第15話 ボス戦

 

 そんな感じで進んでいくと、分かれ道に着いた。


「これどっちに行くのが正解だと思いますか?」


 そうアスリハに訊かれた。私としてはどっちに進んでもいい。別にどうせつくのならどうでもいい。

 楽な方を選びたいけど、こんなものどうせ運ゲーだ。私に訊かないでほしい。


「私は右かな」


 とりあえずそう答える。右の方が左より好き。ただそれだけの理由だ。


「じゃあ、右行きましょうか」

「私はなんとなく言っただけだよ」

「でも、運も実力の内でしょ」


 私には運がないと思う。鳥に転生できなかったし。でも、そのことを言うのも面倒くさいので、アスリハより先に右にずんずんと進んでいく。


「サンダーブロウ!!」

「サンダーランス!!」

「サンダー!!」


 と、次々と敵を倒していく。二人で。


 あははは、共闘になってだいぶ楽になってきたね。私一人で倒さなくてもいい訳なんだから。


 しかし、右ルート、敵が多すぎる。もしかして左に行ってた方がよかったりするのかな? まあ、いいや、どれだけ敵がいたとしても、負けそうになったとしても、アスリハを利用すればいいんだから。


 そして敵を倒していく度に気づくことがある。こいつら、うざいだけで全然強くないなと。


 今思えばさっきのイカもタコも攻撃は油断してたからやられかけただけで、全然激しくなかった。もしかして、体力全振りだったのかもしれない。


 そんなこんなで進んでいくと、大きな扉があった。


「ここだよね」


と、アスリハに訊いた。とはいえ私には分かっている。こんな壮大な扉がある場所なんて目的の場所に決まっている。


「そうですね。ここのはずです」

「分かった。なら行こう!」


そして私が入ろうとすると、「私はここで待っています」執事爺が言った。まあ確かにボス部屋の可能性もあるしね。

そして私とアスリハは中に入っていく。


「ここが、財宝がある部屋……なの?」


 アスリハがそう呟く。そして彼女は走って財宝のところまで行こうとするが、私はそれを止める。


「なんで?」

「こういう場所ってたぶん敵が出る」


 そう、ダンジョンボスみたいな奴が。

 

 私にはわかるのだ。そう言うゲームを普段からやっている私には。


 別にこいつが死のうと、私には知ったこっちゃない。


 ただ、盾がいなくなったら困る。


「だからさ、準備が整ってから侵入しよ?」


そのテリトリーに。


「はい」


 そして、魔力を回復させてから進む。だが、ボスみたいな敵は一切出てこない。そしてそのまま財宝までたどり着いた。


「もう、敵出てこなかったじゃない」

「あれ、そんなつもりじゃなかったのに」


 これじゃあ、私の面目丸つぶれじゃない。はあ、もうしんど。


「危ない!!!!」


 私はすぐさまアスリハを押し倒した。その頭上には水の水流が通った。


「来たよ。ボスが!!」


 私はそう叫ぶ。そこに現れたのは、巨大な巨大なお爺さん人魚だった。ボスとしての雰囲気が出てるねえ。


「これは私の宝じゃ。渡すわけには行かん!!!」


 そう言って、水流の渦を作り出した。私たちはそれに引きずり込まれる。私は何とか水の魔法を放ち脱出できたが、アスリハはあっさりとその渦に呑み込まれていった。


(え? 使えなさすぎでしょ)


 そう、心の中で毒を吐いて、とりあえず助けに向かう。見捨てても良かったんだけど、役に立ちそうだし。


(とりあえず水中に向かって風を放つか)


 そう思い、渦の中央に風を放つ。そして風でアスリハを渦の中から救出する。緻密な魔力コントロールが必要だが、まあ、この詩音様にかかれば朝飯前だ。


「さて、もう巻き込まれないように気を付けてね(助けるのが面倒くさいから)」

「は、はい」


 だが、まだ急場をしのいだとは言えない。すぐさま雷の弾丸がこちらに飛んできた。私たちはすぐに上に飛び、それをよけるが、空に泳いだ瞬間に再び雷を喰らった。


「いったいなあ!!」


 ダメージは受けるんだぞ。全く。


 そして私は雷の弾を人魚爺にぶつける。だが、あっさりと避けられる。


 そうだったなと、ふと思いなおす。私はたいして泳げるわけではない。アスリハのおかげで一時的に人魚のような運動神経を手に入れている。


 しかし、経験が浅い私には上手く動くことが出来ないのは自明の理だ。


(ああ、くそ。こんな不利な場面ないぞ?)


