第41話 決着
「本当は貴様の体を用いたかったんだけどなあ」
と、言って闇の王は光線をぶっ放してくる。その攻撃は激しく、怒りに満ちているようだ。
そんなに詩音の体が欲しかったのかと、詩音は呆れる。
「私は不死身なんでそんな連発してこなくても大丈夫ですよ。むしろあなたの体力が減るだけです。無意味なことはやめましょう」
そう、詩音はまるで、自分の方が立場が上かのように堂々と、言う。
「ふん、貴様もわかっているのだろう。私の攻撃によって、貴様の精神が闇に向かっていることを」
「ええ、そうですね。ならもう休戦にしませんか?」
「かまわない。ただ、休戦にしたらそちらの子が死ぬだけだが、それでもいいのか?」
「うーん、それは困っちゃうなあ。どうしよっかな」
「ふん、うちで魔力を練っているのが見え見えだ!」
と、再び魔法を放ってくる。詩音は会話の裏で、魔力を貯めていたのがばれて、「ふうん」と言った。
これはあくまでもばれてもいいと、詩音は考えていたのだ。
「さて、そろそろ茶番はおしまいだ。この、全体攻撃を浴びてみろ」
と、闇の王は貯めなしで技を放ってくる。
「これはまずいわね」
と、リリシアに魔法で連絡する。
(西にとにかく逃げなさい。左手の方向よ。とにかく逃げて!)
(分かりました)
詩音は受けきる気だ。バリアを貼り、バリアの中で魔力を貯める。
「防げるとでも思っているのか!」
「うん!」
「くらえー!」
闇の王が魔法を放ったその瞬間、
瞬間周りがぐにゃっと曲がり、半径五〇メートルは、地面以外全て消えた。木も、鳥も、魔獣も全て。
「はあはあ」
(周りが見えない、敵の位置がわからない、何も聞こえない)
詩音の感覚は全て失われてしまった。
「でも……」
闇の王につけていたマーキング、それは外れていなかった。今詩音には暗闇の中の一筋の光が見える。闇の王だ。
「行ける!」
瞬間、高圧力の魔力が闇の王に襲いかかる。闇の王一点を目かげて。
「むううううううう!」
闇の王は両手でそれを消そうとする。その魔法波を防ごうとする。しかし、詩音がフルで貯めた魔力を防ぎきれない。
「ぐあああああああ!」
しかし、闇の王はギリギリのところで耐えた、死にかけの状態で耐えた。
「くそ、油断したぞ、詩音よ!」
あれで詩音が吹き飛ばないとは思っていなかったようだ。
「あとは任せたよ。リリシア」
そして感覚遮断から復帰したリリシアが一歩ずつ闇の王に向かって行く。
闇の王の先程の攻撃の傍ら、感覚遮断から復帰していたのだ。
先程の攻撃に全力を込めたせいでそちらに回す魔力が無くなったのだ。
「ごめんなさい。漁夫の利を取っちゃって」
「……」
詩音は答えない。いや、返事ができない。もう、声も出せなくなってしまった。
「待て! 私を殺すと神が出てくるぞ」
「知りませんよ、神なんて。貴方を殺したのはほとんど魔王ですし、私は貴方よりも詩音……魔王の方が邪悪だと思います。ですが、どっちにしろ貴方は生きてたらいけません。死んでください」
リリシアが闇の王に向けて魔法発射準備をする。
「待て!」
「死んで!」
リリシアが発射した攻撃を闇の王は間一髪で防ぐだが、その際に、後ろからの攻撃をくらった。
「詩音、貴様か」
実は詩音は精神が完全に落ちる前に、攻撃を放っていたのだ。
「消えてええ!!」
リリシアが放った攻撃で今度こそ闇の王は消滅した。
(闇の王は死にました私たちの勝利です)
(……)
(え?)
詩音はまだ倒れたままだ、念波でも返事が返ってこない。慌てて彼女は詩音の脈を取る。死んではいない。ただ、意識が無い。
「まあとりあえず持って帰りますか」
と、彼女は今は瓦礫の山となった詩音の魔王城へと向かう。
「ねえ!」
相変わらず返事がない。念波を出しても同じだ。
「はあ、仕方ありませんね」
と、かろうじて残っていたベッドに寝かす。
「私は私のやるべきことを……」
と、詩音に向かって最高威力の魔法を放つ。しかし、やはり詩音は生きている。
「このまま生きるってどういう感じなんでしょうかね」
そう言って彼女はその場を後にした。もはやここには人など居ないのだ。ここにいても無駄。その一つ答えだ。
「ねえ」
返事は無い。
「ねえ!」
返事は無い。
「なんで闇の王は死んでるのに!」
周りは暗闇だ。何見えない。何も聞こえない。ただ聞こえるのは自分の声だけだ。
「なんで私の意識は帰ってこない?」
誰も答えが返ってこない、当たり前か。
どうしよう。このままずっとだったら。なんでこんな目に遭うんだよー。ただ闇の王の一撃耐えただけなのに。
だいたいこういうのってさあ、敵が倒れたら回復するんじゃないの?
あ、回復しないゲームもあるか。そうだとしても宿屋で寝たら回復とかしないの?
はあ、この退屈と向き合わなくちゃなあ。
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