第49話 ダンジョンの謎

 

「ここは……」


 気が付いたらそこは牢の中だった。牢とは言え、全体的にピンクで構成されていて、なんだかファンシーな感じだ。私の両手は後ろ手に拘束されており、髪の毛を掻くことすらできない。足も同様に両足を一つの足枷で拘束されている。そしてその周りにはピンク色の鎖でクルクル巻きになっている、文字通り手も足も出ない。本当まいった。これじゃあ何もできない。



「気が付いたか、罪人」


 外にいた、妖精女王ティターニャが私に話しかけてきた。


「私罪人じゃないもん」

「良く言えるな。その状態で」

「えーいいじゃん。仲良くやろうよ」

「黙れ!」


 と、ピンク色の光線が私の心臓付近を貫く。


「痛いなあ!」


 正直不死身じゃなかったら死んでたし、そもそも不死身でも痛すぎる。

 仲よくしようって気がないのかなあ。


「罪人にはふさわしい罰よ」

「本当にふさわしい罰か自分で考えてみるがいい。私に楯突いたらどうなるか」

「そんなかっこつけられても困るのだけど」

「あはは。で、何が聞きたいのかな。こんな厳重に拘束をして」


 中二病みたいな、感じで言ってみる。前みたいにへっぴり腰だとまずい。


「さて、言うなら早くいってくれよ。私は眠いんだ」


 見ろ。このやべーやつ感。私行けてる。さあ、私のすべての好奇心よ。私は今! こんな演技が出来てる。さあ、感情よ、細胞よ高ぶれ!


「貴様はなぜ、ここに侵入した?」

「それは私が聞きたい。私はダンジョンを掘り起こしてたらここに来ただけなんだが」


 侵入とかしてないし。


「なるほど。それでなぜあんなに殺したんだ?」

「それはただの気分」

「貴様!」


 私の胸をまた光線が貫く。痛いなあ。


「そんなに怒らないで。ただ、あの世に行っただけじゃない」


 私も行きたいあの世へ。


「あの世……ここでは地に帰るっていうのだけれど。だが、それはこれとは関係がない。地に帰っただけどはなんという言い草なんだ。貴様は」

「いいじゃない。まあそんなくだらない議論をするつもりはないの。私はただ、ダンジョンの謎と人間界への帰り方が知りたいだけなの」

「私がそれを教えると?」

「私はなぜ殺したか言ったじゃないですか。ならそちらも言うのが道理だと思うんですけど」

「私と君は対等な関係ではない。図に乗るな」

「図に乗るな? どうでもいいけど、私は対等な立場のつもりだから」

「それでよく言えるな」


 そう、妖精女王ティターニャが言った瞬間鎖がさらに強く私の体を締め付ける。痛い。


「まあ、すぐに私は拘束をほどいて見せるからねー」


 と、拘束具をすぐに力でねじ伏せた。これには力も魔力も弱めるなんて効果はなさそうだからねー。


「これで、対等な立場だね」

「驚いた。まさかあの拘束をほどくなんて」

「こっちこそまさかあの程度の拘束で私を捕えた気になるなんて驚きました」


 私は今まで何回拘束されてきてると思っているんだ。私は……拘束を克服したんだ。


「さあ、話をしましょうか。あははははは」


 妖精女王ティターニャに向かって、魔法を放つ。


「今度は私が上に立つ番です。大人しく捕まってくださいね」

「だまれ」

「ここは……地下。あなたは飛べない。この時点で私の方が優勢なの。これで立場の差が分かった? 私はわざと捕まったの。この状況を作り出すためにね。さあ、教えてくれませんか? 私が提示した二つの質問の答えを!」