 そう思い、作戦を練る。


 私の武器は何だと訊かれたら、それは風だと答える。だが、水中でウインドカッターなんてことは出来ない。水のせいで勢いがなくなる。せいぜいできるのはさっきみたいに水の動きをコントロールし、アスリハを救出したり、敵にぶつけたりすることくらいだ。


「さて」


 と、風の中に雷を入れ、雷風を飛ばした。水に溶けそうな雷を風で包むことで保護し、新鮮な雷を当てる。


「ぬう」


 人魚爺はひるむ。よし、いい感じだ。

 そんな時、アスリハが矛からビームを繰り出し、爺に追撃を与える。


 よし、いい感じだな。


「うおおおおお」


 更に追撃をかける。だが、そのまま倒れてくれるのなら話は早かった。


 だが、そんな簡単な話ではなかった。奴はとにかく周りにたくさんのビームを繰り出してきた。とにかくたくさん、暴れまくるように。はあ、この世界の敵発狂行動好きすぎじゃん。全く、ゲーム再現しすぎ!!!


 そんな感じのこと言ったらこの世界がゲーム世界みたいだけど。


 さて、避けるのは簡単だ。だけど、それは私だけで、アスリハは上手くよけられてないみたいだ。


 ああくそ、完全に足手まといじゃん。いっそ見殺しにするかあ? でも、お姫様だし、後に役に立つかもしれない。


「仕方ない!!! ウインドバリア!」


 そう言ってアスリハにバリアを覆わせた。


「ありがとうございます」

「まったく」


 私にバリアを張らせやがって。このツケは後で払って貰う。


「さて、そろそろ終わらせるかあ」


 という訳で、岩を創造し、岩を超スピードで爺にぶつける。むろん水の抵抗にも負けない程度のスピードで、超重量の岩をぶつけたのだ。


 ただでは済まないだろう。


 しかもだ。岩の中に雷を仕込んでおいた。岩を内部から爆発させ、雷をぶつける。爺の姿勢は揺らいだ。さて、ここから同とどめを刺そうか。

 そう思っていたら、爺の真上にアスリハがいた。


(これなら大丈夫か)


 そう私が思った通りに、アスリハは矛で爺の体を突き刺した。そして、中から大量の雷が放出されて、人魚爺は見事に倒れた。


 ふう、これぞアスリハを生かしてあげた甲斐があった。しっかし、いいところを取られたという点においては、かなりむかつくけど。


「これで終わりですね」

「うん。そうだね。で、さっきの人魚のこと何か知ってる?」

「知らないです。私には……ですけど、この宝に関しては、大昔の人魚の王様がこの森に隠したという伝説があるので、そしかしたらそれに関係していると思います」

「なるほどね。さて、開きましょうか」


 よく考えたら細かい難しい話なんて私には関係が無い。鳥になるためのヒントが欲しいだけなのだ。


「はい!」

「さあ」


 そして開いた。そこには金銀財宝が埋まっていた。やったー。……違う、私はこんなものが欲しいわけではない。私は秘伝書みたいなものが欲しいのだ。

 あれ、もしかして間違えた? 私は、違う違う違う違う!!!!!! ああもう、出てこい出てこい!!!!

 その思いでどんどん宝箱から取っていく。

 そして、私の願いがかなったのだろうか……最後に一つ見つかった。


「これは……」


 そこにあったのは、秘伝書のようなものだ。

 これが、私を助けてくれるだろうか。そこでアスリハに了承を取って読む。

 すると力があふれていた。これは……闇方面の力か。闇は基本的に悪の力とされているが、私はそれが納得できない。闇、かっこいいじゃないか。私は闇好きだぜ。飛ぶ力の次に欲しいくらいだ。

 さあさあさあこい! 力よ。


「フハハハハハは、力がみなぎってくる。これが私の力か。運いいぞ」

「どういう感じですか?」

「うん。だいぶ強くなった気がする。アスリハも読んでみる?」

「あ、じゃあ、読んでみます」


 そう言ってアスリハも読んだ。するとアスリハの体にも闇の力が入った。


「これが闇の力ですか」


 そう言ってアスリハは頷いた後。


「これなら。最強になれそうですね」


 そう言ってアスリハはこちらに向かってきた。なんで???


 アスリハの攻撃をよけながら本を読む。すると、闇に取り込まれる可能性ありと書いてあった。

 ああくそ、これが取説をちゃんと読めという実例か。

 鎮圧するのは容易いと思うが、面倒臭いな。

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