捕らわれの半亜人編

二人三脚の仕事の日々

マギアの雇用が決定した。


彼女はおかみさんの強い強い非ッ常に強い要望により

受付や会計を始めとした事務仕事、

そして彼女が本領を発揮する仕分けの作業を行うことになった。


なお、彼女は半同居のような感じになった。

たまにじっちゃんの所へ変える模様。


曰く、定期的にメンテナンスが必要なのだとか。


本人はまったく気にしていない様子で

淡々とそう言ってた。


「リリィ、ぼさっとしていないで今日の分をお願いします。

まったく、お金をもらっているのでしたらもう少し…」


「分かった分かったから。」


僕も不安だった。

仕事として関わるなら友達として関わるのと

それも随分と変わってしまうのではないか。


そう思っていた、いたんだけど…


いい意味でも悪い意味でも僕らの関係性は変わらなかった。


いい意味ではフランクな関係だという意味。

悪い意味ではいつも通りの辛辣な言葉でも遠慮なく飛ばしてくるって意味で。


◇◇◇


「さてと、始めは中央地区かな?」


マギアの仕分けは的確で

並行して事務作業をしてるとは思えない。


(お褒めにあずかり光栄です。)


時折こうやってテレパシーを飛ばしてくるあたり、

ホントにちゃんと仕事してるのかを疑わしく思う時もあるが…


おかみさんに聞く限り、

とんでもない勢いで事務の書類が消えてるそうなので

持ち前の効率の良さで回しまくってるんだろう。


「さて、僕も頑張らないとな。」


翼出して飛べれば、もっと速く行けるんだけど

女神様からそれは厳しく禁じられてる。


曰く

「天使は普段は現れないから天使なのよ。

そんなにホイホイ出てきちゃダメなの!!」

だそうだ。


バレないように使えばいいじゃん、

なんて思った僕は天使失格かな?


ただ、よかったこともある。


このあたりの地図はもうすでに頭の中に入ってるんだ。

だてに死ぬ前も同じ仕事をやってない。


目的のお家に着いた。


呼び鈴を押そうとはしたが


ここは天使っぽくいくべきか?

それとも通常通りいくべきか?


仮にここで天使っぽくいってみたとしよう。


ex) 呼び鈴の代わりにラッパを鳴らして

  「お手紙のお届けに参りました!!」


(リリィ、もう少し真面目にやってはどうですか…)


この街にいる限り

マギアの監視の目からは逃れられないことが発覚。


…ダメだ!!

大人しく普通にいこう。


呼び鈴を鳴らすとすぐに家主が出て来た。

以前から郵便屋をご贔屓にしてくれてる人だ。


「あれま、可愛い郵便屋さんだねぇ。

私にお届け物かい?」


「えぇ、お客さんに郵便です。

印をいただけますか?」


紙に印をもらえば、配達完了。


ヤバい、もう次のとこ行かなきゃ。

「それでは!!」と言って次の配達先に向かった。


それからタルシュ地区とスイシュ地区にも

配達物を届け終える。


もうちょっと早く終わると思ったんだけどなぁ。


気付いたら夕暮れになっていた。


そう言えば見習いの頃はここでよく休んでたっけ。

今になっては昔のことだけどね。


「ただいま帰りました!!」


「リリちゃん、おかえりなさい。」


「リリィ、早かったですね」


こうやって住まわせてくれるだけじゃなくってご飯まで作ってくれる

おかみさんには頭が上がらない。


手を洗って食卓に着く。


あれ?天使って人間と同じもの食べて大丈夫なのかな?


…まぁいっか、

あの女神様もお供えのお酒飲んでたしね。


久しぶりのおかみさんのご飯。

目の前の食器は生前の僕が使ってたやつだ。


食べ始めると

おかみさんがぽつぽつと話し始めた。


「リリちゃん、あんたが来る前はね、

あんたと同じくらいの男の子がここにいてねぇ。

その…仕草がどうにもその子と似てるんだ。」


ギクッ!?

…まずい、バレた?


でもバレたらどうすれば…


(女神様、女神様…)


起きない!?寝言が聞こえる。

なになに?

「なによ、もう飲めないわよぉ。」


あの神様、酔っ払ってる!?


おかみさんの「続けていいかい?」に背筋が凍りそうになった。


「だからね、あんたを見てると

少し心が休まるんだ。あの子が今もここにいるみたいでね。

だから…

やめないでおくれよ。」


◇◇◇


それからというもの

僕の仕事量は徐々に生前のそれに近付いていった。


今日も今日とて配達配達、

なんだか最近、王都中に活気があふれてるような感じがする。


元々、ここには顔見知りも多かったんだけど

ここ最近になってもっと知り合いが増えた気がする。


子供たちと街中で遊ぶことも増えた。


休みの日には部屋でもっぱら天術目録。

おかげで『召喚』によるるユリの花もうまく咲かせられるようになった。


それにしてもマギアに覗かれそうになった時は肝を冷やした。

だって見たらこの子、僕の正体見破りそうだからさ。


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