 もちろんわざと捕まったわけではない。ただ嘘も方便だ。

 質問ばかりは力だけでは何ともできない。相手を絶望させてから聞くしかない。


「さあ、教えてくれますか?」


 今度は優しく言う。アメと鞭だ。


「もう一つ手はある。私が今度こそ貴様を殺すことだ」

「殺せるの? 殺せるんだったらわざわざ拘束してないですよね。でも拘束したということはそういうことだよね」


 そもそも私の不死身の能力にすでに気付いているはずだ。


「ふん! フェアリーフレイム!」

「ドラゴンファイヤー!」


 と、相殺され、そのすきに、


「死ねええ!」


 と、殴りかかる。この狭い空間で、体術と言うのはかなり役に立つ。狭いおかげで、相手の逃げ場がほとんどないのだ。


「っく! マジカルフレア!」


 だが、私の中に張っているバリアがそれを通さない。そして私のパンチが彼女にヒットする。


「あれ、勝てた?」


 どうやら空の上じゃなかったら強くなかったようだ。


 しかし、拳一発でダウンとは柔だねえ。





「起きた?」


 と、先ほどの私のような感じで拘束されている彼女に話しかける。


「さあ、教えて頂戴」

「わかったわ。全部教える。でも、約束して、全部教えたらもう、この国の民は誰も殺さないと」

「分かった。約束する!」


 すると妖精女王ティターニャは口を開いた。


「まずは、ダンジョンの件。あれは、妖精族が作り出したものです。これは長くなりますが、妖精歴七四九年。今から三〇〇年前のことです。妖精大王フレドリックは言いました。地上へと攻めようと。人間族を滅ぼそうと。そのために、人間界と妖精界の階段を作ろうとなった。それが今でいうダンジョン何です。だが、そのダンジョンも、フレドリックが亡くなられて、全て崩壊した。彼によって作られたダンジョンは皮肉なことに彼によって崩壊してしまった。その時、何百もの妖精がそのダンジョンに取り残され、それが今、ダンジョンに閉じ込められたため、ダンジョンと同化した。そして、そのダンジョンは今も残っている。それは彼……太古の魔王により、魔力を与えられ、そのためダンジョンが復活した。それにより、そこにいる妖精は一斉に人間を試すことにした。気に入った人間には力を与え、気に入らない人間はそのダンジョンに永久に捕らえられたという事だ」


「なるほどねえ。でも謎が残るね。なんでそいつらは今、人間を試してるの? 私は今まで二つのダンジョンをクリアしたけど。あ、一つはなんかブチ切れられたから、ノーカンか。まあ、とりあえず、人間嫌いだったんでしょ? 攻め込むってことはさあ。それに、なぜ壁の破壊をあんなに拒んでたのかわからないし」


「それは、人間に妖精界の敷居を跨がせたら行けないと思ったのでしょう。それと、人間を試してる意味は、彼女たちは本来は人間が好きなんです。攻め込もうとした理由も、人間族を手中に収めたいと言ういともあったらしいですし。だからそんな感じのことだと思う」


「へー、それでさあ、なんで、そいつらは壁を壊さないの? 妖精国に帰るために」

「壁は壊さないんですよ。硬すぎて」

「え? 私普通に破ったけど」

「それはあなたがおかしいのだ」

「え? それって褒めてる?」

「あなたと話してるとなんかおかしな会話になるな」

「そう? でさ、どうやったら人間国に帰れるの?」


 妖精国とダンジョンを繋ぐ壁はすぐに消滅した。こうなっては、ダンジョン経由も出来ないし、困った。


「ダンジョンは使えないなら、この世界で、別の方法を探すことになる。例えば、闇の王国に行くとかでだ」

「闇の王国? 闇の王と関係がある?」

「闇の王のことを知っているんですか。なら話は早い。闇の王国は人間界との接触を図ってます。そこに行けば方法が探せるかと」

「オッケー。闇の王国ね。じゃあすぐ行ってくる!」 


 そのままこの牢獄を脱出した。


「私、拘束されたままなんだが……」


 その妖精女王ティターニャの呟きはもう詩音には聞こえていなかった。

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