歩いてまーす。

こっそりと教室を覗いてみると授業中。


え?サボっちゃダメって?

いやいや、僕ここに通ってないし。

いやぁ、それにしても皆勉強熱心だねぇ。


誰一人として黒板から顔を背けてないよ。1なのに偉いね。

先生もしっかりと生徒の方を向いている。熱心に。

僕が子供の頃なんてイタズラ好きの悪ガキだったのに、最近の子はよく出来てるね。


:何回見てもスゲェ……誰も気づいてない……!

:誰だよ精神魔法が役立たずなんて言ったやつ

:俺ら全員だよ。しかし、本当にすごい

フェシズ:さすが私のメルヘスね!


1年生の教室を通り過ぎ、保健室に辿り着く。


「さて、今度こそ当たりだと良いんだけど」


:だね

フェシズ:これで何校目だったかしら?

:確か……30と6つ目だったかな

:ハズレすぎだろw

:もしかしてメルヘスさん運が悪い……?


惜しい。裏で進めてた分を合わせたら50は超えるよ。

一応コンコンとノックしてから入室。


「失礼しまーす」


「あら、どうしたの?」


「ちょっとお腹が痛くて……休ませてもらって良いですか?」


もちろん嘘だ。天使の体はそんなに柔じゃ………いや、お腹壊したことあったわ。

でも、あれからわざわざ配下の魔物に無人島産の果物とか魚を取ってきてもらってるからお腹を壊すことはない。


「あら大丈夫?そこのベットで休んでなさい」


「ありがとうございます」


いそいそとベットに入り、一息。


「はぁ、ここもやってなかったかぁ」


:本当に運がないね

フェシズ:ちょっと運命神呼んでこようかしら?

:上級神じゃねぇかw

:でもあの神、基本的に推しは一人じゃなかったか?

:そうそう、運命の人は一人だけ!とか言ってる

フェシズ:大丈夫。絶対メルヘスに乗り換えるから


「ママ、強引な勧誘はダメだよ。でもちょっと運気は分けて欲しいかな」


:運気欲しいんじゃんw

:これだけ外れればねぇ

:次はどこの学校に行くの?


「次は隣町にある学校だね。あの町は最近魔法少女が出てないから望み薄だけど」


:いや、逆に考えよう。これから出るんだ

:一理あるな

フェシズ:無理はしないでね?


「無理も何も保健室に潜り込むだけだからね。楽なもんだよ」


ママは心配性だなぁ。ベットに潜り込んで、休み時間に退出するだけなのに。


:いやまぁそうだけど………

:そうじゃないんだよなぁ


「あはは、みんなの言いたい事は分かってるから大丈夫だよ。結構使ったから慣れてきたし、本当に無理はしてない」


みんなが言ってるのは精神魔法のことだ。

教室内の人間が異様なまでに授業に打ち込んでいたのは、僕が魔法を使ったから。

タネは簡単で意識誘導を使って生徒は板書を書き写すことに、教師は教える事に集中するようにしただけ。


おかげで誰も廊下に目もくれず、堂々と歩けたというわけだ。

最初は手間取って色々消耗したけど、もう慣れて片手間で出来るくらいにまでなった。

魔法少女検査とは全然会えてないけど。


おかしくない?

なんで50校くらいも回ってやってないのよ。

普通1校くらいあるでしょ……。


キーンコーンカーンコーン


「あ、終わったみたいだね。じゃあ次のとこに行こうかな」


:さてさて、次はやってるのかな?

:俺はやってないに100万

:俺は500万

:俺は1000万だ!!

:誰もやってるに賭けてないじゃんw


「もう次でやってなかったら諦めて直接最前戦まで行くよ。活動形態についても知りたいからね」


いつまでも学校を回っていても進展しない。

一応寿命はないけど、あまりに展開が遅かったら飽きられちゃうからね。

最悪、魔物側として配信するプランもあるけど、あんまり使いたくないからねぇ。


「先生」


「あら、もう大丈夫なの?」


「はい、ありがとうございました」


「体調が悪くなったら遠慮せずに来るのよ。じゃあ授業頑張って」


「はい、失礼しました」


さて、脱出しますか。

この脱出が結構面倒なんだよね。

ますは休み時間が終わるのを待つ。


休み時間が終わって全員が席に着いたと思ったら精神魔法を発動。

効果は保健室に行く時に使ったのと同じ。

堂々と廊下を歩き、下駄箱を過ぎて外に出る。


ここからが難しいんだ。

教室全員には意識誘導をかけてるから大丈夫。

問題は職員室にいる先生たちと動き回ってる用務員さんたち。


職員室で先生たちが何してるのかとか知らないから意識誘導がかけれない。

先生に直接聞いたら早いんだろうけど、生徒の顔を覚えてる先生とかいるから保健室の先生以外とはあまり会いたくない。


用務員さんはもっと何してるか分からない。

その時々によってやってる事は違うだろうしね。

ではどうするか。


まず、職員室の窓から見える範囲に近づかない。これで職員室の先生は躱せる。

そして用務員さんは………


「おや、お嬢ちゃん。なんでこんな所にいるんだい?」


パンッ!!


僕は唐突に手を叩いて音を出す。

そして用務員さんに対して精神魔法を使う。

にっこりと笑顔付きで。


「うわああぁ!!!」


用務員さんは驚き過ぎて腰を抜かし、地面にへたり込んでしまった。

響く大きな声。しかし周りは授業に集中しているので誰も窓から様子を窺わない。

僕はその隣を歩いていき、そのまま学校を脱出した。





「いやぁ、あの用務員さん良いリアクションしてくれたね」


:そりゃあびっくりしてるんだから

:やべぇ……どうやってるのか全くわかんねぇ

:感情を増幅させてるってのは聞いたけど、どうやって増幅させてるんだ?

:メルヘスに聞いても答えてくれないし


「僕が何でも答えてたんじゃあね。それにこうやって考えてるのも楽しいでしょ?」


:まあね

:めっちゃ楽しい

:んー、使役、洗脳、自失は効かないんだったよなぁ

フェシズ:分かったわ!さっきの用務員には『高揚』を使ったのね!

:怒らせた、わけじゃないよなぁ


「あ、ママ正解!全くその通りだよ!」


フェシズ:やったわ!

:『高揚』?

:あれって気分を上げる時に使うんじゃないの?

:んーなんとなく分かったような……


「みんな効果を文字通りに受け止めすぎだよ。コメントでもあった通り『高揚』って気分を上げる時に使うでしょ。じゃあ気分が高まり過ぎた人のことをなんて言う?」


:ハイになってる人

フェシズ:興奮した人

:危ない人


「一部ちょっと反応に困るコメントがあったけど、大体コメント通りだよ。

『興奮』した人って驚きやすいでしょ?」


:なるほどなぁ

:勉強になったわ

:発想の転換ってやつだね


「あはは、ありがと。じゃあ次の学校に向かうよ。

配信する予定だから良かったら見てね。バイバーイ」


:お疲れ

フェシズ:絶対見るわ

:今度こそ検査してたらいいね



『配信を終了します。お疲れ様でした。

ポイントは後日計算されて支給されます』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。本日、ストックが切れました(泣)

これからはなるべく毎日投稿を目指して頑張っていきます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る