第6話 覚醒の方法

「どこに行ったらいいんだろう」


 国を出て一週間経った。何も考えずに行動していたが、やっぱり鳥に関するようなことは何も見つからないし、どこにもつかない。


「鳥になる方法、飛べる方法はどこにあるんだろう」


 何も出掛かりがない。もちろん飛ぶ方法、死ぬ方法どちらもだ、


「まずは歩くか」


 と、宿から出て歩いてみる。宿で寝ているだけでは何もアイデアが出てこない。それに、早く次の街に行かなくてはならないし。

 やっぱり拷問も楽しいが、私に必要なのは翼なのだ。


「ん?」


 目の前にはガーゴイルがいた。町の中なのに珍しい。周りの人たちを見ると、急な、魔物の登場にびっくりしているようだ。


「いいねえ魔物との闘い」


 異世界もの定番だね。


「よし!」


 と、風剣を持つ。ガーゴイルならば飛ぶヒントを手に入れられるかもしれない。


「うおお!」


 と、ガーゴイルの翼を傷つけないように斬りにかかる。


「ぎいいええええ」


 とガーゴイルも剣を持って攻撃にかかるようだ。でも……


「私の方が強いんだよね」


 と、その剣を折り、ぎゅっと風で拘束する。


「おとなしくしててねー」


 と、翼を見る。緑色のゴブリンなどの、ガーゴイル以外の魔物とかだったら即拷問しているところだが、今回の相手は翼をもつ相手だから丁重に扱わなければ。


「どうだい気分は?」

「ぐうう」


 と、うなり声を上げるが、私には関係がない。魔物なんてどうせ動物と一緒、ろくな知能なんて持っていないだろう。他のガーコイルたちも襲い掛かってきた。仲間をすくう為だろう。くだらない同族意識のために死ぬことになるなんてかわいそうに。そして早速私に斬りかかられる前に、風で切り刻み、その後再び風で拘束した。


「翼を見せてくれたらいいのよ」


 と、言ってガーコイルの翼を見たが、よくわからない。そう言えば鳥の生態なんて私全然知らないんだった。周りからは歓声が上がるが、そんなものは関係が無い。


「仕方ないなー保管しとくしかないか」


 と、ガーゴイルを、保管魔法で保存して、「次いこー!」と、すぐに次の町へと出かけた。歓声を無視して。

そして数歩歩く。その道中でもだいぶ魔物に襲われたが、それらはすべて翼とは関係なさそうな魔物だったので、瞬殺した。


そ位s手大きな町……王国の首都に着いた。


「すみません、ここの国王陛下に会いたいのですが」

「君は何者だ? 何者かどうかわからない人を会わせるわけには行かない」

「面倒くさいなあ。君は死にたいの?」


と私は風剣を構える。


「やるのか?」


 と兵士も臨戦態勢に入る。あっさりと通してくれればよかったのに、無駄なことをするから死ぬ。強者に逆らうなんて馬鹿のすることだ、真に賢い人は強者に迎合するのだ。考え事をしていたら、剣が私のそばに来ていた。あ、そうだった、戦闘中だった。剣を風で受け、そのまま剣を折る。一気に兵士の間合いに入り、剣を折る。


「私は異世界人。誰もかなわないよ」


 と言い、王宮内に侵入する。殺してもいいけど、殺した場合めんどくさそうだし、あとでにしよっかな。楽しみは後にとって置くタイプだし。

王宮内でもたくさんの兵士が「怪しいやつめ」「それ以上進むな」「仕方ない。捕らえよ」などと言って私を狙ってきたが、同然すぐに風で拘束をし、無力化させた。本当、ここまで殺していない私をほめてほしいものだ。


