捕らわれの半亜人エピローグ ...バレてる!?

ルロイがやってきたからといって

何か変わるわけではない。


ましてや仕事の量が減るかと言われれば

そんな事なんてありえない。


まぁルロイが手伝ってくれる分だけ少しはマシ…なのかな…?


今日も今日とて郵便の量は変わらず、

これも街に活気があるってことだから嬉しくもあり、若干つらくもあり。

そんなこんなで今日も配達をしてるんだけど


街に出ればルロイが駆けだすは迷子になるはで仕事どころじゃない。


さっきも「あれはなんだ?」なんて言って

嫌な予感がした瞬間にはもういなくなってた。


マーケット通りの果物屋のおっちゃんが捕まえててくれて助かった。

また買わされたけども。


今日の僕の仕事は郵便だけじゃない。

もう一つの仕事はルロイの紹介をしておくこと。


誰かも知らない奴がいきなりベルを鳴らして来たら怖いでしょ?

だから顔を売っておこうってわけさ。


◇◇◇


「あら?その子は新しい子かしら」


「そうなんですよ、この前から僕と一緒に働くことになって。

ほらルロイ、挨拶して。」


後ろに隠れていたルロイを前に引きづり出す。

それにルロイは怪訝な顔をしながらも

「ルロイだ、よろしく頼む」と目を逸らしながらぶっきらぼうに一言。


あんな経験があったんだ。

少しばかり距離を置きたくなるのも分からなくはない。


「そうね、ルロイ君…

お仕事頑張ってね。」


お得意様はルロイの手に飴玉を握らせて

家の中に入っていってしまった。


握らされた手を見つめるルロイ。


「どう?君の知ってた人間とは違うでしょ?」


「まぁそうだな…

少なくとも俺がこれまで出会ったことのない奴らだな」


まんざらでも無さげのルロイ。

これからこの子は郵便を通して色々な人と出会っていくことになる。


彼の心の傷は消えない。

でもせめてそれが少しでも癒えることを願うばかりだった。


「それで僕はどう?

僕も君が知ってた人間とは違うでしょ?」


ルロイには僕が天使ということはもちろん話してないし、

亜人だって扱いについても話してない。

分かるはずもないと思っていた。


が、


「お前は人間じゃねぇだろ。

もっと言えば俺と同じ混ざり者だろ?」


あたかも当然と言いたげなルロイの目が僕を貫く。


…なんで分かったの?

僕は絶対に言ってない、言ってるはずもない。


そうだ、おかみさんに聞いたんだ。

あの人も一言僕にそう言ってくれればいいのに。


「1つ言っておくが俺は誰にも聞いてないぞ。」


違ったぁぁぁぁ。

え、何、僕何処かで翼でも出てた?


まさかこの子、風呂覗いてたとか…

けしからん、けしからなさすぎるじルロイ少年…


「お前、混ざってるのが見えるんだよ。」


僕のあらぬ疑いをはねのけ、あたかも当然であるかのようにそう語った。


また出たよ、霊気。

それに今度はそれが見えてるとまででた。


(どうしましょう女神様、どうにかしてごまかした方がいいですか?)


(天使だってことだけは絶対に隠しなさいよ。

それだけは何があっても隠し通しなさい。

それ以外なら話しても構わないわ)


「で、どうなんだ?いきなり黙ったかと思えば上の空だが?」


「よく分かったね。

ただ1つだけ訂正、僕は何かの混血ハーフじゃないよ。

純粋な有翼族ハーピィさ。」


ルロイの「混ざっている」というのを否定して

「純粋な亜人」であることを僕の口から言っておけばルロイもそう思うだろう。


まぁ中身は亜人でもなんでもないんだけどね…


その日はルロイの挨拶と仕事とで

気付けば夕方になってしまっていた。

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