第4話 覚醒
「遅くなってすまない。息は大丈夫か?」
「大丈夫です。私死ねないんで」
はあ、地獄から解放された。やっとだ。やっと救われた。
「もう少し早くに助けられたらこんな苦しい思いをさせることもなかったのにな」
「気持ちだけで十分です」
とは言ったものの、十分な訳がない。私は苦しい思いをしたのだ。もう十分マイナスがきてるから、そろそろプラスが出たっていい頃だと思う。
「さてと、立てるかな?」
「はい、大丈夫です」
「それは良かった。でだ、君は確か異世界人でよかったかな?」
「はい、そうです」
「私は一応組織と戦っている、フリーの身のアレグセオーランドリーだ」
「アレグセオさん」
アレグセオ……か。
「そうだ。君は詩音と言ったかな」
「そうです」
「なるほど。国から依頼があったから来てみたが、君は話をよく聞かないで飛び出してしまったのか」
「飛び出してないです。さっさと国を救いたかったからです」
そして鳥になりたい。
たしかに話途中で出ていったが、それを咎められる所以は無い。私は何一つ悪いことはしてないのだ。
「だが、個人で闘っても勝てないと言うことはこれで分かっただろ。それにここにはここの戦い方があるんだ」
「うるさい」
説教するな!
「え?」
「私にだって私の戦い方があるんだよ。なんだよ、せっかく異世界に来たからさっそくチート能力が与えられていると思ってたのに。最初から地獄で、しかも助けて貰えたとはいえ怒られて」
説教なんてこの世で一番嫌いな言葉だ。消えればいい。
「とりあえず落ち着いてくれ。ここには君の敵はいない」
「そうですか」
私は落ち着いている。ただ感情を吐き出しただけだ。落ち着いてくれなんて言われる筋合いはない。
「俺は組織を追っている。そしてお前は異世界人だ。今からお前に戦う術を教える。俺はお前の味方の中で一番強いんだ」
「別に私は人に教えを乞いたいわけじゃないけど」
それは私の目標に合っているかもしれないが、それでも嫌だ。私は人に教えられるのが嫌いなのだ。
「ならもう一回負けて捕われてみるか? それが嫌なら俺の言うことに従え」
正直言って嫌だがこいつの言うとおりにしないといけないらしい。くそ面倒くさい。
「まずこの世界ではこの粒子が力を与えてくれるんだ」
「あの、見えないんだけど」
「ああ、そうか。その説明をしていなかったな。この粒子を目に集めてみるんだ」
「あの、やり方わからないんだけど」
「目に力を入れるんだ」
目に力を入れてみる。しかし、できる気がしない。それにこいつ説明下手か!
「できないんだけど」
「本当か? 本気でやってないだろ」
そんなことを言われても……わからない。
「できないって! ムカつく! 教え方が悪いんじゃないの?」
私はちゃんとやっているのに。
「そんなはずはないんだが」
「貴重な時間損した。自力で頑張る」
そう言って、向こうに行った。もうどうでもいい。先人様は何の役にも立たないし。それにこういうのは独自のトレーニングの方がいいかもしれない。
「はあ、なんで?」
全くできる予感がしない。あいつからやり方教わった方が良かったのかも。
「いやだめだ!」
あんなムカつくやつの言うこと聞けるか。私は一人で頑張るんだ!
「うーん」
やはり同じだできる気がしない。ただあいつの言い方だと、力をこめたらできるんじゃ無いの? 本当に意味がわからん。
「なんでこんなにできないんだろ」
普通異世界人と言うのは才能があるはずなのだ。なのに私には不死身の力しか与えられてない。そう言うチートがない限り、私が勝てないのは当たり前なのだ、戦闘経験の差が流暢にでてる。
本当はぶっつけ本番で戦いに行きたいところだ。面倒くさいし。ただ、さっきみたいなことになりたくない。ほんと無双させて欲しい。それで鳥への転生の代わりになるわ! いやならないけど。
「よし、もう面倒くさい!」
少しだけ考えた後、私は少しずつ攻めていくことにした。運のいいことにこの世界には魔物がいるようだ。経験値的な何かで力が与えられるかもしれない。よし!
そして数話歩いた後、森の中から、緑色の肌のバケモノが出てきた。ゴブリンか? 知らんけど。とりあえず私の力に恐れおおのけ!
そいsて、手に力を籠める。これで、なんかっ火事場の馬鹿力的なやつで行けるはずだ!
しかし、手は空に浮かんで、何も手から発射されることはなかった。
いや、やっぱり全然魔法とかなんとか出てくる気配ないんだけど。さっきの人一瞬魔法放ってたよね! 私にはやっぱり放てないの?
