第35話 神龍と太古の魔王

 

 SIDE詩音


「さてと」


 私はその場を後にした。リリシアならきっと私みたいに覚醒してくれるでしょう! 

 ふふふ、楽しみだな。どんな化け物じみた力が入ってくるのか


 ワンチャン鳥になるヒントが手にはいったらいいなあ。


 そんなことを考えていると、「魔王様!」と言いながら部下のうちの一人がやってきた。


「何だ?」

「神龍が現れたという情報が」

「なるほど、じゃあ倒してくるか」

「それが、もう町を襲っているらしくて」

「わかった。瞬殺してくる」


 神龍、それは神の龍と言えば聞こえはいいが、実態は破壊の限りを尽くす、脳のない化け物だ。過去に太古の魔王によって思考能力を奪われたらしい。

 そして太古の魔王の命令によって戦っていたのはいいが、結局太古の魔王もろともやられ、封印されてしまったらしい。



 もう少しここを見ていたいけど、仕方ないよね。


「しゅっぱーつ!」


 そして戦場に向かった。神龍、楽しみだ。


「りゅおおおおおおおおおお!」


 早速つくと、ラドルフが戦っていた。


「ラドルフ、状況は?」

「状況は深刻です。我が隊もほとんどがやられ、壊滅の危機にあります」


 やはり、こいつらではかなわないのか。まあ、仕方ない。


「ささっと倒してくるわ」


 そして私はあいさつ代わりとして雷の矢を用意して……


「サンダーアロー!」 矢を放った。


「りゅおおおお」


 だが、その攻撃はほとんど効かなかったらしく、軽く尻尾で払われた。流石にこの程度の攻撃は利かないか。


「なるほどねえ」


 だったらこれはどう!


「ダークライズ」


 と、闇のエネルギーをぶつける。そして、神龍に当たり爆散し、黒いエネルギーが神龍を覆いつくす。


「りゅおおおお」


 と、神龍は闇から逃れるように空に飛びあがり、そのまま地面に突っ込んできた。私に向けて。


「力勝負ね!」


 と、地面を隆起させ、その地面を鋼で覆い、カチカチにしてぶつける。


「りゅおおおお!」


 上手くいったのか、神龍は痛がる。いい感じかな?


