女神の気まぐれとは恐ろしいもので

足元にいきなり魔法陣が現れた。


え?なに?


うわっ!?


◇◇◇


目を開けるとそこはさっきまでとは全く違うところ

そして僕のことジロジロ眺めてる人たちがいっぱいいる。


一瞬の静寂の後、

「成功したぞぉ!!」


歓声が上がった。


見た感じ、すんごい喜んでるみたいだけど

僕みたいなやつ呼び出して何の得があるの?


そうこうするうちに

村の長らしき老人が近づいてきて

僕の目の前でひざまづいた。


同時に村人も全員ひざまづく。


「大天使ガブリエル様、

私たちに神のお告げをお伝えください。」


…へ?


それを聞いた途端、

僕は老人の肩をつかんでゆさぶった。


「ねぇねぇねぇ、今ここに鏡ってあるかな?

神のお告げなんかよりやらなきゃいけないことがあるんだけど。」


老人は首を前後にぐわんぐわん振りながらも指をさす。


「おっけー、ありがとね。」


とりあえずは自分の姿を確認しないと、

元の姿に戻ってることに最後の望みを託して、


3,2,1…


結果、惨敗でした。


鏡に映ったのは

元の僕の面影なんて1つもないような美少女。


銀髪に金の目を持った幼気な少女がそこにいた。


いや、誰?


(あなた以外にいないじゃないの。)


突然頭に響く声。

この声、まさか…


(気付いたみたいね、私よ。

7大天使の枠が1つ空いてたのよね。)


そんな事情で天使を生み出しちゃっていいの?


この世界の均衡を保つ役割を担う天使、

僕がその一柱に!?


(そんなの、私だから許されてるんでしょ。)


「それで?その空いてた枠ってのは何なんですか?」


(7大天使の一柱。

神の天啓を人々に伝え、神と人間の架け橋となる天使…)


(ガブリエルよ)


やっぱりだぁ、

翼とか神のお告げとか嫌な予感はしてた。


(あなたは神と人間の架け橋になったの。

これからは神のお告げを運んでもらうわよ。)


女神様の言ってた

「永遠に」発言も天使になったなら納得できる。


だって僕の命は女神様の所有物になってるんだから。

天使は死なないんだもんね。


鏡も確認して

無事に半分くらい絶望した後で召喚された場所に戻った。


「さぁガブリエル様、わたくし共に天啓を!!」


天啓って言ってもなぁ、

僕、何にも伝えられてないんだけど…


「ちょ、ちょーっと待ってくださいね。」


老人に言った後、背を向ける。


「女神様どうするんですか?

天啓なんて言われても僕知りませんよ。」


(そうねぇ、私は交換条件で何かを授けることしかできないわ。

望みと供物を聞いてちょうだい。)


再び老人に向き直る。

ここは1つ天使らしく。


「神は供物と交換であなたたちの願いを叶えるそうです。

さぁ、望みを言ってください。」


「私たちの望みは1つ。

雨を降らせてください、どうか女神のお力を…」


(供物は何かしら?早く聞きなさい)


「…じゃあ、対価としての供物は何ですか?」


いくら交換条件って言っても…

なんかイメージ崩れるなぁ。


僕が抱いてた女神様のイメージって

無償の愛って言うか、そんな感じだったのに…


「わたくし共の差し上げられる物と言いますと“酒”くらいしか…」


その時だった。


(酒?今そこの人間、酒って言ったかしら?

いいわ、今すぐにでも雨を降らせてあげる!!)


すぐに空には黒い雲が立ち込め、

ぽつりぽつりと雨が降り始める。


村人は喜び、騒ぎ立てる。


その時だった。

僕の足元に再び魔法陣が浮かび上がる。


「それではガブリエル様、

我らの願い、神様に届けていただきありがとうございました。」


少しずつ光が強くなっていく。


待って、まだ聞きたいこt…


◇◇◇


召喚される前にいた場所に戻ってきた。


「説明してください!

なんで僕が天使に、よりにもよって7大天使の一柱になってるんですか?」


(だって仕方がないじゃないの。

あなた、人間と天使の霊気が混じってるんだから。

それに席が空いてたのよ。)


霊気?の話はよく分かんないけど、

1つだけ分かったのは

僕が何かしらの「エラー」であること。


「さぁ、供物の酒が届いたわぁ」と言い残して

女神様の声は聞こえなくなった。


…まぁ、つまりは女神様の気まぐれで

彼女に呆れられるほど不幸で、死に過ぎた僕は


…天使になっちゃったってわけなんだよね。


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