そんなことをしている間にゴブリンが襲い掛かろうとしてくる。こっちにはお前に構ってる暇ないのに。
「くらえ!」
私は普通にキックを喰らわすことにした。これで多少なりにダメージを与えられるだろう。
「え? 嘘」
全然ダメージを受けてる様子が無い。そこら辺の魔物なら余裕って言ってたの誰だよ! 私だわ。私はさっさと役割を果たしたいのに!
「うわあ」
投げ飛ばされた。魔物がどんどんと迫ってくる。どうしよう。私には抵抗する力はない、さっきみたいに助けが来るという保証はない。
「あーくそ!」
そこら辺にあった石ころを投げる。しかしダメージはないようだ。
こうなったらもう詰みかもしれない。どうしようもない。
「ハアハア覚醒してください!」
そう願うしか無い。所謂覚醒イベントが起きて欲しい。
「お前は覚醒を所望するか」
目の前が暗くなったと思ったら全面白の空間に送り込まれた。今この部屋にいるのは私と謎の虹色のオーラに包まれた、謎のもやもや感があるこの中二病感のある奴だ。
「もう一度言う。覚醒を所望するか?」
「決まってるじゃ無い! さっさと覚醒させてよ!」
そもそも私が覚醒したいからあなたが出てきたんでしょうが!
「そう焦るな……それには手順がいる」
「手順? それよりもあなたは誰よ」
「私は神だ」
ビンゴ! こいつがあのクソ野郎ね。
「あなたのおかげで大変だったんだから」
「それは私には関係が無い。私はランダムな人を異世界転移させたにすぎない」
「私が鳥になりたかったの知らなかったの?」
「それは本当に私には関係が無い」
本当に神なのかしら。こんなクソみたいな人選。私なんか異世界転生に選択しない方が良かったわよ。絶対。
「まあいいわ、それよりもなんで最初から能力を与えてくれなかったの?」
「それは単に忘れていただけだ」
「私はさっさと役割を達成して、鳥に転生したいだけなの! っては?」
単に忘れていただけ?
「ああ、すまないことをしたな。どうやら私がこの世界にお前が来た時に力を渡すのを忘れていたらしい」
「本当しんどかったんだから。もう!」
本当許せないミスだわ。
「お詫びとしてまた鳥に転生させてよ。それか私を殺してよ」
「転生したい? それは無理だ。不死身はお前が転生した時のアビリティ、それはお前に与えたやつだ。だが、一つ方法は無いことはない。それは寿命で死ぬのを待つしかない。つまり……」
なんか長い話だったが、要約すると不死身だが寿命はあるからそこまで待てというものだった。つまりあと三〇〇年は待たないと行けないらしい。本当にやめてほしい。一生鳥になれないじゃない。
「つまりどうしたらいいの?」
「待つしか無いと言うことだな。私にはどうすることもできない。」
「なるほど」
つまり二百年も生きないといけないと言う訳か。本当面倒くさい。鳥になりたい。
「話がずれたな。今から戦う力を与えよう」
「そうじゃなくてこの不死身を無くすことって可能なの?」
「何度も言ってあろう。私には無理だ」
「ちょっと待って、私はこんな世界で長年生きなければならないの?」
やはり飲み込めない。鳥になれないなら死んだ方がマシだ。
「では以上だ」
「ちょっと待って!」
そこにはもう神様はいなかった。本当にくっだらない。
「ここは?」
そこには大量の魔物がいた。
「そういえばそうだった。そういう話だった」
魔物にやられかけてるところに神様が来た。これが全てだった。
「よし! 行くよ!」
私は手から風を出す。
「ウインドカッター!」
そう言い放つと腕から風がビュンビンと回りながら出て行った。そしてその風は魔物をいとも簡単に切り裂いた。
「これが私の力か」
覚醒。あのクソ野郎から貰った力は風だったのだ。
でも風ってなんか地味じゃ無い? 某モンスターを繰り出すゲームでも、なんか強力な技少なかったと思うし。せめてこの世界で生きなきゃなんないんなら炎とかにしてくれても良く無い? まじでふざけんなあの神やろう。あ、でも炎も一応出せるわ。風がメインなだけね。
「さてと」
行くか、組織を潰しに。
組織は意外と近かった。王都からほんの五〇キロ程度のとこにあった。現代で五〇キロといえば、県境ぐらいだろう。知らんけど。なんでこんなところに組織を置いてあるんだろ。まあやってやる! 私にメリットないけど、一応ね。
そして建物の中に入っていく。
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