第17話 革命

 私はアスリハに案内され、スラム街の方へと歩みを進めた。

 そこには何人、何匹? もの哀れな貧乏人魚がいた。


「このような汚く、死にかけの人魚たちがたくさんいるんです。私はこんな貧富の差を広げた父が許せません」


 私にはその言葉はフーンとしか思えない。私がこいつらを見て抱く感想は、(かわいそうに)ではなく、(哀れだなあ)というものだった。


 こうして、誰かが助けてくれるのを待つ人たち。私から言わせたらこんな奴らはさっさと死ねばいい。社会のゴミなのだから。

 それは、日本にいた時から思っていた。だって、なんで私たちのお金が貧乏人に与えられなきゃならないの? と、ずっと思っていた。だから、震災募金とか、アフリカの難民のための募金とか、何でするのだろうと思っていた。いっそ貧乏人の多いところに爆弾でも落として、全員殺したらいいと思っていた。



 それは今も同じだ。



 私はアスリハのその理論で革命を正当化できないと思うし、私は国王の方が正義だと思う。

 こういった、社会に何も貢献できないようなごみは殺し、国の役に立つような人間を生かした方が、発展すると思うのに。まあ、あくまでも私個人の意見ではあるけれど。


 そして、私はそんなスラム街の説明と、国王がどれだけ酷いという話をされた。私には心底興味がない話だ。


 それにだ、私はよく考えたら革命という言葉が好きではない。所詮、国王から金を強奪するようなものだ。現に、歴史上の革命家の半分くらいは結局悪人になっている気がする。独裁者とかに。


 所詮、革命なんてくだらないのだ。


 あーあ、そんなことを考えてしまったら、もう私に革命の手伝いをする気力はなくなってきた。

 まあ、結果が気になるから参加するけど。


 そしてその後数日暇だったので、水中で魔法を使う練習をした。おかげでだいぶ水中でも風の刃を極限まで鋭くすることが出来た。雷魔法も炎魔法もすべての魔法を水中で使う練習を。


 そして、数日くだらない日々を過ごした後、革命ののろしが上がった。

 計画は夜襲らしい。私的には、堂々と名乗りを挙げろよと言いたいところだけど。


 なぜ夜襲なのかは、直接戦っても勝ち目がないからなのだろうか。

 というか、今更だけど、ここにも夜っていう概念あるんだね。元々陽の当らない場所なのに。


「皆さん! 今こそ私たちは人魚に本来あるべき人権を取り戻します! 命を懸けて、この国を変えるのです! 準備はいいですか?」

「おおおお!!!!!!!」

「おーー」


 そしてみんなで飲み物を飲みほし、そして城へとこっそりと向かう。

 だが、城の裏、そこには大勢の兵士が待ち構えていた。おーい、王女さまあ、作戦失敗じゃーん。


「なんで作戦がばれたの?」


 そう、アスリハが言うけど、知らないって、誰か内通者がいるんでしょ? 大方あの執事の爺さんとか怪しいと思うんだけどなあ。

 裏切る可能性があるのって、なんかそう言うやつらだし。

 そして、そのまま総力戦となる。とはいえ、主な戦力は私とアスリハだ。二人で、大多数の敵の兵士を倒しまくる。何なら私たち二人でいいかもしれないくらいだ。


 もう他のやつらはモブだモブ。ただの使えない数合わせのモブ。ただの飾り。

 というかたぶん私一人でこの国を滅ぼせられるし。


「あはははは、いいねえ」


 そして風の刃で周りの敵を皆殺しまくる。この瞬間のために生きているような部分があるね。


「さあ死んで! 死んで! 死んでええ!!!」


 そう言いながら風の刃を振り回しまくる。


「ふむ、ここは私の手番か」


 そう言って、偉そうなやつが一人、やってきた。まあでも誰が来ても私が瞬殺できるでしょ。


「ウインドスラッシュ!!」


 そう言い放ち、風の刃を偉そうなやつに向けてはなった。


「その程度で!!」


 手に魔力でも込めたのだろうか、手でその刃をつかみ、地面にたたきつけられた。なるほど、偉そうなだけはある。

 まあでも、無双できないと面白くないからねえ、


「じゃあ、これはどう!?」


 雷の球を放ちぶつける。


「それがどうしたあああ」


 その偉そうなやつは、雷弾を押しのけようとするが……これはさっきのウインドスラッシュとは違う。


「いけえ!」


 雷弾を爆発させ、その雷のエネルギーをすべて偉そうなやつに当てる。


「つううぐあああああああ」

「雷は初めてじゃない!? 苦しんで死ね!」


 そして雷の濃度をあげて、しびれさせる、そして、血反吐を吐いて、彼は死んだ。


「つまんないなー、もう少し威力抑えながら拷問するべきだったかー」


 まあでも、そんなことはどうでもいい。さっさとこの茶番を終わらそう。




「さあ、腕に自信のあるやつはみんなかかってきて!! 私を打ち取ったら、それはもうでかいよ!」


 そう言って、近くにいた敵の兵士を数人風の刃で断ち切る。


「まあ、簡単にやられるつもりはないけど」


 ふふ、決まったー!


 そしてそんな戦闘をしていると、あっさりと、城の中へと入ることが出来た。

 あれー、皆待ち構えてた割には弱くない???? えー、国力どうかしてるわあ。所詮裏切りも未然に処理できない雑魚たちなんだね。

 てかさ、裏切りが分かってたのなら、夜襲をあっちから仕掛けたらいいのに。つまんないなー。馬鹿なのかな?


 そして、城の中に入っていく。この国の城の中に入るのも初めてなんだよねえ。どんな場所なのだろうか、気になるなあ。


 そして、城にいる敵を一人一人殺しながら進んでいく。手ごたえがない。


「アスリハ! いい感じだね」

「ええ、そうですね。あと少しで、私達がこの国を取れるのですね」

「そうだね。でも油断はしないでよ? 恐ろしいことになるかもしれないからね」

「分かってます。それで敗れた人をたくさん知っていますから」


 なるほど、油断していないらしい。まあ、私からしたらその裏切り者候補第一位(私調べ)のその執事の爺を背中に置いていること自体、危ないと思うんだけどなあ。


 そして、ついに王の間の前まで来た。


「行きますよ。準備はいいですか?」

「おうよ!」

「もちろん!」

「最後の戦いですね」

「よーし! ラスボス戦だあああああ」


 皆そんなことを言って、扉を開く。もちろん私が言ったセリフ、言わなくても分かるよね。

 さあ、ラスボス戦だあ!

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