第55話 絶望

 その頃天界。


「おのれ、荒巻詩音。なぜここまでやられないのか。バルによってが子供貸してなお、この戦力。ふざけるなよ」


 今まさに最強の戦力、ラモスやられた。だが、今は詩音がその代償に眠りについている。


「ここでつぶさなければなあ。四天王最後の一人、火将軍メリダ。我と一緒に来てほしい」

「分かりました」


 そう言ってメリダと神は一緒に地へと降りた。


「久しいな。ここが地上か」


 地上に来るのは、闇の王と戦ったあの戦闘以来だ。


「さて、早速詩音のもとへと向かおう」


 そして神は進んでいく。

 詩音のもとへと。



 その間リリシアはと言えば……。


「これはどうしたら……」


 焦っていた。。無理もないだろう。これから神と戦わなくてはならないかもしれないのだ。

 戦力としてはリリシアと、ディオスと村長しかいない。

 四天王一人を倒すのでぎりぎりだろう。

 だが、神はこの好機を逃すとは思えない。

 もしかしたら総戦力で来る。最悪神も一緒にやってくるかもしれない。


「このままではまずいですね」

「そうだな。このままではまずい」

「村長さん、何か手はありますか?」

「無い……それが一言言えることだ。……いや待てよ。あれを使えば」

「あれって何ですか?」



 そんな時、雷鳴の降り注ぐような音がし、空間が揺れる。

 その余波で、リリシアは椅子から転げる。

その瞬間リリシアは理解した。神がやってきたのだと。


 四天王の残り一人はラモスより弱いはず。となれば、四天王最後の一人の出現程度で、地面が揺らぐわけがないのだ。


リリシアは慌てて外に出る。


 そこ現れたのは、ひげの生えた茶色の長髪の男。つまり神だ。

 そのオーラは全てを覆いつくさんとするほどだ。


「私はその手を行う。時間を稼いでくれ」


村長はリリシアにそう伝え、山の中に入っていった。


「分かりました」


 とは言ったものの、目の前のでかい存在に対して時間を稼げるのだろうか。

 全く分からなかった。


「行くぞ」


 まず動いたのは、メリダだ。


「燃え尽きろ、バーンフレア」


 リリシアのもとに炎がものすごい勢いで発射される。

 リリシアはそれをぎりぎりで後ろに跳ね、避けるが、その瞬間炎が爆発した。

 その衝撃でリリシアは後ろに吹き飛ぶ。


「なかなか強い威力ね」

「驚くのはまだ早いわ」


 炎が上にいくつも空に浮かび上がっている。その炎が一気にリリシアに降り注ぐ。


「フェアリーダークバリア」


 闇と光が融合したバリアがその炎を防ぎ、


「今度はこっちの番です」


 リリシアは地面を蹴り、近づく。


「ふつうこういうタイプは近づかれると弱いのですよね?」



 リリシアはおなかに向けて拳を放とうとした。メリダは炎でガードしたが、リリシアの攻撃を完全に受けることはできなかったのか、後ろに吹き飛ぶ。そのメリダに対して追撃をと、さらに畳みかけるようにリリシアは拳で上からメリダを襲う。


メリダはメリダで空に炎を浮かして、それをリリシアに落とそうと画策しているが、中々放つタイミングがつかめない。

そのままメリダは地面に叩き落された。


「ふぬおおおおおお」



メリダは燃え上がり、リリシアの拳に熱を伝わらせる。


「っ熱」


リリシアは咄嗟に距離を取る。だが、その瞬間上から炎が振ってきてリリシアはダメージを負った。


――やはり、四天王の一人という事もあって強い。神の前座などでは全然ない、


これでは、メリダ一人にやられてしまう。

もっと力を、もっと力を。


だが、その瞬間、


「甘いな」


 そう言った神の手によって地面に叩き落される。


 ――神はディオスが戦っていたはずでは?


 リリシアははっと後ろを向く。するとそこには地面に倒れているディオスの姿があった。


「想定外ですね……いや、こうなる可能性なんて普通にあったはず」


 だが、思いつく可能性はあった。何しろ敵は神。人事の理では図り切れないのだから。

 メリダと戦ってたところにこんな化け物が現れるなんて。


「ではいくぞ」


 神が早速上に飛び、そのままリリシアに向かって飛び降りていく。


 ――早い……!


 リリシアはそのあまりのスピードによけきれずに地面に叩き落されてしまった。

 そのまま地面に転がるリリシアに対して神が雷を纏った拳で殴る、殴る殴る。


 ――全部の攻撃が痛い。これじゃあ、勝てない。


「うわあああ」


 リリシアは咄嗟に上に飛び上がり、神に向けて全力の炎を放つ。


 だが、その炎は「少し熱いな」と言って紙がそのまま立っていた。


「無理でしょ」


 無理げー。


 本当に勝ち筋が見えない。このままでは負ける。

 でも、村長さんの秘策を頼りに今は粘らなくては。


「うわあああああ」


 神をバリアで覆い、中に大量の針をぶつける。

 回避できない針。もしかしたら炎体制があるだけなのだと信じて。


「効かんな」


 神はそれすらも抜けてきた。


「これでどうやって我に勝つつもりだったのか。愚かな人間だ。さっさと滅ぼそうか」

「待って、まだ死にたくない」


 リリシアの目から涙がこぼれ始める。


「命乞いなどと興ざめなことをするな。元々貴様らの命など、我が掌の内だ」


 だめだだめだだめだだめだ。

 これはだめだ。


「うわあああああああ」


 リリシアは飛び、神から逃れようと必死に逃げる。


「逃げる敵に攻撃するなど、神のすることではないが、まあいい」


 神もそれを追撃する。リリシアは必至の必死で逃げるが、神の方の速さの方が早い。


 段々追いつかれていく。リリシアは涙目になる。

 このままじゃあ死ぬという恐怖におびえて。


 そして目の前に神が現れた。


「そろそろ終わりにしようか」

「いや、いや、もう嫌だ」

「子供か? 死ねえ」


 だが、その攻撃は毒の壁によって防がれた。


「え?」


 リリシアは驚く。何しろ、目の前にいたのは詩音だから。

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