第19話 魔族

 そして上に戻ったらまず、服を制服に戻し、歩いて魔族の村へと向かう。


 竜で行ってもいいが、それはなんとなくだ。

「はあ、本当嫌だ」


 そして、一日かけて、およそ目的地までの、半分の距離を進んだ。まあ途中で飽きて半分くらい竜に乗ってたんだけどねえ。

 まあでも歩いたカウントにしよう。他の誰が何と言おうが、私にとってそうなら別にいい。


 そして歩く事で多少テンションも上がった。そのおかげでルンルン気分で歌を歌う。そう言えばこの異世界って歌もあるのかな?

 まあ、それは本当にどうでもいいんだけどね。


 そして、最後に少し進んだ後、夜になったので野営をすることにした。炎だけ炊いて、あとは寝るだけ。つまらない野営だ。家にいるのと何も変わらない。だけど、そんなつまらない野営が私には少し楽しかった。


 そして翌日、再び足を動かし始めた。だが、今日はもう歩くのは面倒くさい。おおよそ五分歩いたところで、竜の背中に乗ることにした。竜の背中は楽だ。何より、自分で歩く必要はないし、寝ることもできる。という訳ですぐさま寝ることにした。寝ても許されるだろう。


 そしてそのまま、数時間移動したときに、


「りゅおおおん」


 と竜が言った。どうやら私を起こしてくれたらしい。


「さて」


 と言って、竜を地上におろし、竜の背中から降り、魔族の里へと一歩ずつ歩みを進めた。

 さて、私の計画の開始だ。

 村に入ってまず、


「ごきげんよう皆さん!」


 と、挨拶をした。


「だれだ! 君は!」


 と、その場にいた男が私に対して剣を向けてきた。


「何をしに来た! 言え! さもないと殺すぞ!」

「ラドルフと言う男を読んできてください」

「まさか……貴様ラドルフ様を殺すつもりか?」

「ふはあははは。まさか! 殺すつもりだったら暗殺するでしょ。なんで昼にわざわざ来るの? それに私は君たちの味方だよ」

「……誰が信用できるんだ。人間を!!」

「人間だから信用できない? くだらない差別感ね」


 差別し返すというのは、それはもうあれよ。復習は何も生まない理論と同じ話。

 結局堂々巡りして自分たちに帰ってきてしまうんだから。


「差別感? 差別してるのは貴様ら人間だろ」

「はあ、話が平行線ね。いいからラドルフさんを読んできてください!」


 こんなことをしてる暇じゃないのになあ。私の崇高なる計画を邪魔しないでよ。仕方ない、あんまり取りたくない手だけど、


「読んできて!!!!!!」


 そう、竜のオーラを纏って、大声で叫んだ。そう、最終手段、威圧だ。この手は協力関係としてあんまりよくないと思いつつ、面倒だから使ってしまったのだ。


 そして、男連中はラドルフを呼びに行った。


 その間待ちぼうけを喰らったので、その場でて遊びをした。まあ、何をしたかというと手相を広げるという遊びだ。……とはいえ、何の手相がいいとか何も知らないんだけど。


 そして一〇分後、ラドルフが来た。やっと来たか、待ちくたびれた。


「要件は何だ?」


 お! 話が分かってくれそうな人かな? いきなり攻撃してこないなんてやるう。


「私と一緒に、魔族の国を建国しましょう」


 そう静かに言った。たぶん漫画なら画面中に! !? !! ドン とかいろいろな擬音語がつかわれるところだろう。そして尾びれには、そう言い放った詩音、その意図とは!? とか書かれるんだろうな。そう考えると、少しだけ楽しくなってきちゃった。


 おっと、彼らの反応も見なくちゃね。と、あちらを見ると、ポカーンとした顔だった。まあそうだよね、そうなるよね、犬猿の仲の人間にそんなことを言われたんだもん。ここで、もう一言追加するか……


「私は人間が嫌いなの。奴らは大きなことを言って、実のところは傲慢で、自分のしたいことは何もかも押し通す連中なの。あの、我儘な連中に虐げられている魔族が不憫で仕方ない。あなたたちは人間に対して先に手を下したわけではないでしょう。だからね、私と一緒に、人間を叩き潰しましょう」


 まあ、半分程度は嘘だ。私はそんな人間じゃない。それに今迫害されているのは魔族が弱いから、それだけだ。


 ただ、人間の奴隷は欲しいとは思ってるけど。


 そう、私の計画は、王になることだけではない、人間を恐怖のどん底へと叩き落す、魔王になることだ。だって考えてみろ、今は上位種だと思っている人間が、突然魔族の大量の兵を率いてきた、元英雄に叩き潰される図。ああ、考えただけで気持ちが高揚する。そうだ、私は、魔王になるんだ、世界を消滅の危機へと陥らせるんだ。そのついでに、今度は私が破壊神を復活させてもいいよね、この世界を好きなものにできる、その権限を頂戴。


 あ、もちろんみんなのために魔族の国は作らせてもらうよ。そのためには魔族のみんなに私を崇めたてさせなきゃならないよね、返事はまだみたいだけど、どの待ち時間さえ、楽しく思えてくる。


 そうじゃない、飛べないのなら、世界をわがものにしたらいいじゃない。


 いいよね、こういうの。楽しい楽しい楽しい。なんでもっと早くやらなかったんだろう。こんな楽しそうなことを。あはははははは、やりたいことリストがどんどんと増えていく。最高、もう最高!!! ああ、もう。かわいい顔をしちゃって、私に利用されるだけのコマよ。


 さあ、もうあなたたちは私を気持ちよくさせるために働けばいいのよ。返事をためらってる時間はいらない。今すぐイエスっていえばいいのよ。本当、これ以上私の貴重な時間を取らないでよ。なんか相談し始めてるみたいだけど、もう一分経つのよ、私の子の崇高なる計画を実行するための貴重な時間を返してちょうだい。そう、この私を楽しませるための時間を。


「さあ、早く決めなさい、私の手を取るか、私を殺してこの終わらない地獄を体験するか。前者の方が得と言うのはわかりきっている話でしょう。何を迷う必要があるの? 私のことが信用できないの? まあ、私人間だから信用できないのは当たり前か……」


 と、さらに言葉を付け加えておく。背中を押すための言葉を。これですんなり私の部下になってくれたらこんなに楽な話はないんだけどなあ。まあ無理か、私じゃないもん。そんな即決なんて出来やしないよね。


「一日だけ猶予をくれないか? 我々が君のことを見定める時間を」

「わかった。じゃあお泊りできる場所をくれる?  野宿はもう疲れたからさ」

「わかった」


 そう言ってラドルフさんが宿を取ってくれた。ありがたいことだが、信用してくれてもいいのにな。だって、私がしたいことなんてさ、所詮世界を我が手中に収めたいくらいなんだよ。そんな大したことでもないしさ。


「はあ、暇ーーーーーーー」


 叫ぶ、外に聞こえない程度に。ただでさえ、この張り詰めた空気の中一日待たなだめなんてさ。そしてこの間にも、私がギルティか信用するかと言う話し合いが起きてるんだろうなあ。まあそんな話し合いに省かれている私よ。もうね、うん。まあ私一人でやってもいいんだけど、私一人だと。なんかそう言うクオリティとか低くなるからさあ。


 そしてそんなことを考えながら眠りについた。

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