第4話 戦争ゲーム

 このゲームの内容は単純だ。

 相手のチームの陣地にあるポイントに、味方チームの旗を十五秒間差し込めばポイントがもらえ、最終的にそうポイントが高い方が勝ちとなる。

 その旗を運んでいる最中に殺された場合は十五秒間味方に回収されないと旗が自陣に戻る。

 殺された場合は自陣のリスボーン地点で十五秒後に復活する。

 使える武器は、銃、剣などなど様々なもの。


 そう、単純明快なゲームだ。

 これは俺が前に買って、だいぶハマっていたゲームだ。ハマりすぎて1日中やっていた。もう、食事と寝る時間以外はほぼこのゲームをやっていた。

 だからこそ、未来がこのゲームを選んでくれてうれしい。


「じゃあ、よろしくね」

「ああ」

「ふふ。翔太君と一緒にゲームできるなんて幸せー」

「昨日も一緒にしてなかったか?」

「まあ、そうなんだけどね。昨日は敵だったじゃん。でも今日は味方……つまり共闘じゃん」

「そうだな」


 確かに、このゲームは協力し合いながら旗を運ぶゲームだ。そう言う意味ではキングカートよりも友達とやるべきゲームと言えよう。

 そして、マッチングして、ゲームが始まって行った。


 とりあえず、俺で、固まって動く。もし敵が現れても二人で上手く立ち回れば挟み撃ちが出来るというからだ。


 そして、早速敵が現れた。


「行くよ! 翔太君」

「ああ」


 と言いあって、未来は右から、俺は左から挟み撃ちにする。

 敵は周りの壁が邪魔で上手く身動きができないようだった。敵はすぐに迎撃態勢を取り、俺の方に一発攻撃をした。

 だが、敵が俺を攻撃したその隙に、未来が敵を撃ち殺した。俺もダメージを受けたが、死んではいない。やられても、死ななければ時間経過で回復するのだ。


 だが、その瞬間、画面に、


「旗を持った敵が自陣に侵入しました」


 と出た。つまり自陣は破られたということだ。確かに俺たちが固まっているということは逆に手薄なところがあるということだ。


「翔太君!戻ろう」

「ああ、そうだな」


 と、俺たちは急ターンして自陣に戻る。すると、後ろから敵が来たのだろうか、二人まとめて殺された。


「やられちゃったー」


 そう、未来は笑顔で言う。


「なんでうれしそうなんだ?」

「だって、翔太君と一緒にやられたんだもん」

「それそんなに大事か?」

「大事よ!!」


 そしてその間に旗を置かれ、一ポイント相手に入れられた。


「やられたな」

「だね。じゃあ、私たちも一点入れよう!!」


 と、未来が旗を持つ。旗を持つ人のデメリットとしては、攻撃が一切できなくなるという点だ。そのせいで、護衛がいなければ何もできなくなる。それにこのゲーム、一点の比率がとても高い。すでにうちのチームの逆転の目途は少なくなってきている。


 未来は旗を持ちながら突き進み、俺は、旗を持つ未来を守るために、敵をどんどんと撃ち殺していく。


「なんか、ナイトみたいだね、今の翔太君」

「そうか?」

「その調子で私を敵陣まで運んでね」

「はいはいっと」


 そしてそのまま、未来を援護して、上手く点を入れられた。


「流石! 翔太君!!」


 と、未来に褒められ、少しうれしい気持ちになる。


「じゃあ、そのままもう一点入れよう!!」


 と、未来に言われ、または旗を運ぼうとするが、別のプレイヤーがすでに旗を持っていた。未来は地味に旗を運ぶの上手いし、未来に持ってもらいたいところだが、そのプレイヤーとは意思疎通ができないので仕方がない。


 結局そのプレイヤーはすぐにやられた。未来はすぐに落ちた旗を回収しようとしたが、俺がそれを制止した。その旗の近くには敵がいて、二人かがりでも旗を取り、その場を離脱するのは現実的ではないからだ。


「なんで止めるの!?」


 と、未来が聞いた。それに対してはもちろん「取れそうにないから」と言って俺の考えを話した。そして旗が自陣に、戻るのを見計らい、「未来、旗取りに行こう」と言って、未来と一緒に自陣に戻った。

 そして再び未来が旗を持って、二人で敵陣に向かっていく。


「また共同作業だね!」


 と、未来が真っ直ぐに言った。


「楽しいな」

「それは良かった」

「翔太君の役に立てるなんて、嬉しすぎる」

「役に立てる?」

「うん! 私が活躍したら翔太君試合に勝てるでしょ?」

「たしかにな、じゃあ頼むぞ!」

「うん!」


 しかし、残り時間は一分。後一回やられたら延長のサドンデスに入るかもしれない。出来ればそれまでに入れておきたいところだ。


 そして俺たちはどんどんと進み、未来を援護して進んでいった。しかし、


「周り敵ばかりだー」


 未来が言う通り、周りに人の敵がいる。当然のことだ、敵陣に近づけば近づくほど敵が増えると言うのは。


「俺がなんとか倒す!」


 と言って、銃を発射したが、倒せたのは一人だけだった。

 俺は結局撃ち殺され、その数秒後に未来も撃ち殺された。


「すまん、お前を守れなかった」

「良いよ、私も旗守れなかったし。てか、ゲームとはいえそんな言葉を言われるの嬉しすぎるんだけど」

「それは良かった。っと、旗が近づいてるな。守るぞ!」

「うん!」


 そして、俺たちは旗の敵を倒した。そして今度は別のプレイヤーが旗を持ったので、俺と未来でそのプレイヤーを援護しながら進む。


「翔太君に守られたかったな……」

「仕方がない」


 そう慰めながら進んでいく、そして、そのプレイヤーは上手かった。見事に敵の気配を察知して守られやすい場所、敵のいなさそうな場所を見事に通って、ノーミスで旗を置いた。


 そして見事に終わった。俺たちの勝ちだ。とはいえ、最後の方俺たちはほぼ何もやっていないわけだから、若干もやもやはするが。


「いやー。楽しかった」


 そう、ゲームが終わった後、未来が言った。


「そうだな。いつもより楽しかったよ」

「えー。嬉しい!!!」

「おい、抱き着くなよ」

「いいじゃん!」


 これがうちのクラスで一番モテている女子。いや、未来のこの感じを独占できるのは俺だけ。そう考えると、少しうれしくなる。

 他の男子には絶対こんな未来は出してないだろうな……と。


 そして数秒抱き合った後、再びマッチングしていることに気づき再びゲームを再開した。


 そして、存分に遊んで満足した後、


「ねえ……今度の土日さ」

「うん」

「デートしない?」


 と、そう照れながら未来が言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る