第9話 皆とカラオケ

 今日は、未来に上島さんと三島さんともっと仲良くなれと言われたので、四人でお出かけすることとなった。


「そう言えばいいのか?」


 その出かける最中に未来に訊いた。


「なにが?」

「独り占めしなくて」

「だって、私の友達とも仲良くしないと……ね!」

「いや、もう結構仲良くしている気がするんだが」


 この前も、謎に盗撮されたし。


「私は未来の友達だからついて行ってるだけだからね。勘違いしないでよね」


 と、三島さんが言った。


「……」


 俺はそう言った三島さんをただ見つめた。


「何よ」


 三島さんがそう言うが、俺もひるまずに見続ける。


「え? 翔太君、浮気?」

「浮気じゃない。とりあえず、三島さんはこう言ってるし、三島さんは今から帰るでいいか?」

「御堂君? 冗談も冗談とわからない人は嫌われるわよ……未来に」

「ちょっと、千鶴。私は嫌わないわよ」

「未来、あんたは黙っててくれる? 私は今御堂君と話してるんだから」

「いや、私の許可なく翔太君と一緒に話したら行けないわ。だって翔太君は私の彼氏だもん」

「俺は未来の所有物なのか……?」

「そうよ、あんたは未来に行動を制限されるし、未来の支持無しじゃあ動いたらいけないのよ」

「……花枝、そろそろやめなさい」


 あきれた様子で未来が三森さんを止めた。


「えー、いいじゃない。御堂君をいじめても。私置いて枯れようとしたんだし」

「それは、ツンデレっぽいことしたからだろ」

「私ツンデレじゃないし」


 そう言って、三森さんは、先に駆け出していって行った。


「何だよあいつ」

「諦めて、花枝はそう言うやつよ」


 そう、上島さんに言われた。


 そして俺たちは目的地である、カラオケへとついた。

 カラオケは前に未来と二人で来たが、今回は4人。前回とはまるっきり違う。


 俺は、自慢ではないが、カラオケにはもちろんあの時以外は言っていない。だからこそ、空気感が分からない。ぶち壊さないように気を付けないとな。


「じゃあ、まず私が歌いたい!!!」


 そう、三森さんが言い出した。


「……花枝には遠慮という二文字が足りないわね」

「なんで、いいじゃん」


 そう言ってマイクを握り歌い始めた。


 そしてそのまま話題の歌を歌い始めた。確か、中毒性がやばくて一度聴いたら民期から離れないと噂の曲だ。

 そんなことを考えながら聞いていると、三森さんが間奏の最中に


「もっと楽しんでよ。特に御堂君!!」


 と、名指しで批判してきた。


「ほら、もっとノリノリで頼むよ。未来もほら、彼女として言ってやってよ!!」

「うんもちろん!!」


 と言って、未来は俺と肩を組み始め、リズムに合わせて体を揺らし始めた。


「……これがカラオケの楽しみ方なのか?」

「うん。そうよ、前も思ったけど、翔太君はやっぱり集団行動苦手?」

「もちろん」

「……言い切るんだ」


 実際俺は中学の時にそれで失敗したことがあるからな。あれは俺的に嫌な思い出だ。


「まあでも、翔太君もこれで楽しんで、集団行動の楽しさを知ろうよ! それで、私たちもいちゃいちゃしたらベリーハッピーだしね」

「おい、ベリーハッピーって」

「ベリーハッピーよ!!」


 そう言い切られ、未来無くても楽しい……ふりをした。その歌の間は。


 俺は、カラオケの楽しみ方をよく知らない。だからこそ、心の底から楽しむのは無理なのだ。そして、そんな中、俺の番が来た。

 緊張するな。


「翔太くん頑張れ!! それで翔太君の歌のうまさを見せつけてやれ!!」

「俺はそこまでうまいわけじゃねえよ」

「えー、いい声、イケボじゃん」

「もう、あんたたちはまたイチャイチャして」


 そんな中、上島さんがあきれた様子で言った。俺も別にイチャイチャしてるつもりはねえんだが。


 そして俺が歌うのは流行りの曲だ。流石に俺故人のお気に入り曲だとみんな困惑する可能性もあるしな。



 そして俺が歌い終わった後、


「なるほど、これは未来が気にいるわけか」

「でしょー千鶴! いい声でしょ!」

「もしかして今日未来が御堂君と私たちをカラオケに誘った理由って、未来の糸氏の彼氏の歌を聴いてもらう為だったりしてー」

「違うよ!! 花枝!!」


 ああ、楽しそうだな。未来。


「ねえ、翔太君褒められてるからうれしい顔してよ」

「ええ!?」

「だってさ、皆が翔太君の歌をほめてるよ。気持ちいいとかないの?」

「無いって言うか、気まずい」

「え? どの辺が?」


 三森さんが興味津々に聴いてくる。


「俺は、もともとボッチだからさ」

「あーなるほどね」

「なるほどって言われると、少しもやもやするけど」

「でもいいじゃん翔太君。事実なんだし」

「未来お前も俺の敵かよ」


「さて、お取込み中悪いけど、次私の番だからね。どいて」


 そう、上島さんがマイクを持った。


「えー、もう少し翔太君とお話ししようよ」

「いや、でももう始まるから」

「仕方ない、今回は千鶴に譲ってあげるかあ」

「だね!」


 そして俺は未来の隣に戻り、上島さんが歌い始めた。


「未来……上島さん上手くね?」

「うまいよ。だって、歌自慢大会で銀賞撮ったことあるし。まあ、そこまで大きな大会じゃないけど」

「え? マジで?」


 だからこんなにうまいのか。


「すげえな」

「まあ、私の自慢の友達だから」

「なるほどなあ」


 そして上島さんが歌った後、点数は95.572と出ていた。


「すげえ点数だな」


 思わずに行ってしまった。すると、三島さんが、


「すごいでしょ!! どう、見た?」


 と、偉そうに言った。


「なんで花枝が自慢気なの?」


 それに対して、上島さんがあきれるように言った。


「私の手柄は私の物、友達の手柄は私のものだよ!!!」

「……花枝」


 そう、上島さんが冷たい目で三森さんを見た。


「だいたいね、花枝はこうなったら静かになるから」


 そう、未来が言った通りに、三森さんは黙った。


「さて、次は私かな」


 と、未来も満を持して、マイクを持ち始めた。


「行くよ!!」


 その未来をまっすぐに見つめる。


「ちょっと、翔太君、そんなに見つめないでよ」

「ああ、悪い」


 これだと、また言われてしまう。

 いちゃいちゃしていると。


 しっかし、歌っている時の未来はやっぱり楽しそうだな。全力で楽しんでる感じがする。しかも上島さんの声を聴いた後だから、少しだけかすんでしまいそうだが、やっぱり未来はいい声だ。


 そして、未来が歌い終わった後、未来に抱き着かれ、「どうだった? 今日の私は」と訊かれた。


 もちろん「最高だった!!」と答えた。完全なる事実だ。


 そしてまた三森さんに「イチャイチャしてる」と言われるのであった。


 そしてカラオケから出た時に、


「どうだった? 楽しかった? みんなとのカラオケは」


 と、訊かれた。


「もちろん楽しかった。いろいろな歌が聴けて。でも、一番はやっぱり未来の歌が聴けたことだな」

「また翔太君ほめ殺そうとしてるし」

「いいじゃん。事実なんだから」


 そして未来の身も下で、「上島さんも上手いけど、俺にとっての一番は未来だよ」と、言った。


 その後で、未来の顔を見ると、赤くなっていた。

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