第51話 神
一番大きそうな部屋へとたどり着いた。
「誰だ!」
部屋に一歩入りこんだ……その時に闇の砲撃が私の腹を貫いた。
私じゃなかったら死んでたよ、まったく。
「む? 貴様か……詩音。まさか貴様自らここに来るとはな」
「うん。私だって来たくて来たわけじゃないけど」
「それで何が望みだ?」
「私は……あなたが言っていた神と言うやつに対抗するためにここに来た。そして、地上に出るために」
目的を告げる。
「神、やはりあやつ動き出したか。だが、我には何もできん。貴様にやられ、また地上に出るチャンスを逃してしまったしな」
「そう……」
所詮は私にやられたもの。役には立たんか。まあ地上の戻り方を教えてもらおう。
「それ……」
「だが!」
言おうと思ったら遮られてしまった。
「詩音。貴様が我の力の媒体となるのであれば、ここから脱出し、神に勝てる。さあ! 我の力を受けよ! 詩音!」
なるほど。でも……
「神って本当にそんな強いやつなの? 私あまりそう言うのわからなくてさあ」
「神は……前に我が戦いを挑んだ時、我は懸命に戦ったが、結果はぼろ負け。勝つなんて夢の夢だった。我も闇の王として必死で戦ったのにだ。それほどに恐ろしいやつなのだ。だから、本当に頼む。奴に勝てねば、我ら闇の民は延々と闇の中で生きねばならないのだ。我らは光の中に戻りたい。ただ、それだけなのだ」
「ふーん。でもさあ、私たちの世界を侵略しようともしてたよね。そのことに関してはどうお考えなの?」
「それは、もともとあの世界が我々の住む国だったからだ」
「証拠は?」
「証拠だと?」
「うん。証拠がなかったら信じる気にもならないし。私、あなたたちのことは交渉相手としてはいいと思ってるけど、別にそれだけだから」
「我は……貴様の望むような証拠を出せん。だが、神に我々のすべてを奪われたことには変わりはない」
「でも、こっちの世界を侵略しようとはしてたじゃん」
「今はそちらの世界は狙っていない。我が手に入れたいのは天界だ」
「天界……天界!?」
ワクワク感のあるワードじゃん。
「まあいいや。同盟を組もう」
仕方がない。元々地上に戻るためにはこいつの力を借りなきゃならないのだし。
「わかった。なら、魔力を込めてくれ。我がそれを食らい、現世へと出る」
「オッケー! そういう事で。それで上にはどうやって帰れるの?」
「普通にこの門を通り、地上へと帰っていくのだ」
そして私は門を通り、地上へと帰って行った。
「さあ。この魔力を食らえ! 闇の王!」
そして、私の魔力を食らい、闇の王が外に出てきた。
「闇の王? どう? 私に負けて以来の地上は」
「ふむ……想定以上にあれているな」
「まあ、半分くらいあなたが私を封印状態にしたのと、太古の魔王が人を殺し過ぎたせいだけど。まあそれはいいの。別に。ただ、あなたには神を倒す手助けをしてほしいだけだからね」
リリシア自体はこいつに恨みがあるだろうけど。ミルちゃんたちを間接的に殺したのだし。
「ふむ。それであそこにいるのが神だな」
「うん。知ってるんでしょ」
「そうだな。知っている。奴には何回も煮汁をくらわされたからな」
そして、私たちはそちらの方へと向かっていく。
「あ、助けに来たよ。リリシア」
「ああ、来たんですか」
「どう? 状況は?」
「早く助けてほしいですね」
「わかった!!!!」
と、魔法を放ち、神にぶつける。だが、ほぼノーダメージだった。
「ふん!! 詩音か……久しいな」
「久しい? 私はずっとあなたを殺したかったけどね。なんで鳥にしてくれなかったのよ」
「ああ……今からすると、さっさと鳥にさせていればよかった。そうすればこの世界がこんなにおかしくなることもなかった」
「そっちが勝手に私を転生させたくせに!」
私は人に転生、いや、転移? させてほしいとは一言も言っていない。
「我も貴様には同様に憤りを感じているぞ。闇の王国を弾劾して」
「それは闇の王貴様が世界征服と言った野望を秘めてたからであろう。まあそれはいい。私の狙いは詩音……貴様だけだ!」
と、神は雷を私に向けてはなった。
「きゃあああああ」
速すぎる。私には見えなかった。
「もう一発だ」
そして再び凄まじい速さの雷が私の腹を貫く。
「なるほどね、スピードタイプかあなたの技は。でも!」
見えた。放つ瞬間に黄色い光が神の手から放たれる。そして、私はそれをあっさりと避ける。
「なに?」
「私を強くしたのはあなただから」
返しとして炎の弾丸を飛ばす。そして神のそばに来た瞬間に爆発させる。
「悪いけど私の方が強いよ」
「あの、私のこと忘れてませんか?」
「忘れてないよ。今は私の方が強いしね」
そして、二人で神に相対する。
「私たち二人ならだれにも負けない!!」
「何ですか? それは」
「えへへ」
なんか楽しくなってきた。私は輝ける。
「行くよ!! ドラゴニックオーラ全開!!!」
私の体から竜系の赤いオーラが出る。
「さあ行くよ!!」
地面を蹴って、神へと近づき、パンチを繰り出す。しかし、万一のところでよけられ、後ろに下がられる。そのまま攻撃を加えていくが、見事に全て後ろに避けられ、そしてそのまま私は地面に落ちた。
くっそお、飛べるなんてずるい。そんなのあるんだったら私にくれたらいいのに。仕方ない、
「竜よ、顕現して!!」
竜を呼び出し、私がその上に乗る。その竜の力で空に飛び、竜の背中を蹴って再びパンチを繰り出す。避けられるが、竜をその足場にして、パンチを複数回加える。こうすることで行動範囲を絞らせて、
「私のことを忘れないでくださいよね」
と、リリシアが闇の波動を当てる。だが、神はそのまま浮き続けている。
「なるほど、だが、その程度か?」
「その程度なわけないでしょ!」
「失望したな。異世界転移者がその程度とは」
「ふざけないで!!!」
闇のオーラを収縮して空に飛ばし、一〇〇発空に浮かせ、それを一斉に神に当てる、その間にリリシアは、まっすぐ炎を飛ばした。そして私の闇の弾に怯んだ神はそのまま炎に当たるはず……だった。しかし、神はそのままバリアを張り、炎の直撃を避けた。だが、そんなことはもう予想している。バリアを直接力を込めた拳でたたき割る。そして炎が直撃する。
そこにさらに闇の王の一撃がさらに加わった。
これぞ数の利!
