第54話 闇の王VSラモス
ラモスが向かってくる。光のような速さで。
「リリシア、もっとスピード出せないの?」
「無理言わないでくださいよ」
「我に頼らんからだ」
「うるさいです」
しかし、このまま暗黒大陸についたとて、ラモスを倒せる手はずはない。
「私がもう少し魔力が解放していればっ!!」
そう、私さえ戦えたら、それだけで何とかなるというのに。
当然先ほどの魔弾で魔力が減っている。
もはやほとんど戦えない。
「私たちの命はリリシアにかかってるんだから」
「うるさいですっ!」
そして、迫ってくるラモスに対して、闇の王が「ダークウェイブ」と言い、闇の波動を飛ばす。
「効くとでも思っているのか!!」
ラモスはその攻撃を軽くはじく。
「これでは埒が明かんな」
そう言った闇の王は小考した後、「我に考えがある」そう言い放った。
闇の王の手とは、私の体をいったん取り込んで、顕現すると言うものだ。
闇の王曰く、私の体の魔力を吸い取って、完全に魔力が無くなるまで戦えるという物らしい。
そのあと、私は数日間寝たきりになるらしい。
闇の王は元々敵だ。信用に値しない。
その旨を伝えだところ、「ならば、どうするのだ。今のままだと勝ち目はないぞ」と言われた。
確かに今のままだと全滅は目に見えている。
仕方ない。
「わかったわよ!」
そして私は闇の王に体を委ねた。
ああ、失敗したかもしれない。だけどもうこれしかないのだ。
「ほう、久々にわれの力が行使できる。さて、貴様はラモス、久しいな」
「そう言う貴様は闇の王か。数百年前の神戦とは同じようにはいかないぞ」
そしてラモスの気が指数対数的に増えていく。その量は遥かなものとなっている。
「ほう、ならば我も」
闇の王も魔力を開放する。その魔力は段々と膨れ上がり、詩音とリリシアが相対した時よりも高くなっている。
「すごい」
そう、詩音は闇の中で呟いた。
「お前の魔力がすごいのだ」
そして闇の王はその魔力で圧を放ち、それにより風が一気にラモスの方へ飛んでいく。ラモスはその風圧を氷の盾で受けきり、闇の王に対して氷の槍を飛ばす。
「我に敵うと思うか」
闇の王がそう放った瞬間、とんでもない強さの風によって氷は押し返される。
「さらに、この技を忘れたわけでは無かろう」
闇の光線がラモスを貫く。
「あの時と同じ、感覚遮断か。だが、同じ手が効くと思うか!!」
全方位に氷のドームを作り出す。
「この中の状況は手に取るようにわかる」
「詩音と同じような対応策だな。だが、」
闇の王は闇の弾丸を沢山作り出し、「これならどうだ?」一気に放つ。
その弾は同時に闇の王の作り出した風によってものすごいスピードでラモスに向かって行く。
「この程度で、私がやれるか!!」
氷の盾を何重にも展開し、見事にそれを防いで見せた。
「さて、次の手は? 闇の王よ」
「は、この程度だと侮るな。我はまだまだ限界を出しておらん」
「だったらやって見せたらどうだ?」
「は、そう言ったことを後悔するがよい」
そう言って闇の王は魔獣を繰り出す。何千何万もの魔獣をだ。
「これは本来ラストの能力だが、まあ良い」
そして、その魔獣たちはラモスに向かって行く。
「そんなちんけな雑魚共か? そんなもので私を倒せると思うな!」
氷が魔獣共の方に降り注ぐ。
「ランスレイン」
その氷の槍の嵐は全ての魔獣共をどんどんと殺害していく。
「は、我の魔獣共が、そのような攻撃でやられるとでも!」
その闇の王の言葉が響き渡り、魔獣たちは全て立ち上がり、すべてラモスに向かって走っていく。
「我の魔獣は皆そこらの魔獣よりも強い。さあ、漆黒の獣よ、ラモスを八つ裂きにするのだ」
そして、ラモスの体は魔獣共の手によって食い散らかされていく。
「すごい」
詩音は思わずそう呟いた。
「いや、まだだ」
その闇の王の言葉通り、氷がどんどんと結合していき、再びラモスという個を形成した。
「今までの二人ならもう終わっていたはずだ。だが、これでも終わらないのだから、厄介なのだ」
「ははははは、やはり君は強い。あの時とは変わっていないようだね、……でも、私には勝てない。それは決定事項なのだよ」
