第8話 來都

 そして翌日、未来に誘われ、未来の家に行くことになった。

 その訳としては、未来の弟さん、來都らいと君が俺に会いたいと言われたからだ。会うだけだったら前回もあっているが、今回は一緒にゲームもしたいということだ。俺となんてゲームをして楽しいのかと思うが、姉の彼氏だからということもあるのだろう。


「という訳で、翔太君お願いね」

「まあ、構わないけどな。だけど少しだけ怖い」


 未来の弟、來都君と一緒に遊べる自信だ。

 前に未来の家に行った時に、來都君の人間性はわかっている。未来と話している時は楽しそうに見えたし、仲がよさそうだと思った。だが、俺には小さい子供とかかわったことなどほとんどない。

 子どもの扱い方なんて一人っ子の俺にとって全く分からない。何をすれば喜ぶのか、何をすれば楽しむのか。


「大丈夫」


 そんな怖がる俺に未来が言った。


「だって、翔太君は優しいもん。絶対大丈夫だよ」


 そして、俺たちは未来の家に来た。人生二回目の彼女の家だ。


「あ、翔太お兄ちゃんいらっしゃい。お姉ちゃんに入ってないからね」

「相変わらずのクソガキね。また、耳引っ張る?」

「それは勘弁してよ」


 そう言って、來都君は逃げるようにリビングに行った。


「最初からあんな感じでごめんね」

「ああ、少し心配になってきた」


 そしてリビングに行くと、もう來都君がゲーム機を起動して待っていた。


「じゃあ、やろう!」


 と、俺がそこに来る前にそう言ってきた。


「來都、わがまますぎ。翔太君も聖人じゃないんだよ」

「えーいいじゃん。俺がルールなんだよ」

「もう、だから調子に乗らない!!」


 未来はそう言って、來都君をとがめようとするが、來都君は気にしない様子で、俺にゲーム機を渡した。


「じゃあ、やろう」

「ああ」


 そして俺たちはハンドルを握り、キングカートをすることとした。


「さて、翔太お兄ちゃんはどれくらいやるのかな? 僕に対抗できるくらいの実力はあるといいんだけど」


 あれ、この前こんなにうざかったっけ。この前の食事会ではそこまでしゃべっていなかった気がするんだが。


「未来……ちょっと自信なくなってきたかも」

「……頑張って」

「なに、こそこそ話してるんだよ。行こうぜ!」


 そしてそのまま來都君のペースに巻き込まれたまま、ゲームは始まって行く。

 レースの内容としては、俺が一気に優勢になった。というのも來都君がさっきから変なミスを連発しているのだ。どうやら偉そうにしてた割にはそこまでは上手くないらしい。

 そしてもう一人の未来もそこまで本調子は出ていないようだった。

 これは……一気に圧勝したほうがいいのか? それとも半端に手を抜いたほうがいいのか? 全く分からない。


 とりあえず、俺はこのままいくことにした。だが、今考えると未来は所謂接待プレイをしているんではないかと思い、俺はそばにあった草原に足を絡ませて、少し速度を落とす。

 このゲームはコース外を走ると減速するというのがあるのだ。

 それに俺は大分独走していた。流石に俺が走り過ぎたら面白くないだろう。そしてそのまま二位のNPCに抜かされる。


「翔太お兄ちゃん、抜かされてやんの」


 そう、煽るような口調で來都君に言われた。こっちはわざとミスをしたというのに。


 そしてそのままう甘く順位を合わせ、俺と未来で來都を挟むような順位になった。未来が5位で俺が三位だ。流石にここまで拮抗した勝負に見せかけたのだから、そろそろいいだろう。


 そしておっれの車は速度を一気に上げ、最終レーンで一位と二位を追う形となった。もう來都に遠慮なんかしない。そして俺はそのまま直線で二人のNPCを抜かし、一位となった。


「ふう、これが年長者の実力だ」


 と、言ってやった。流石に大人げなかったかと思ったけど、來都が「くっそー」と、本当に悔しがってたので、まあこれは大丈夫だろうと思った。


「あと少しだったのに」


 と、來都が悔しそうに言う。


「大丈夫。強かったぞ。あと少しここがたりないな」


 と、來都に向けて、テクニックを数個教えてやった。

 すると次のレース。かなりうまくなっていた。


「翔太君、教えるの上手くない?」


 そう、未来が一位を走っている來都を見ながら言った。


「元から上手かっただけだよ」


 そう、いう。まあ、これくらいでこんなにうまくなるとは思っていなかった。そしてそのまま來都がそのレースは一位でゴールした。


「やった!!!」


 と、來都が喜んでいるのを見て俺は少しだけ嬉しい気持ちになった。





「じゃあ、そろそろご飯だから帰るわ」


 そう、数レース遊んだ後で言った。今は5時45分。そろそろと言ったところだろう。


「もう帰るの?」


 そう來都が悲しそうな顔を見せる。


「大丈夫だ。また来るよ」

「約束だよ!!」

「ああ」


 そして俺は帰路に着いた。

 家に着いてからメールを見ると、

『來都すごく楽しそうだった。本当ありがとうね』

 と来ていた。それを見て俺も少しは子どもの扱い方上手いのかなとうれしい気持ちになった。

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