「なるほど、こちらも攻撃に移ったほうがいいか」
と、その発言のすぐあとに、光が轟きリリシアの体を貫いた。彼女はかろうじて魔力をおなかに集めたことで、大ダメージは免れた。だが、私がリリシアの方を見た瞬間に、私の方にも光が届いた。そしてその光は先ほどよりも早く、私の体を突き刺す。
「っ痛いわね!!!」
地面をける。そして、地面から岩を生み出し、それに飛び乗り、神に殴りかかる。
だが、神は雷で、バリアを作り出す。
「雷程度で私を止めらえるとでも?」
「もちろん思っている。いくら不死身でも、この攻撃は痛いだろ?」
「痛いけど、もう慣れた」
私は再び雷のバリアに突っ込む。
だが、体が焼けるように痛い。でも、この機を逃すわけにはいかない。
「はああああああ!!!」
バリアを乗り越える。
「この一撃で」
竜の力をまとった拳は赤く染まっている。
「消えてえええ!!!」
「何!」
拳が神の腹をえぐる。そのまま神は落下していく。
「だがなあ、終わってはいないぜ」
空中で神は体勢を取り直そうとする。
「我を忘れてないか?」
「何!?」
後ろには、闇の王がいる。
「忘れられては困るぞ、神め」
闇の王は自ら特攻し、神の腹をえぐる。
「忘れてはいけないぜ」
「なに?」
闇の王の体から光が出る。「ぬうう」それに合わせて苦しみの表情を見て、地面に落下していく。
「どうして?」
「おいおい、俺の能力は雷だ。そんな俺に触れたらそりゃ、しびれるだろ。もうあの娘は使い物にならねえ。さあ、さしでやろうぜ」
「っ望むところよ!」
闇の王は使えない。だけど、
さしでなんて、こっちからお願いしたいくらい。私の恨みは私自身で晴らしたいもの。
「行くよ、ドラゴニックバースト!!」
自分のドラゴンのエネルギーを周りに飛ばす。
「おう、効かぬぞ」
「それはどうかな?」
私はそのオーラを全部体に吸収させる。
「なんだ?」
そう、とぼけ顔をしている神に向かって、岩をコントロールし一気に放つ。
「また電気でしびれたいのか? 無意味な攻撃をするな」
「無意味じゃない!!」
それにさっきだって、ダメージは喰らっているはずだ。
「うおおおおおお」
また雷に突っ込む。
「なんだ、さっきより威力落ちているじゃない」
何しろ、さっきより痛くない。体内のなんか抗雷みたいなのが発達しているのか、単に体力が落ちて威力が下がっているのかはわからないけど。
「これならいける!」
雷のバリアを破り、全力のパンチを!「ドラゴニックブレット!!!」
「ぬおおおおお。っっこれでも喰らえええ」
雷がこちらを襲う。でも、痛くない。
「足りないよ、そんなんじゃ!!」
私のパンチが、神を穿ち、神は空から落下する。
「はあ、これで終りね」
倒れている神の前に行ってそう呟く。
「これで終わったとでも思っているのか」
「なんですって?」
「私が本当に神だと思ったのか? そんなわけがなかろう。私は、いや俺はただの影武者だ」
「……影武者」
いつの間にか目覚めていたリリシアがそう呟く。
「そうさ、俺は神直属の四天王の一人、雷電のバルだ」
「てことは、あなたレベルの敵があと三人いるってことだよね」
「ああ、三人いる。だが、俺はあくまでも四天王最弱だ。俺よりはるか強いやつが他に三人いるというわけだ。残念だったなあ」
「まあ、それ漫画にありがちな内容だけどね」
「何を言ってるんだ……」
きょとんとしている。まあ、分からなくていいよ。
「でもね、私たちはどんな敵が来たって絶対に倒すから。ね、リリシア」
「勿論です」
いつの間にか立ち上がっていたリリシアが頷いた。
「なるほどなあ」
バルは舌を出す。
「せいぜいがんばれよ」
その瞬間バルの体が光る。
「ちょっこれって」
私とリリシアはすぐさま受け身を取る。
嫌な勘は当たる。あたり一帯が爆発によって吹き飛んだ。
「なんだよ、一体さあ」
隣を見る。リリシアも何とか耐えられているようだ。
「自爆とかつまらないことをしないでよ」
だがそう言っている私の声が変なことに気が付いた。
「あれ……?」
声が高い。それにリリシアが自分よりはるかに大きく感じる。
「魔王、可愛いですね」
私は子供になっていた。しかも小学一年生の体に。
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