第3話 家
「おはよう!」
家を出るとそこにはもう未来がいた。
「約束なんてしてなかったのに」
「彼女だから朝迎えは当然です」
「そうか」
そして学校。
「さーてと。どっきりです!」
「はあ?」
教室に入った瞬間にそう言われた。どういうことだ? 意味わからん。
「もう二人ともやめてよ。まあそんなわけなんで、全てうそでした」
「は? は?」
昨日の時間は何だったんだよ。
「もうそんな暗い顔しないでよ。ウソだから」
「何がだよ」
「どっきりが」
「ということは?」
「私たち付き合ってるでいいってこと」
「何だよそれ」
とりあえずほっとした。
「でだ、なんでこんなことをしたんだ?」
「昨日ドッキリを疑ってたから、ドッキリと見せかけたら面白いかなって」
「それはテレビ並みに酷い企画だな」
「ごめん」
「あ、そろそろ授業始まるか」
「確かに」
とは言ってもホームルームなのだが……
「じゃあ後で」
「ああ、今度はドッキリだったとかはやめてな」
「もちろんです」
「ふう」
と、席に座る。
「なあ」
と、隣の席に座ってる長谷川敦が話しかけてきた。
「何?」
とは言うものの言いたい事は分かる。おそらく未来の事だろう。俺と彼女では不釣り合いだしな。
「何故急にあの斉木さんと?」
「ああ、俺も驚いた」
「なんでだよ」
「俺が聞きたいよ。ただ、声がいいんだとさ」
「ああ、たしかにいい声だよな」
「まあな。俺はそうとは思えないけど」
「そうか。しかし、俺が代わりたいくらいだ」
「悪いな。それはできねえよ」
「分かってるって。俺も彼女欲しいな。それでイチャイチャしたい」
「ああ、応援してるわ」
そして一限目の休み時間。
「なあ、普段話さない人に話しかけられたよ」
「なんで?」
「君と付き合ったから」
「そうか、私に感謝しときなさい」
「なんでだよ」
「私がいなかったら話しかけられることもなかったからねー」
そう未来は笑顔で言う。これでは責めることもできない。
「それでさあ、今日はあなたの家に行ってもいい?」
「いいよ」
「やったー!」
そして俺の家、
「お邪魔します」
と、未来が俺の部屋に入ってきた。俺の部屋に人を入れるなんて初めてだ。それも女子だし。なんとなく緊張する。
「ついに入っちゃったよ、翔太君の部屋に入っちゃったよ」
「それがそんなにうれしいことなのか?」
「だって、好きな人の部屋に入るなんてそうそうないことだもん。その私の夢がかなったと言っても過言ではないの」
「そんなにうれしいのか。俺の価値なあ」
俺は自分の価値をそこまで高くはないと思っている。だが、俺の存在でこんなにも喜ぶ人がいる。その事実でもう嬉しい。
「マジで俺の自己肯定感バリバリ上げてくれてうれしい」
「私は別に元に戻しただけだけど」
「それでもうれしいわ。俺は自分を卑下して生きてきたから」
事実、俺は人に好かれる存在だとも思ってはいなかった。ただの道端のゴミ、それが今までの俺だ。だが、それが今ではなんだ、今家には学校一の美人の未来が家に来ているじゃないか。
一週間前の俺に伝えてやりたいわ。一週間前と言えば、確か……友達がいないのが嫌で、そんな自分が嫌になって、街中で、へたり込んでいたところだった。
そんなときから今の状態になったと考えたら目まぐるしい変化だ。
そんな状態から考えて、今の状態は夢だ。
「こう言うのってベッドの下に何か隠してるパターンとかある?」
「流石にないよ」
と、そのままベッド委の下を見られるが、何も見つからず、未来はつまらなさそうな顔をする。
「こういうのって、エロ本とかあるんじゃないの?」
「絶対あるわけじゃないよ。それに今、エロ本なんて持っている高校生なんていないだろ」
その俺の言葉を聞いて、またつまらなさそうに、「そっかー」と言った。
「でもさ、年頃の男の子が本当にそう言うの無いっておかしくない? 少しくらいはそんなことないの?」
「未来ってそんなにエロい話好きなの?」
「いや、好きなわけじゃないけど、なんとなくね、そう言う感じかなって思って」
「よくわかんねえわ。俺には」
そもそも彼氏彼女で何をするか面よくわかっていないし。
「さて、じゃあさっそく何かやろー」
と、ノリノリで言い放った。
「で、何かある? 一緒に出来ることって」
「無計画だったんですか」
「悪い?」
「なんで逆ギレなんですか」
「別に翔太くんのホームと思わないでね」
「さっきからなんですか、その上から目線は……まあ、とりあえず出来ることっていえばゲームくらい?」
「そうだね。何かゲームある?」
「俺あまりゲームもってないからなあ」
そもそも俺は、そこまで毎日ゲームをするわけではないのだ。だから、選択肢が三つしかない。
「じゃあ、トランプする?」
「二人だからなあ」
「うーん。そうだね、何がいいんだろう。私が翔太君とやりたいこと……やっぱりゲームかな?」
「ゲームですか……」
そう言われたから、奥からカセット三つを持ってくる。
「これいいじゃない?」
それは、四対四の戦争ゲームだった。
「でも、結構激しいゲームだよ」
「私も持ってるから、大丈夫!!」
そうだったな。そう言えば昨日未来の部屋にこれもあったな。
という訳で……このゲームをすることになった。
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