 だが、まだ命は刈り取れていなかったらしく、再びこちらに向かって突進してくる。


「何度やっても同じだよ!」


 と、再び地面を鋼で覆い、攻撃を防ぐ。


「りゅおおおおおおお!」

「やっぱり知能のない獣ね。これじゃあ私に敵うには百年かかるわね」


 こいつはもう瀕死状態だ。これで勝ったも当然! つまらない勝負ね。


 だが、油断は禁物とでも言うか。神龍は炎を吐く。油断していたのもあってよけられなくて、そのまま炎で焼かれた。


「あっつ!!! くそう、やり方変えたね! じゃあ私も!」


「サンダートルネ―ド」


 と、雷を風に乗せて放つ。神龍は対抗して炎を放ち、雷風は神龍の炎とぶつかり合う。


「さすがに神龍と言われる事はある」


 雷風と神龍の火炎はまだ互角を保っていて、全然決着を見る目がない。だけど……

 私には別のやり方がある。



「うおおおお!」


 と、雷風をそこに保たせ、私は風剣で神龍の首をかき斬ろうとする。


「死ね!」 


 と、首を真っ二つに斬った。どうやら神龍は首の防御をおろそかにしていたらしい。突撃力はあるのに、防御はカス。まったく、私の好敵手には程遠いね。


 こういうのには新たな鳥になる秘密とか期待したいところだけど……


 あ、やばい。火炎消えないのか! 押されてんじゃん。


 そこで急いで追加の雷風をぶつける。


「ダークメテオ」


 後ろからそう聞こえた瞬間に隕石が私に降り注いだ。


「痛いなあ」


 死なないから良いとはいえ、隕石で体が吹き飛ぶと思った。


「さーて、君に生きていられては困るんだよ。勇者」


 私を勇者と言う人はそんなにいない。もう魔王という通称が当たり前になっているのだ。


「封印の中見てたよ。君の活躍を。凄いねえ。私を超えるかもしれん」


「残虐性においてはね!」


 と、低い声で言った。


「要するに、私はあなたに認められるぐらい、最低な奴なんだ。あなたが誰か知らないけど」

「我が名は魔王ラストだ」

「なるほど。太古の魔王というわけか」

「そうだ!」


 と、言ってラストは闇の球を放ち、避けられずに喰らった。というよりも、


「くぅ、話してる間にぶつけるなよ」


 そんな漫画のお約束を破る人がいるとは思っていなかった。


「悪いな、手が滑ってなあ」

「やな人だね。あなたは。私は正々堂々と勝負がしたいのに」

「別に私がそれに付き合う義理がないだろう」

「良いねえ良いねえ! 悪役感が半端ない! ざ、悪役って感じだよ」


 テンションが上がる。私自身も中二病だから中二病の奴と対峙すると楽しい。


「まあ私も攻めようかな」


 と、私は雷風をラストに向けて放つ。


「無駄だ」


 と、魔王はその攻撃を闇の玉をぶつけて相殺させ、さらに再び闇の玉を五つ作り出し私の方にぶつけようとする。私はそれを風剣で切り裂き、そのままの勢いで魔王を斬ろうと向かう。


「やるねえ」


 と、ラストが一言。


「だが、ある程度はだがな」


 ラストは素早く私の剣を払った。


「なるほど、速いね」


「ある程度は」


 セリフをパクる。いいセリフは使わせて貰いたい。かっこいいし。


「だが、貴様にはこの剣を受け流せるか。無理だろう。この剣を破った者はいない。当然私の魔法もな」


 と言って魔王は剣を振る準備をしながらこちらに向かってくる。


「ひどいな、私の反論を聞いてよ!」


 と、剣を合わせて、弾く!


「ほう、これを受けるか……誇っていいぞ」

「どの口かほざくんだ!」


 と、剣に風剣を叩き込む。


「だが、甘い!」


 と弾き飛ばされた。仕方ない


「また借りるか」


 ドラゴンの力を借り、ラストから距離を取って走り出す


「いけー!」


 と、およそ時速一五〇キロでツッコむ。速度は適当だ。


「ふん!」


 と、ラストは私と同じように鋼鉄のとげが付いた盾を展開する。私の神龍に鋼をぶつける作戦をパクったなあ。


「効くと思う?」


 まさか神龍と私の知能指数が同じだと思われているということが心外だ。私は賢い!


「どけー!」


 と、風を地面にぶつけ、空に浮かび、全力の炎魔法をラストに向けて放つ。


「なるほどな……」


 ラストも盾を放棄して……


「闇で増力したこの力を味わえ!」


 と、闇の炎を私の炎に合わせる。


「私の炎は最強だもおおん」


 と、さらに火力を上げて、ぶちかます。


「うおおおおお!」


 そして二つの炎ははじけて、お互いに距離を取る。


「お前の実力を甘く見てはいけないようだな」

「まあね」


 と、再び風の力を借りて空に舞い、ドラゴンを召喚して、その上に乗り、空を飛ぶ。


「なるほど、お前は空に飛びたいと思ってたと思っていたのだがな」

「まあね、私の力で飛びたいのよ。竜の力を借りないでね!」


 と言って再び地面に向かって突進する。風で竜の軌道を変えながら。


「また突進と見せかけて炎を吐くんだろ。見えているよ」


 ラストは足で地面を強く蹴り、空中およそ八メートルまで飛んで、闇の球を複数ぶつけようとする。


 だめだ。さっきよりも早い。正直目で追い切れない。


「うわああ」


 と、私は竜から八り落とされて、地面に衝突した。


「いったいなあ!」

「これで終わりではないぞお」


 と、魔王はまた闇の球を複数生み出して私の方にぶつける。


「逃げられないじゃない!」


 と、再び被弾する。


「とどめだあ」


 と、最後は闇の炎で焼かれた。


「死なないけっど。きついなあ」


 と、起き上がろうとするが、体の回復にエネルギーが使われているのかうまく立てない。


「驚いたな。この攻撃は並の人間なら何回も吹き飛ぶくらいだと思っていたが……さすがは勇者。だが、回復の時間稼ぎをしているんだろ。もう一度死ね」


 と再び闇のエネルギーをまとった槍が私にぶつかる。


 油断したなあ。せっかく俺つえー主人公になれたんだと思ったし、空を飛ぶのにももう少しだったのに……


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