生徒会の日常~WOMEN’S ASSOCIATION~

「夏美先輩たちってどんな下着つけているんですか」

「ふぇ?千晶ちゃん、どうしたの?いきなり」

「ゲホッ、そんなこと聞いてどうするの」

「大事な事よ!」

「雅先輩?いつから生徒会室に?」

「実は一つ講義が無くなって暇をしていたもので…」

 ある日の放課後。千晶の一言でこの日の会議は幕をあげた。事の始まりは男子部員にあった。理由は様々だが揃いも揃って遅刻。故に現在生徒会に室にいるのは女子部員である夏美、喜結、千晶、そして遊びに来ていた雅だけ。女子のみとなると恋話…。かと思いきや千晶の口から出た言葉はまさかの下着話だった。突然の千晶の発言に声を裏返す夏美。喜結は飲んでいたコーヒーで咽てしまう。しかし噴出さなかっただけ褒めて欲しいと思う。同時に喜結が“必要なのか”と尋ねると何処からとも無く現れた雅に『他に暇をつぶす場所はないのかな』と夏美は思う。

「で、何でまた下着なの?」

「実はですね、クラスメイトが恋人と一夜を過ごすのにどんなのがいいのか悩んでまして」

「え、何でそんな話をするの…」

「わかってないなぁ、そういうのは気にするものだよ!デートなんて何があるかわからないし!」

「そうですよ!それにたかが下着されど下着です!下着一つでその日のコーディネートは決まるもんなんです喜結先輩」

 何故、下着の話をしたのかが気になった夏美。経緯を聞くとクラスメイトが原因らしい。喜結は“学校”で話すことではないと思い発言するも違う方向へと捉えられてしまった。『誰か弁解して欲しい』と思う喜結に「ここは一つそのクラスメイトにアドバイスとしてあげましょうか」と雅が拍車をかける。雅の発言にため息を零す喜結。ここまできたら止められるのは雅也だけだと知っているからだ。

「夏美さんならどんなのがいいと思う?」

「そうですね…。私だったら花柄かな…。こう、小花がいっぱいのやって可愛いじゃないですか」

「私はグラマラスが良いです。胸が小さくても色気が出るし」

「夏美さんは可愛い系、千晶さんは色気重視なのね。じゃぁ喜結は?」

「参加したくありません」

「そんな事言わないでよ」

「この際、着結先輩に似合うのを選ぶって言うのはどうですかね」

 こうして始まった”下着会議”。女子四人で机を囲み雅が主体となって各々の意見を話していく。そんな中、断固として参加拒否をする喜結に千晶が提案する。もちろん喜結は「は?」と何故自分に白羽の矢がたったのか理解できずにいた。千晶の提案に「確かに翔君に見せるかもか知れないしね」と夏美や雅も賛成する。何故、榊が出てくるかそれすらも理解できずにいた。

「で、喜結って胸のサイズいくつなの」

「私が思うにAかと思います!」

「チッチッチ、そう思うでしょ!」

「「違うんですか?」」

「細いから間違えやすいのよねぇ…。でも実はBなのよ」

「いや、だから参加したくない…。待って雅、何でそんなこと知ってるの?」

 会議が進行するに連れ、話の内容は夏美の一言で“喜結の胸の大きさについて”に変わっていった。最初に発言したのは 千晶だった。見た目で判断をする千晶。しかしそうではないと雅が発言する。その内容を聞いた喜結は“知っていること”に驚きを隠せずにいた。そんな喜結に「何年付き合ってると思っているのよ」と更に自慢気に言う雅。勿論、喜結はため息しか出てこない。

「ひっ!」

「うん、確かにBはありますね。てか喜結先輩、なんでノンワイヤーなんですか」

「ノンワイヤー?私があげたのつけてないの?」

「服やアクセサリーはつけるけど雅の選ぶ下着は…」

 千晶が後ろから喜結の胸を揉み納得する。しかしそれ以上に喜結が身に着けている下着にクレームをつけた。そのクレームに雅が過剰に反応する。衣服などに無頓着な気結の為に衣服やアクセサリー、下着などをいくつか誕生日プレゼントで贈っていたからだ。雅のクレームに“下着の趣味が合わない”と言う喜結。その言葉にどんなデザインなのか気になったのか「雅先輩、いったいどんな下着を…」と小声で呟く夏美。本来なら聞こえるはずの無い夏美の呟きに「実はここに今年の分があるのよ」と反応する雅。

 あまりの過敏さに身の危険を感じたのか「そういえば先生に呼ばれていたんだった」と逃げようとする喜結。その行動に“お見通し”だと言わんばかりに夏美と千晶に喜結を取り押さえるように指示する。今は違うが元生徒会長。逆らう理由がない夏美と千晶。二人によって喜結は呆気なく捕まってしまった。そして喜結の目の前に“喜結のために選びました”とプレゼントの下着を見せる雅。程よく胸を強調させる形を控えめなレースが包むようなデザインのブラジャー。色は全体がアイボリーでレースなどの装飾品が薄めのピンクと至ってシンプルだが喜結には派手に見えるらしく反抗する

「そんな派手なのつけたくない」

「そんなに派手?」

「いいえ、至ってシンプルで喜結先輩にピッタリかと」

 しかし夏美たち千晶は完全に雅の側に回った意見を述べる。二人の発言に自分のセンスがおかしいのかと疑ってしまう喜結。そうこうしているうちに制服を脱がし始める雅。雅の行動に焦りながら必死に抵抗する喜結。“喜結を助けたいがあのブラジャーを着けた姿も見たい”と夏美と千晶。二人の考えは一致していた。

「ごめん!喜結!」「ごめんなさい喜結先輩!」

「え?二人とも?」

 夏美と千晶は心を込めて喜結に謝罪をして制服を剥ぐ雅を手伝った。しかしやっとブラジャーを着け終わったところで喜結は逃げ出した。恥ずかしさから能力を使い生徒会室のドアに手をかける。だが喜結が扉を開けると同時に外からも扉が開けられた。

「え?」「は?」

 その勢いにノブから手が離れた瞬間、喜結は力なくその場に座り込む。そして開けられた扉からは雅也たちが現れた。偶然過ぎるタイミングにお互いが驚きを隠せずにいた。僅かな沈黙が続く。長いようで短い沈黙。その沈黙の間に喜結は自分が置かれている立場と己の姿を把握した。上半身だけだがシャツのボタンは外され雅たちが着せたブラジャーが露となっていた。喜結は顔を赤く染め、シャツを掴み上半身を隠し沈黙は音の無い悲鳴で終わりを告げた。

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