氷のドームの中の温度がどんどんと下がり、中は雪が降りだした。極寒の嵐。氷のつぶてが吹き荒れている。
「私のフィールドで勝てるかな?」
「くだらん。我にも環境変化技が使えないと思うのか」
氷の空間を闇が侵食していく。
周りの空間が何もない虚無の空間になっていく。
「闇か、その空間で私を身動きさせなくするつもりか。だけど、私はそれに抗う」
氷の吹雪が、闇に抵抗していく。そして、その勢いは拮抗する。
「このまま互いに魔力の打ち合いかな」
「そうみたいだな」
そして、闇の王の闇の魔力と、ラモスの氷の魔力がぶつかり合う。
その攻撃によって、互いに攻撃が加わっていく。
二人とも直感している。先に魔力が尽きた方の負けだと。
もしくはだ、
「先に貴様をしとめるか」
相手を最大級の魔力で先に押しつぶすか。
闇の王は、一瞬に魔力を集中させ、闇の弾丸をそれに浮かび上がらせる。そして魔獣も全員出し、一気にラモスの方に向かわせる。
「よほど余裕がないみたいだな、闇の王よ。そんなもので私に勝てると思ってるのかな?」
「ほざけ、この雑魚が」
ただ、ラモスの言っていることはあっている。闇の王はあくまでも詩音の魔力を借りただけ。その魔力が尽きれば当然闇の王も詩音の中に戻ってしまう。その時は、全力を出すのはおろか、戦闘すら不可能になる。
「貴様なんぞ、片手で押しつぶしてくれよう」
そして、ラモスの上にドラゴンが現れる。
「は、ドラゴンか。久しいな」
「下を忘れるのじゃないぞ」
幾万匹の魔獣がラモスに向かって駆け出している。
「弱点など分かっておる。貴様が先ほど復活したのはそう、氷の力だ。ならば、貴様がやられたその瞬間に、氷のドームを壊せば?」
「何、まさか」
「そのまさかだ。再展開も難しいのだろう、同時攻めだ」
闇の王は闇の魔弾をすべてドームに向けて放つ。
「全魔力を使った攻撃だ。滅べ」
ドームを守ろうとしたら魔獣に食い殺され、魔獣を狙ったらドームが破壊される。
「さあ、喰らえ。ダークウェイブ!」
そして保険として闇の王の第三の矢。これは、ラモスが自分の身を守った場合、その隙にドームを破壊するためのものだ。
「さあ、終わりだ。ラモスよ」
その魔力が弾ける。ラモスは自身の身を守った。だが、その隙にドームは破壊され、闇の波動も喰らう。
「これで、終わりだ」
闇の王は闇の弾丸を放とうとする。瀕死のラモスに向かって、
「何?」
闇の王の体がどんどんと、小さくなっていく。
「まさか」
時間切れだ。もはや、魔力が残されていなかった。その体は詩音の体になり、空から血に落ちてくる。
「はは、私の勝利だったみたいだな、闇の王よ……なに?」
勝利を確信した瞬間、ラモスは強烈な痛みに襲われた。
「私のことを忘れないで!! フェアリーフレア!!」
そのリリシアの炎にラモスはそのまま消滅していった。
「漁夫の利ですね……それで、魔王!」
リリシアは地面に向かって、詩音が落ちた場所目掛けて飛び降りる。
そこには詩音が倒れている。見た感じ、姿もかなり元に戻っている感じだ。
「はあ、良かった」
リリシアはそっと胸をなでおろす。
「しかし、魔王もひどい。秘策があるなら教えてくれていたらよかったのに」
そして、そのまま詩音を連れて、暗黒大陸に渡る。
だが、詩音は一向に目覚める気配がない。
どれだけ魔力で回復させても。
「おそらくじゃが」
医師が言う。
「彼女は体力は回復している。だが、魔力が回復しないのだ」
そう。闇の王に魔力をささげたと言っても、単純に魔力を貸したわけでは無い。
闇の王を経由したことにより、魔力の回復スピードは遅くなっているのだ。
本来、詩音なら魔力は半日で回復するはずなのだが、それが一〇倍、つまり、約一週間かかる。
「そしたら一週間は魔王は戦えないと」
「わしの見立てではそうだ」
―魔王、こうなることを教えてほしかった。
そう、リリシアは深いため息をついた。
そしてリリシアは、「これじゃあ、動けませんよね」と言って、しばらくの魔大陸の待機を決定した。
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