お届け物は天啓ですか?~転生先は大天使!?運ぶは加護か神罰か~

かつをぶし

天使の孤児編

郵便は好きだけど...永遠にとは聞いてない。


「いってきまぁーす!!」


王都シルフォリアの朝に大きな声が響く。


僕、ヒルト・クリネは今日もバックに手紙を詰めて家々へと運ぶ。

これが僕の仕事だ。


いわゆる「郵便屋」ってやつだね。


今日もいつもと同じく

ドアを蹴飛ばして町へ繰り出す。


飛び出すまでは昨日と同じだったんだ。


そう、飛び出した。

横から馬車が猛スピードでやってくることも知らずに。


気付いた時にはもう遅い。


(車は急には止まれないんだっけ)


そう思う間もなく体が跳ね飛ばされ、宙を舞う。


叩きつけられた先は石畳、

朝の冷えた空気がさらに痛みを強くする。


頭を強く打ったのか

徐々に意識が薄らいでいく。


(まだ今日の分の配達物、残ってるのに…)


◇◇◇


「配達物っ!!」


「なっ…!!」


美少女が目の前で服をたくし上げていた。


え…

「変態?」


「ンなわけないでしょうがっ!!」


頭に本がクリーンヒット。

ふたたび気を失った。


◇◇◇


「配達物っ!!」


目の前には呆れたような表情をした美少女が座っている。


「…あなた、随分と仕事熱心なのね、でももうそんな日々ともサヨナラよ。」


どういうこと?

もう僕は不要ってこと?


それに…

「ここはどこですか?

今日の分の配達物が残ってるんです、さっさと返してくれませんか?」


こめかみに手を当てて、ため息をつく美少女。

それすらも絵になるんだから恐ろしい。


「あなた、気付いてないの?もうとっくに死んでるのよ。」


死んだ?僕が?


「当たり前でしょ、

だからこの私、女神シルラの元に来たのよ。」


女神様が僕の方に近付いてくる。

もちろん僕はその分、後ずさりするわけで…


「待ちなさいよ、霊気の確認ができないじゃないの?」


はて?霊気?

これまで生きてきた中でも聞いたことのないワードが

女神様の口から飛び出す。


気になって足を止めてしまった。


その隙を見逃さない女神様、

自身のおでこを僕のおでこにくっつけた。


まるで頭が沸騰するかのような熱を感じる。


そこから数分、難しい顔をして唸っていたが…


「あなた、ホントに人間?」


なんて失礼なことを聞くんだ、この神様は。

僕は人間なんですけど…


「あなたね、混じってるのよ。」


改めて「混じってる」なんて言われても…

僕には心当たりなんてないしなぁ。


「それにそもそも霊気って何ですか?」


「あなたそんなことも知らないの?

まぁ、人間だから仕方ないか…」


大げさな動作で女神様は起きれたような顔をする。


そして一瞬、暗闇の中に消えたかと思いきや

どこからともなく黒板を引っ張り出してきた。


「あなたにも分かりやすく授業をしてあげます。」


女神様が絵を描いた。

見た感じ人間の体と、あとは…魂?


「生き物には魂があるわ。そしてその中を満たすのが霊気。

その魂の在り方を決める重要な因子よ。

魂を満たす霊気によって、その生き物の特性が変わるの。」


魂の絵を何度も指さしながら

女神様はかく語る。


「つまりはエルフの異常に高い魔力を

生み出したりするようなものですか?」


「ザッツ・ライト、大正解よ。」


「つまり僕は何かしらの理由で霊気が

混ざっちゃったってわけですか?」


「ザッツ・ライト、大正解よ。」


女神様の話だと

どうやら僕は人間と何かの特性を元々持っていたようだ。


が、一体何の特性があったっていうんだ?


自慢じゃないがこの十数年、エルフのように魔法が使えたこともなければ、獣人のように高い身体能力があったわけではない。


そんなものがあれば今ここに来てないはずだ。

ホントに何と何がどうやって混ざってるんだ?


女神様に聞いてみると

「そんなのそのうち分かるわよ」

とのこと。


「この場合、僕はどうなるんですか?」


「そこがネックなのよね…

私も何回かミスしてるから慎重にいかなきゃいけないんだけど…」


どうやら女神様も女神様で

何やら小難しい決まりがあるようだ。


「仕方がないわ、私が生き返らせてあげる。

よかったわね、これで永遠に郵便ができるわよ。」


え?永遠に郵便?


「ちょ、ちょっと」


「うるっさいわね!!

何か文句でもあるわけ?」


いや、それはないんですけど…


「ないなら決定ね、二度と来るんじゃないわよ。」


女神様が指を鳴らす。

足元に魔法陣が現れた。


浮き上がった僕に向かって

女神様が言う。


「私との約束はただ1つ。仕事をサボらないこと、これだけ。

まぁ、せいぜい頑張んなさい。

仕事に必要な魔法はその本に書いてるわ。」



目を開けるとそこは王都から離れた草原だった。


それにしても永遠に郵便って…


「どういうことだろ?」


何気なく呟いたつもりだった。

でもおかしかったんだ。


なんか声、高くなってない?


体のあちこちを触ってみると

なんかやわらかいし、いい匂いもする!?


よく見れば着ている服も真っ白のフード付きの服だし、

背中には翼生えてるし、

手には女神様にぶつけられた本。


僕、何になっちゃったの?


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


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