そして、国王陛下に謁見する。


「国王陛下話があります」

「は、はい、なんでしょうか」


 国王はビビりながら返事をする。気分がいい。


「鳥になれる、もしくは飛べる方法とかってあったりしますか?」


 もしくは死ねる方法だけど、まあそれはおいておこう。


「そんな話はないですね。聞いたこともありません。人間が鳥になれる方法なんて」

「なんでよ! なんでないの?」


この国にもないなんて。


「そうは言われましても」


 おっと、私としたことが取り乱してしまった。


「本当にないの?」

「え、ええ。し、しかし王宮魔導士のリンシア殿なら知ってる可能性があります」

「わかった。すぐ呼んできて!」

「わかりました。でもあの人は郊外に住んでいますので、二時間ほど待っててください」


 と、二時間待つらしい。面倒くさいな。


「じゃあ散歩してくる」


 と、その場を後にした。



 とは言ったものの、たいしてしたい事が無い。まじで寝転んだ方がいいレベルだ。私は別にこの世界で生きていきたい訳じゃ無いのだ。



 そろそろそんくらい経ったかな?


 と、宿屋から出る。


 この世界には時計はない。ただ、水時計がありそれが五回なると鐘が鳴るという仕組みらしい。その周期がこの世界における一時間と言う事らしい。つまり、二回なったら二時間だ。私はもう二回聴いた、流石に来ているはずだ。




「もう呼べましたか?」


 と、宮殿の王様に向かって言う。


「まだもう少しかかると」

「それはどれくらい?」


まだ来てないの? 約束と違うじゃん。


「急いで呼んでくるので待ってください」

「ならさあ、イスを少しの間貸してくれない? 王様の椅子とか座ったことないしさあ」

「ど、どうぞ」


 と、イスを貸してもらえた。座り心地は思ったよりも悪い。何しろ硬い、もう少し柔らかい素材で作ってほしいものだ。

そんなことをしていたら、「陛下! リンシア殿を連れてきました」と、兵士の一人が言った。


「あなたがこの国一番の大魔導士、リンシアですか?」

「はい、私はまごうことなきリンシア シャーネルです」

「私が何の用で呼び出したかわかるよね?」

「はい、鳥になる方法か、不死身かを解く方法ですよね。それについては一つだけ方法を知っています。……あくまでも可能性の話ですか」

「と言うと?」

「はい、魔力の覚醒には絶望が必要なのです」


 へーあの少年漫画みたいにか。


「だから絶望を味わえればいいかと」

「じゃあさっそくやって? 絶望を」

「そんなこと言われましても、方法がまだ確約されておらず、ただのうわさでしかありませんよ」

「いいの、それでもやってみたいの」

「なら、着いてきてください」


 私は彼について行った。


「ここは?」

「監獄です。ここで、過ごしてもらったら覚醒するかと」

「じゃあさっそく拘束してもらってもいい?」


 この程度で飛ぶ力が手に入るとならば文句なしで入ろう。


「絶望による力の開放は一回しかできません。それで飛ぶ力が手に入らなくても文句は言わないでくださいね」

「わかった!」

「なら行きます」


 と、私の体に拘束具がはめられる。


「手を後ろに回してください」


 と言われ、手を後ろにする。そしてガチャリという音がして私の腕は動かなくなった。手に力を入れるが、全く手は動きそうになかった。


「次は足です」


 と、足にも拘束具がはめられる。


「いいねえ最高だよ。これで私が絶望したら飛べるんでしょう。最高じゃん」


と、拘束された私はリンシアに向かって高笑いをする。これで飛ぶ力を得れることがほぼ確定なのだ。


「あくまでも、飛ぶ力が確約されているわけではありません。期待しすぎないように」

「わかった」


 そして一時間がたった。いや、一時間たったかどうかわからない。何しろ目の間wが真っ暗なのだから。今私は目隠しされてる上に、口も猿轡によって拘束されている。要するにだ。何もすることもないし、5感全てが機能していない。早速もう絶望しそう。暇すぎるんだけど。話し相手とかいないの?


