第10話 風邪

「あれ……」


 けだるさで目が覚めた。時計を見ると、今は一〇時半だった。


「え!?」


 今日は月曜日、もう一時間目どころか、二時間目が半分過ぎたところだ。まずい!! と思い、起き上がろうとするが、なかなか起き上がれない。シンプルにだるいのだ。ダル図ぎ手、ベッドから体が起き上がらない。

 まるで布団が俺を逃すのを許してないみたいな感じがする。

 何だろうと思って、額に手をやる。すると、とても熱かった。ここまで来たら俺にも結論が出せる。そう、つつまり、俺が風邪を引いているということだ。

 そしてそれは熱を測ったことにより、確信に変わった。  38.5。それが今の俺の体温だ。

 もう風邪以外というという可能性がない。


「はあ」


 辛いな。まさか風邪をひくなんて。


 とりあえず、スマホを手に取り、学校にとりあえず欠席連絡を入れておく。そして、未来にもだ。

 たぶん心配しているだろう。


『未来すまん。風邪ひいたから今日は学校行けない』


 こんな感じでいいかなと、送信ボタンを押す。すると、今が休み時間だからなのか、『大丈夫? 確か一人暮らしだったよね』とすぐに返事が返ってきた。そして俺は、『まあ、一人で何とかするわ』と、そう送った。


 スマホを置き、だるい体を動かし、料理を作りに行こうとしてた。そこまでおなかは減っていないのだが、何か食べなければ。


(そうだ、確かここら辺に)


 と、棚に置いてあったパンを手に取る。これだったら料理をしなくても食べられる。


 だが、パンを目の前にしても、全く食欲は芽生えなかった。風邪なのだから当たり前といったら当たり前か。

 お腹はすいているのに、全く食べる気にならない。


 結局、俺は頭が痛くなってきて、ベッドに戻った。無念だ。

そしてしばらく経った後、今度はお腹が痛くなってきた。腹痛か……そう思い、お腹のあたりをよしよしとした。

 しかし、全く調子は良くならない。頭痛プラス腹痛は辛い。

 ああ、くそ。これじゃあ、眠れねえ。楽になれねえ。


『ピンポーン』


 そんな時にインターフォンが鳴った。


「なんだ、いったい」


 俺は再びだる痛い体を動かし、玄関へと向かった。


「あ、翔太君」

「未来!?」


 俺は驚いた。今ここにいるはずのない人が訪れてきたのだから。


「未来、学校は?」

「もちろん休んだわよ。これで私の皆勤賞は亡くなったわね」

「いや、そんな……」

「大丈夫。マスクしてるし」


 そう、未来は言い放ち、俺の家に入って行った。


「しんどそうね」

「まあ、だいぶしんどい」

「じゃあ、これはどう?」

「それは……?」

「冷えピタ。熱にはピッタリよ」

「わざわざそんなものまで買ってきてたのか」

「大丈夫。お金の心配はしなくていいよ。じゃあ、貼るね」

「……ああ」


 そして、冷たいものが俺の額にくっつく。


「冷た!」

「まあ、冷たい分だけ、すぐ直ると思うよ。じゃあおかゆ作るね」

「ああ、頼む」


 そして、未来はおかゆを作りに行った。



 気分は少しだけましだ。冷えピタのおかげで頭痛が収まってきたというのもあるが、未来が今家にいるという安心感も大きい。

 そして、またしばらく経った後、未来に呼ばれた。おかゆが出来上がったという事らしい。俺はすぐにだるい体を振り絞り、リビングに向かった。


「はい、これどうぞ」

「ああ、ありがとう」

「熱いからフーフーして食べてね」

「ああ」


 しかし、すごい状況だな。彼女が家に看病に来て、おかゆとはいえ、料理まで作ってくれるなんて。

 ありがたいことだ。未来には感謝しなければならにな。

 そしておかゆを一口食べる。


「ああ、優しい味だな。おいしい」

「ありがとう」

「ありがとうはこっちのセリフだ。わざわざ作ってくれたんだから」

「そりゃあ作るよ。翔太君がしんどい時だもん」


 そう言って未来は微笑みの感情を見せる。


「本当にありがとうな。未来がいなかったら俺駄目だったかもしれない」

「どういたしまして。あ、食後にそれ飲んでね、風邪薬と痛み止め」

「ありがとう」


 そしてご飯を食べ終わって、俺はベッドに寝ころんだ。


「寝るまで私となりにいるから、安心して寝て」

「ああ、ありがとう」

「あ、頭よしよししていい? 眠れるように」

「……逆にドキドキして眠れないかもしれない」

「そっか、じゃあ仕方ない。この人撫でだけで我慢する」


 そう、未来が俺の頭を数回撫でる。そしてその間に俺は眠りについた。

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