第16話 アスリハの暴走

 

「ダークネスフレア」


 アスリハがそう言って黒色の炎を飛ばしてきた。中二病風に言うならば漆黒色と言ったところか。

 しかも、ここは水中なのに、水をものともしていない。これはただではきついな。

 さて、私も闇を纏わせた攻撃を放つか。


「ダークサンダー!!」


 そして雷と炎がぶつかり合い、攻撃は相殺される。


 しかし、今思ったが……ダークってつけると一気にカッコ良さそうになる現象何? 最高なんだけど。

 でも、私の場合、あまりダークつけてもあまり威力上がってないように思えるんだよなー。適性ないのかな?

 とりあえず次来た攻撃を受け流さないとな。


「ダークウインドカッター」


 そして水を切り裂きながら風手裏剣がアスリハの方へと向かっていく。


(これで終わったらいいんだけど)


 アスリハは水を集めその攻撃を受けきった。

 なるほど、


(そううまくはいかないのかあ)


 残念だ。だけど、行けることもある。さらに頭を使え、私よ!


 という訳で、岩を作り上げ、ぶつけに行く。闇の力で強化された岩だ。当たればただでは済まない。もう、殺す気で行く。

 さあ、終わりにしようか。


「ダークロックブレイク!!」


 そう言って岩を放ち、それは見事にアスリハにぶつかった。アスリハはそのまま岩を受け止めようとする。しかし、私は何も考えてないわけではない。岩を爆発させ、その中から風手裏剣や雷弾をぶつけに行く。必要かどうかは分からないが、魔力のロープでアスリハを縛って。


 私の持論として、暴走状態の思考能力は低いと思っている。

 そんな人に聞くのはからめ手だ。


「さあ、終わりにしよう!」


 そう言って、アスリハの体に大量の攻撃が加えられ、アスリハはその場に倒れこんだ。


「さて……と」


 アスリハをどうするか。このまま放っておいても私には関係はないが、また暴れる可能性がある。

 私にとってこの王国が滅びようとも滅ばないとも関係ない。

 ただ、私としてはこのまま放っておくのはなんとなく乗らない。はあ、私としたことが。

 さて、魔力の縄で強く縛っておく。


 そして手で軽くはたいて、目を覚まさせる。


「何ですか?」

「いやー、確認よ確認。もう暴走を収まっているのかのね」

「暴走? そんな簡単なもので納めないでください。私は、最強なのですから。この力を示したい! それだけなんです!」

「あー、はいストップ。私みたいなこと言ってるよ。それ言っていいの私だけだから」


 中二病は私だけでいい。


「それでね、私としては圧倒的な力であなたを滅してもいいわけだけど。……どうする?」

「どうするも何も……」

「どうする?」


 そう言ってアスリハの頬を思い切り叩く。


「私はさ、こうやって暴行を加えることが出来る。あなとぉいじめることが出来る。……いい加減暴走をやめなければ、中二病をやめなければ、永遠にこれが繰り返されるだけだよ。さあ、どうする?」


 あ、楽しい。それにこれは闇人格を治めるためという大義名分があるうえでの行為だ。だから、何でもしていい。


「さあ、分かったのなら。……暴走を止めなさい」


 私自身もこうやってはたくのは本意じゃないんだから(棒)


「分かりました。この人格は消えます」


 そう一得t、彼女はぼんやりと目を覚ました。


「あれ? 私は一体……」

「ああ、収まったのね。あなたは今まで暴走してたの」

「……暴走……」

「そう、闇の力に取り込まれてね」

「そうですか……」

「じゃあ、私は私の目的が果たされたから帰るわね」


 実際、私のここでの役目は終わったし。


「待って、私がこれからやることに手を貸してくれない?」

「はい?」


 今からやること? 力を得ることが目的じゃなかったの?


「私は、この国を変えたいと思っています。この腐った国を」

「腐った国?」

「はい。この国は今終わっています。賄賂や治安悪化、偽札の出回りなどによって」

「ちょっと待って? 私はそこまで治安悪かったとは思わないんだけど」

「はたから見たらそうですね。ですけど、経済格差によってそれは起こっています。たぶん詩音さんが見たのはいい方のこの国です」

「なーるほどね。反乱を起こすっていう訳か」

「そうですね。力で変えます。だめな政治を行っている私の父親を倒して」

「分かった。私も力を貸すよ」


 私のここでの目的は終わった。つまり彼女にこれ以上手を貸す必要なんてどこにもない。


 だけど、こんな面白そうなイベントを黙って見逃すわけには行かない。反乱が成功しようとしまいと、私は楽しむことが出来る。




 そして、反乱軍? のアジトに連れていかれた。


「ここは私たち同志のアジトです、歓迎いたします」


 そう言われそこにいた何百もの人魚たちが歓声を挙げる。はたから見たら怪しい宗教団体みたいだ。

 なるほど、これは面白くなる気配しかない。


「さて、詩音さん、覚悟はいいんですね。私たちに力を貸す覚悟は」

「もちろんです。私はこのためにここに来たのかもしれないし」


 そんなことはないけどね。


「私は、ここにまで力を貸してもらえるとは思っていませんでした」

「なるほどね。私はさ、力欲しさに来たのもあるけど、本当は楽しいことを探しに来たんだよね。だから、そのイベントに参加することが出来てうれしい! それが私の本音。だから気に病む必要もない。これは要するにWINWINの関係なの。だからこっちこそありがとう」

「いえいえ、明日は貴方に街の様子を見てもらいたいと思います」

「え? 明日決行じゃないの?」

「まだ準備がありますので。まあその間街を案内しますので、暇にはならないと思います」


 むむむ、早速面白そうなことができると思ったのに。待たなきゃダメなのか。


「分かった」


 そして私はここに来てからの初めての睡眠をとった。

 まあ数日くらいの暇は許そう。少し鳥になる計画が先延ばしになるだけだ。

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