 そして少し時間が経った。まだ何も起こらない。もうすでに絶望している。力を得るためとはいえ、ここまでの地獄だとは思わなかった。あんな軽い感じで受けるべきじゃなかったかもしれない。


「はあ」


 何時間だったのだろうか。もう絶望の中の絶望だ。まさかもうあの拷問の地獄を超えるとは思っていなかった。








「うわああああああああああああああああ」


 本当に気が狂いそうだ。いや、もうくるってる。頭がおかしい。もう何日、何か月たった? もう一〇〇年くらいたった気がする。本当なぜなぜなぜなぜこんなこんなこんなこんな。おかしいって。こんな時間たってるのに助けに来ないって、もしかして嘘だったの? ねえ、覚醒なんて嘘だったの? ねえねねえねえ



 腕と足をひたすら動かす。しかし、ガチャガチャ音がするだけで枷が外れる気配がない。おかしいって。


「くそがあああああああああああああ。誰か助けろやあああああああああああこのごみどもがあああああああああ、死ねえええええええええ」


 そんなことを叫ぼうとも誰も助けに来る気配はないし、覚醒の気配もない。もうしんどすぎて死にたい。だけど、これが鳥になれると考えたら……早く飛べるようになって!



 そしてまた時間がたち。


「fんjvdjkcbhhfdjx」


 もう言葉の提携すら成り立たなくなってきた。速く覚醒を!


「ん?」


 と、すると周りから光が出てきた。


「うおおおおお?」


 そして覚醒か?


 すると拘束具をたやすく破壊出来た。


「またレベルアップしちゃったみたいだなあ! 最高よ!」


 なんか俺つえー主人公が言いそうなセリフだ。


「よし、リンシアさん! いますかあ?」


 と、周りの人たちに聞く。


「八日ぶりですね、詩音さん」


 八日……一週間と一日ってところかあ。体感一か月は最低あったんだけどなあ。


「リンシアさんなら研究室に戻っています。呼びましょうか?」

「いや、いいです。まあ伝えといて実験は成功したって」


 そして私は森に来た。もちろん飛ぶためだ。


「いけー!」


 と、思い切りジャンプし、魔力を込める。


「へぶう」


 飛べなかった。あれ? 


「飛べるんじゃないの?」


 そして一時間試した。やはり飛べなかった。飛べるってのは嘘だったのだ。


「リンシア許せない」


 と、早速リンシアの研究室に向かった。道中で何人も尋問して居場所を聞いてだ。


「何でしょうか」

「飛べなかったんだけどさあ。どうしてくれんの?」

「はい、そういう事ですか。別に私は飛べるとは言ってません。飛べるかもと言っただけです」

「私の期待を返してよ。わたしはさあ飛べると思ってたのに。あの地獄をその一心で耐えてたのに。本当返してよ! 私の時間返してよ」


 たしかに確約はしていなかった。でも、何か謝罪があってもおかしくない。


「ならば、もう一つだけ手があります。この先の遺跡にあるダンジョン。そこをクリアしたものは、能力を与えられると言われています。そこに行けば飛ぶコツがわかるかもしれません。……そこに立ち入ったものは全員もれなく死んでますが」

「わかった。行ってくるね」

「最後の一文を聞いていなかったんですか?」

「私、命とかどうでもいいし」


 そもそも死なないからねえ。


「じゃ!」


 そしてダンジョンに向かった。


「ここでいいのよね?」


 そこにあったのは待ちだった。ダンジョンの前に町があるとは驚きだ。だが、その光景を見たらわかる。もはや観光名所になっているのだと。


 待ちではいろいろなものが売られていたが、そう言うものは興味がない。ソーセージと最低限の食糧だけ買ってダンジョンの前に来た。


「ここでダンジョンに挑めるんですよね?」

「ああ」


 だが、ダンジョンの人は不思議そうな顔をしている。あ、そうか。私がソーセージを食べているからか。


「じゃあもう挑んでいい?」


 と言ってまた一口ソーセージを食べる。


「かまわない。ただ一つだけ、死んでも誰にも文句を言わないことだ。それとこのダンジョンは過去に百人以上の人を連れた騎士団が入って、今も戻ってはいない。それを踏まえても一人で行くのか?」


 行くって言ってんでしょ。面倒くさいなあ。


「行きますよ。もちろん!」


 と、ダンジョンの中に入っていく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る