第18話 ラスボス戦

 入った瞬間、


「我が娘よ。本当にわしに逆らうというのか?」


 そんなセリフが聴こえた。立派な髭を生やしたお爺さん。彼が王様と見ていいだろう。しかし、アスリハはもう逆らってるでしょ、いまさら何を言ってるんだこの王様は。


「お今ならまだ引き返せるぞ。降伏するか?」


 いやいや、もう引き返せるわけがないでしょ。あんなに兵士死んでるんだし。……まあ半分は私のせいだけど。


「降伏しません。お父様……あなたの首を取ります」


 そう言い放った、これでもう引き返せないね。さて、私はまず王の首を取りに行くかあ。いや、それよりも拷問しても面白いかな?


「おい!」

「は!」


 そして執事の爺が、アスリハの背中を刺そうとする。だけど、私は前もって、風のバリアを貼っていた。ぞのアスリハの背中に。それにより執事の爺の刀は通らず、逆にその刃が折れることとなった。


「ねえ、執事さん、私がそんな裏切り未然に察知してないと思う? だいだいさあ、見え見えなのよ。それでうまく殺せると思ったら大違いよ」


 そして爺の首を絞める。


「ねえ、人を殺すってことは殺される覚悟もあるんだよね? ねえ!?」


 そしてさらに絞める。その光景をアスリハは呆然として見ていた。


「ねえ! ねえ!」

「やめてください!」


 しびれを切らしたのか、アスリハが私が爺の首を絞めるのを止めに行く。


「はあ? なんで止めるの?」

「だってその人は私の執事で」

「でもあなたを殺そうとしたってことじゃん。それは悪だよね、まぎれもない悪だよね、良い訳とかできないよね」

「それは……そうですけど」

「だから殺すの。いいでしょ?」


 そうにっこりとした笑顔をアスリハに見せる。もう彼女は何も言えないようだった。


「さあ、死ね」


 そして首を絞め、心臓が止まった。


「さてと次はあなただね」

「許さんぞ」

「許さん? 先に暗殺しようとしたのはあっちでしょ? 私は何も悪くないんだけど」

「いいか悪いかを決めるのはこちらの裁量だ。貴様のは何も関係が無い」

「へーそう言うこと言っちゃうんだー。死ね!」


 素早く風の刃を放った。だが、それは王の矛であっさりと止められた。


「というか貴様は誰だ?」


 確かにあっち側からすれば誰だという話だ。しかし、この詩音様を忘れるなんてひどいやつだな、私は最強だというのに。


「我が名は詩音。最強だあああああ」


 そう言って、岩を作り出し、投げる。そしてその裏で、雷弾も作り出し、同様に投げつける。さあ、この攻撃ラッシュをくらええええええ!!!!


「ふん! 最強とは所詮この程度か」


 そう言って、その攻撃は王様の矛によってすべて粉砕させられる。その間にアスリハも矛から雷の波動を放つが、それもあっさりと、王様の手によって跳ね返される。

 少しむかついた。数発風の刃を放ち、それに隠される形で雷撃も放つ。

 しかし、それらはあっという間に撥ね退けられる。


「なるほど、私の最強セットが効かないってことね。分かったわかった。じゃあ、もっとうまい方法を探すよ!!!」


 そして、私は自分のこぶしに岩を張り付け、その勢いで殴りに行った。

 こうすることでパンチの威力を挙げようという算段だ。もちろん岩の中の私の手には雷がまとわられている。私のスピードを風と水の魔法でさらに上げて、その勢いそのままに殴りかかる。

 それに対して国王は、矛ででそれを止める。


「ふむ、なかなかの力だ」

「それだけじゃない!よ砕けろ」


 そして岩が砕けたすきに、腕を横に移動させ、腹を狙いに行く。それは上手くいったようで、国王の矛から放たれる雷は何もない虚空に向かって伸ばされ、そのすきにフルパワーでお腹を殴る。


「ぐおおおおお」


 分かりやすく、痛がる。そしてアスリハはそんな国王に対して、矛から雷を放つ。それもまた直撃した。そして国王は苦痛に耐えきれなかったのか、矛を手放した。


「私がもらう!!」


 そう言い放って、矛を回収して、


「サンダー!!!」


 そう言って、矛から雷を出して、国王に当てる。そうなったらあとはフルボッコだ。もう隙だらけの国王の体に様々な魔法を放つ。そうすることで国王はあっさりと死んでしまった。


 あーあ、こんなものか。

 つまらない。所詮はラスボスとは言ってもよその国のもめごと。私には何も関係が無いことだ。こんなもので心が満たされるわけがなかった。


(空虚だな。私の心は)


 鳥にもなれず、飛ぶこともできず、自分の欲も満たすことが出来ない。所詮はくだらない理想なのだろうか、鳥になることは。

 そうなったらもう、私が楽しめる方法を探したほうがいいのかな。

 そう、思った。

 そうなったらさっさとこの国を出て、前から計画していた作戦を決行しよう。それで、私が何とか魔族のトップになって、国王……いや、違うな。魔王になればいいのだ。

 そうしたら私は、私は、楽しむことが出来る。


 そして、革命成功パーティや、戴冠式などのイベントがすべて終わった後、地上に戻ることをアスリハに伝える。


「いいんですよ。ずっとここで暮らしていても。ここの民たちはあなたを英雄だと思ってますし、私自身もそう思っています。ここに居ればあなたは富も名声も思うがままです。ここで暮らしてはどうですか」


 なるほど、答えは決まっている。


「いや、私は帰るよ。かえって私個人でできることを探す。そしたら楽しめるだろうしさ。あと、私は別に英雄じゃない。たまたま革命に参加しただけの一般PEOPLEさ」


 そんなかっこよさそうなことを言って、地上へと戻った。ちなみにその途中で再びサメに出会った。今度は瞬殺できたようで良かった。

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