第52話 子供になった詩音
そして次の瞬間リリシアに持ち上げられた。
「何するのよ」
「だって、魔王様可愛いんだもん」
ぬぬぬ、屈辱。
「やめてよ!!」
風の刃をリリシアにぶつける。
だあ、その刃は小さい風の塊となって、リリシアに涼しげな風をぶつけるだけになった。
「え、涼しいでちゅねー」
ムカつくむかつくむかつくむかつく。
なんでよ!
リリシアにあやされるなんてふざけんなよ!!!
「でも、今そんな力しかないのは問題ですよね」
「ええ。これじゃあ敵が来たとしても何もできないからね。……何とかして力をつけないと」
「そうだね」
そもそも元に戻る方法があるのか、それが今目下の課題だ。
術者はもう死んでいるのだ。漫画とかでありがちな術者を殺すなんて方法はない。
となれば方法は一つ。解呪だ。
「ねえ、リリシア。なんか解呪とか得意な人とかいない?」
そう、私を膝の上に座らせているリリシアに聞く。
「そうでちゅねー」
「ふざけないでよ」
「やっぱり暗黒大陸の魔族を頼るほかないと思います」
「やっぱっそうなるかあ」
「ざあ、早速行きますか。……かわいい魔王を堪能的ないのは残念ですけど」
「本音が漏れてまーすよ」
「待て、我が何か知っているとは考えんのか?」
闇の王がそう偉そうに言う。普通に存在忘れてた。
「なら何かあるの?」
「我は知らん」
ギャグマンガじゃん。
あの、強敵が味方に加わった瞬間ギャグ要因になるあれじゃん。そのギャップ萌えを楽しめ―的な。
そして、私はまたリリシアの背中に乗りながら、暗黒大陸に向かう。
今度の暗黒大陸への道は、私がうまく戦えないせいで、リリシアと闇の王に負担をかけてしまう事となった。
だが、謝らない。私が悪いのではなく、あの四天王とかほざく変な奴が悪いのだ。
「さて」
村についた。前回と同じ村だ。
ここで、村長に話を聞きに行く。とはいえ、早くしなければならないことは確かだ。
先兵はしりのけたとはいえ、まだ次か来る可能性なんて百パーセントなのだ。
「というわけです。解呪の方法はありますか?」
リリシアが聞く。
それに対し、村長は考え始める。
「それならば、この魔大陸に、解呪の名人がいます。だが、彼女はこの村から出て行った身。今はどこにいるのかわからないですな」
「ってことは、その人を見つけられたら元の姿に戻れると?」
「ええ。しかし、見つけるのは困難を極めると思います」
でしょうね。こういうのは難しくてしかるべきだ。
そうじゃなかったら手ごたえなんてないんだもん。
「じゃあ、探しに行きます!!」
「松が良い」
勢いよく出ていこうとするリリシアを村長が止める。
「知っての通り、ここには恐ろしい魔物が多い。今の詩音の能力では足手纏いになるだろう。だから君はここで待っていてくれ」
「ええ!? 待ってよ。じっとしてるの暇なんだって」
「その見た目で本当に戦えるとでも思っているのか? 待つのも大事だよ」
だめだ。どんどんムカついてくる。
「私も外出たい……」
そう、私にしては珍しい上目使いで、言う。
「だめだ。待っていろ」
やっぱり無理らしい。
仕方がない。今の私ではこの人たちを振り切って逃走なんてできないのだ。
そして、その場でごろごろすること十分。早速暇になってしまった。
仕方ないじゃん。こうしてごろごろするなんて久しぶりなことだし、
ああ、暇だなあ。しかも今村長さんによくわからない話されてるし。
なんかこう、悪の気とか何とか。
そんなの私知らないし。
そんな時、背後で小屋が割れる音がした。
「なんじゃ?」
村長はそう呟く。すると、家が燃え出した。
「これはいかん。逃げるぞ」
その村長の声に合わせて私たちも逃亡する。
そして、私たちが脱出した後、家は爆発してあと型も亡くなった。
小さい家で助かった。迷うことなく外に出れたのだから。
しかし、一体何だったのだろうと、外を見ると、ひとりの男が浮いていた。
「われは、四天王の一人。ラクスだ。貴様が詩音であろう? 神から貴様を殺すように言われているんだ。さあ、死んでもらおう」
そして、業火が私に襲い掛かる。私は横に走ってよけようとするが、
(この体。動きにくい)
速度が出ない。これじゃあ、炎に当たってしまう。子供の姿扱いにくいなあ。力も出ないし。
だが、私に襲い掛かろうとした炎はすべて打ち消された。村長が放った水によって。
「わしだって戦える。時間稼ぎくらいなら出来るぞ」
「ほうほう、なるほどやはりそちらの少女は戦えないが。あいつめよくやってくれた。さて、楽な仕事になりそうだなあ」
その炎の拳が村長に襲い掛かる。だが、村長はその拳を魔力で覆った拳で相対する。
「つえー」
いや、これは私が弱くなってるから、相対的に強く見えるだけだ。
私は最強なのだもん。
そしてそれに闇の王も戦いに加わる。
今の戦況で私にできることがないというのが最もつらいことだ。
みんなが戦っているのに、私はただ見ていることしかできない。
ああもう、悔しいなあ。しんどいなあ。本当にあの雷のやつは許せないわ。
そんなことを考えている間にも二人の戦いは熾烈を極めている。
だが、少しずつ少しずつ、ラクスがリードしているみたいだ。
多数対一のはずなのに。
ああ、もう!
私も戦えたらさあ。こういう時にスタッと助けに入れるのに。
リリシアの帰還を待つしか……いや、リリシアが解呪の人を連れてきてたとしたらいいが、それも見込めない。
となればリリシアがヒーローみたいになってしまう。私にはそれが許せない。
自分で戦わないといけない。
この魔力の出ない筋力のない体であいつを倒さなくては。
「一気に行く!!」
使える魔力はほんのわずかだけど。威力はそこまで落ちてない。
魔力の限界まで力をためて一気に放つ。これしかない。
長老が敵を引きつけているのが見える。だけど、敵からは私の姿は見えていない。
それどころか、敵として認識されていない。
よし!
まるでか〇は〇波のように腕に魔力をためながらその期を待つ。
そしてその期は思ったよりも早く来た。
長老が追い込まれ、まさにとどめを刺そうとしている。
今しかない。そう確信して。
「喰らえ!!!」
私はラクスの背後に駆け寄る。
「何?」
完全に油断してたらしい。
「終わり!!」
そして私の魔力を蔵、四天王の右腕が吹き飛んだ。
「くそ、己」
まだ死んでいない。
これだけやっても死なないのか。
これは非常にまずい。
「いや、ここまでやれば十分だ」
そこに一人の男がやって来た。
魔族だ。
「やっと来てくれたか、ディオス」
ディオスと呼ばれた男。さすがに全力の私には及ばないけど。村長よりも強そうだ。
ふーん。そんな隠し玉があったんだね。
まあ、とりあえずここからはあいつに任せとけば終わるか。もう、魔力はないしね。
リリシアに手柄を取られるよりは百倍ましだ。
そして四天王二人目は私の一撃を喰らった後だからか、弱っていた。
が、それでもディアスと互角に戦っていたので。やっぱり強かったんだなと思った。
だが、ラクスがだんだんと押されて来た。私のおかげかな?
そして遂にラクスは倒れた。
そして、私の体にも変化が起きた。
「詩音殿。成長なされたのですか?」
そういわれたのだ。
魔法で体を移すと明らかなる成長が見えた。
「これで私戦える」
そう思うとうれしくなった。
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