第50話 禁術
その頃、ダンジョン
「本当あなたの相方信じられない。まさか妖精国に脱出するなんて、ああもう、人間が妖精国に入ってはならないのに」
そう、マキナがイライラの表情を見せる。
「本当あの人がすみません」
リリシアは謝罪の言葉を述べる。これで、詩音の尻拭いをするのも何度目だろう。
「ああ、良いわ。あなたもあいつ、コントロール出来ないんでしょ?」
「まあそうですけど、本当あの人をコントロール出来る人間がいるんなら、教えて欲しいくらいです」
あの、自由奔放すぎる人間を。
「私も……あの隙に妖精国へ脱出を試みるべきだったかな……」
「何か言いました?」
「いえ、なにも。とりあえずあなたは合格ってことで、私の奥義を捧げるわ。私の、妖精の力を!」
「ありがとうございます!」
そして、リリシアに力が湧き出る。
この力さえあれば、詩音にもボロ勝ちすることが出来そうだ。
「本当はあいつを早く妖精の国から追い出して欲しいところだけど、まあそんなことをあなたに言っても困るよね。とりあえず神に戦うために力が欲しいのよね」
「はい!」
「それでこれは……禁術なんだけど、教わる気はある?」
「禁術ですか?」
「ええ、妖精術の中で究極の魔法。あなたは私に食らいついてきたし、あなたもそれに耐えうる器がある。でも、最悪死ぬ恐れもある。それで設ける気がある?」
「教えてください!」
リリシアは躊躇いなくそう言った。
神に対応できる力を貰えるなら命を落とすリスクなんてどうでもいい。
「躊躇ないね。わかったわ。じゃあ呪文を教える」
「呪文?」
「ええ、それに成功したらあなたは莫大な力が手に入る。でも、失敗したらあなたは死ぬ。最高の場合でも四肢決損はするだろうと言われてる。じゃあ教えるね」
「アルスゲインラタコッテブレアズメルクレアサトンデラルべメストラリングレイズロリットシルベミランテリシングレイトル。これがその呪文の名前よ。私は今これを小さな声で唱えたから呪文の効果はなかった。でも、大声で言えば、それはなるわ。あなたの運命はそれによって決まる。じゃあ、覚悟が決まったら言って!」
「アルスゲインラタコッテブレアズメルクレアサトンデラルべメストラリングレイズロリットシルベミランテリシングレイトル!!」
そう、リリシアは躊躇なく大声で言った。
その瞬間彼女は暗雲の渦に巻き込まれ、そのまま、竜巻の中でぐるぐると、ぐるぐると、彼女の体が大回転する。彼女はその中でじっと、運命に身を任せた。
そしてその暗雲が彼女の中に取り込まれ、そのままリリシアは倒れた。それから始まるのは、彼女の内での戦いだ。
その戦いは一瞬。だが、リリシアの中では幾年もの年月が流れている。
中で、恐ろしい恐ろしい化け物と対峙しているのだ。
そして、
「うわあああああああああああああああ」
リリシアの悲鳴が部屋中に響き渡った。その音は絶叫と言えるほどの音量だった。リリシアは本当に悲痛な声を上げている。
「これは……失敗か?」
マキナはそう呟く。
「失敗って、簡単に決めないでくださいよ!!!」
リリシアは強くそう叫ぶ。
「私は!!」
そして彼女の声が消え、そのまま彼女は倒れた。
「これは……死んだか?」
マキナは再びそう言う。だが、リリシアは静かに目を開けた。
「ああ、これが……」
リリシアは寝ながらそう呟く。彼女の体には闇の力が身に染みて、その一方でフェアリーオーラが満ちている。
闇と妖精の力。リリシアはその両方の力を手に入れたのだ。
「ありがとうございます」
「私は大したことはしていませんよ」
「でも、あなたのおかげでここまでの力を宿せました。本当にありがとうございます」
これで神にも対抗できる。
「ええ。じゃあ行ってきて」
「わかりました!」
「あ、ちょっとだけ待って……人間界に戻る前にお願いがあるの。私は妖精の国に帰れなくなってしまったの。だからこそ、さっきの人間のように壁を破ってほしいの」
実際、先ほど詩音が作ったアナは塞がってしまっている。
「妖精界に人間が入ったらだめなんじゃなかったんですか?」
「まあそうなんだけど、今回は特別。私をここから出してほしいの」
「わかりました」
リリシアが力を込めて、壁に向けてパンチをする。すると少しずつながら、壁がどんどんと削れていく。そして二〇分後、ついに、全通した。
それを見てリリシアは嬉しくなった。
これなら先ほどの詩音の力にも匹敵すると。
「ありがとう。この御恩は返します」
「ええ、じゃあ私を陸の世界に」
「わかったわ」
と、彼女は陸の世界へと復帰した。
「神!」
その時、もうすでに神が地面を荒らしていた。
「何をしているんですか?」
「見てわからんのか? 人間と言う、この世に不必要な存在を滅ぼしているだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「わかりました。では、あなたを倒します!」
そして、リリシアは神に向かい、戦いを挑む。
SIDE詩音
「さてと」
闇の王国へと向かっているさなか、私は一つのことに気付いた。よく考えたら闇の王国がどこにあるかわからない。どうしたらいいんだろう。一応、南の方向にあることは知ってるんだけど。
「まあ進んでいくしかないよね」
と、楽観視しながら先へと進む。
ここは不思議な世界だ。
周りの景色が全然違う。
妖々とした雰囲気で、まるで黄泉の国へと進んでそうな感じだ。
まさかこのまま死ぬなんてないで欲しいんだけど……
そして一時間ほど歩いたところで、暗く閉ざされたような土地が広がってきた。夜ではない、だが暗い。何とも言えないような感じだ。
そして段々と黒い城が見えてきた。その正門は強く閉ざされており、門番もいるようだ。だが、私は入らなくてはならない。早速門番を殺し、門に向けて力を込める。
「ふん!」
だが、門は動かない。どうやら、思ったよりも力を入れなければ動かないようだ。
「じゃあ……これで!」
と、力を入れて、門に対してぶちかます。
「壊れてええええ!」
すると私の目論見通り、門が破壊された。
「やったー!」
と、そのまま階段を上がっていく。どうやら中には本当に誰もいないようだ。
そして一番大きそうな部屋へとたどり着いた。
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