第12話 ショッピング
そして日曜日。俺は未来と一緒にお出かけをした。
場所は服屋さん。そう、今回の目的はショッピングだ。
一昨日、未来が俺に服を選んでほしいと言ったのだ。俺には服を選ぶセンスなど皆無ではあるが、未来は俺が選んだやつだったらどんな酷い服でも喜んで着るだろう。
「さあ、何でも選んでね、翔太君。私に似合うような服を」
「まあ、俺は未来はあんでも似合うと思うけど」
「あ、うれしいこと言うじゃん」
そう言う未来はうれしそうな顔をした。俺に褒められてうれしいのだろう。
そして、様々な服を見るが、よくわからない。俺にはファッションのfの字も知らないような男だ。
未来に似合う服か……。いまいちよく分からない。
何基準で見たらいいのかも。そんな俺を未来はにこにこしながら見ている。もちろん未来には悪気はないと思うが、そんな見られたら……視線が怖い。
はあ、仕方ない、もしだめだったらダメでいいやと青色のワンピースを選んだ。
それを持って行って未来に見せ、早速試着タイム、さあどうだ?
そして服を着て出てきた未来はかわいかった。だが、すぐにこれはだめだと思った。理由はシンプル、未来の良さと、ワンピースの良さは違うかったからだ。だが、この事実をどう伝えるか。シンプルに伝えてもいいのだが、それは未来を悲しませるかもしれない。よし、上手い言葉を探そう。
「未来、俺が選んでなんですけど、その服ダメみたいです。何しろ、未来と相性があんまりよくない感じがして、素材はいいんだけど、その素材を生かし切れていないみたいな感じがして、それで」
「ストップ、翔太君私に来使ってない? いつもの翔太君じゃないみたい」
「俺はいつも通りだと思うが」
「だってさっきの言葉、どころどころ敬語なってたし」
「敬語になってた?」
そんなつもりはなかったのだが。
「敬語にされちゃあ、距離感じるよ」
「そんなつもりはなかったんだがな」
「だからさ、私は気にしないから自由に選んでよ。それに、私、翔太君が選んだやつだったらどんなださTでも着るから」
「いや、ださT は着るなよ」
未来の良さがかき消されるわ!
「翔太君が酷いやつを選ぶとは思えないし」
「俺、ファッションセンスないぞ」
「大丈夫!」
「どこから出た自身なんだよ」
とはいえ、未来から信用されてしまってる以上、未来にとっていい服を選ばなきゃな。
そして最終的に二〇分程度かけてようやくいい服を選べた。
「最終的に選べてよかったー」
「翔太君のセンス良かったよ」
「そうか、褒めてくれてありがとう」
そんな時だった。
「お! 翔太じゃねえか。久しぶりだな」
と、声をかけられたのは。
金髪の、いかにもちゃらちゃらした男。一目見ただけでわかる。こいつは
「なんで……?」
「なんでって、見つけたから声をかけただけだ」
いや、そういう事じゃない。どうして俺に声をかけられるんだ、こいつは。
「それよりも翔太には似合わない可愛い彼女連れてるじゃねえか。生意気だな」
「いや、これは」
だめだ、怖い。その感情が俺を包み込む。逃げたい、逃げれない。だめだ、俺の暗き過去が思い浮かばれてしまう。
「未来、ごめん」
「え?」
そして俺は未来を連れて走って逃げていった。
「おい! 待て翔太!!」
「え、どういう?」
「ごめん未来、急に引っ張って。単刀直入に言うと、あいつらは俺を中学の時にいじめてたんだ」
「ああ、そう言うこと?」
「ああ」
「逃げちゃっていいの?」
「逃げることしかできない。それが俺みたいな弱者が取るしかない行動だ」
何しろ、俺の中学の歴史では、いじめを恐れて、無言で生活していたからな。ひたすら無言でいじめに耐え続けてきた。あの生活は本当につらかった。
「翔太君、ちょっと待って」
「え?」
未来は俺の手を無理に外して、達弘の方へと歩みを進める。
「おい、なんだよ」
「あなたは、翔太君を中学の時にいじめてたと訊きました。それは事実ですか?」
「事実って、遊んでただけだ。なあ、翔太」
その眼光は鋭く、肯定以外の答えをすることは許さないぞと言ってるみたいな感じだった。
どうしようか。そう思っていると、
「私はこんなにおびえている翔太君を今まで見たことがありません。あなたが何かしていたのは絶対確実です。私はあなたを許さない!」
そう、ドドンという効果音が付きそうな勢いで未来が言った。
「おいおい、翔太、否定してくれや」
「否定してくれって、私の愛しの翔太をいじめるような人は許せないんだけど」
「君には効いていない、翔太に訊いているんだ」
こうなったら、未来が戦っているのに、俺だけ逃げるわけには行かない。
「俺は確かに、いじめられてた。君にだ」
そう、言い放った。
「私は翔太君の彼女として、貴方は許せません。もう、翔太君にかかわってこないでください」
未来は、言い切った。
「なんだよ、翔太お前! 彼女自慢かよ。そんなかわいい彼女がいて、ずるいぞ。何で翔太ごときがにそんな彼女がいるんだよ!」
「私は、翔太君がいいの。あなたみたいな人じゃなくて」
「っちくしょう!」
そう言って、俺に殴り掛かってきた。これはまずっ、
「やめて! 警察呼びますよ! あと、誰か助けてください」
そう言って、間一髪で拳を何とか握って、助けを呼んだ。
それを聞いて、まずいと思ったのか、彼は逃げ去った。
「ありがとう、未来」
「これくらい当然よ。だって私は翔太君の彼女なんだから」
その声は強い、自信に満ち溢れた強い声だった。
それを聞き、未来は強いなと思った。
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