第7話 二重の謀略
此処で事前にお詫びをせねばならないが、前章までも彼との心情的及び物理的な距離感や連絡手段等の制約により、文体及び時制が統一されていない為、随分と読み辛かったのだが、以降は私が特別な利害対象者であると共に諸般の事情により途中から情報隔離され曖昧になり、それを補う目的から彼以外の情報源を元に記載しており、また自己防衛による検閲が施されている分、より一層読み辛くなることが予想される。
彼及びOの申し出に基づいて、法人業務部と決済業務部で重複しているCSA業務を決済業務部に一本化する方針となり、法人業務部の担当者に業務継続の意思確認を実施した結果、P以外の全員が法人業務部に残留希望であることが判明した。
決済業務部(特にQ副部長)の意向によってOは対象外とされていたので、Pと彼が移籍する運びとなっていたが、業務移管協議委員には、業務経験が考慮され、O及びPが選出され、移籍対象者の決定と同意義と考える(Oを除く)のも当然であった。
モチベーションの低下が懸念されたが、キックオフ・ミーティングについてOからの報告によって思わぬ事態が進行していることが明らかにされ、以前にも増してそれ以外の担当者による関与が求められることになった。
過去の経緯を遡ると毎週、同様の合同会議が開催されており、当初はOとPが参加していたが、二人も参加するのは業務遂行上、困難且つ無駄との判断でPが単独で参加し、重要事項を報告すると取り決められていたのだが、新システムの導入は検討段階との認識であったが、実際には既に要件定義を終了し、現状業務との並行稼働期間に突入しており、システム導入を主導している決済業務部デリバティブ業務課のRとPが災害対策室で法人業務部の与り知らないまま実施されていた。
単純に考えるとPの暴走と判断されるが、実務上の弊害が生じる為、時間変更を依頼したが、受け入れられなかっただけでなく、新システム導入に懐疑的であったOを意図的に排除する一方で、功名心に逸るPを上手く懐柔したのが実情であった。
グループ子会社との経営統合と鬼軍曹による中期経営計画で打ち出した「銀証連携の更なる推進」と「仕組債組成の内製化」の恩恵によってシステム開発予算が今年度は嵩上げされるが、来年度以降は「営業人員の拡大」が本格的に実施されるので、緊縮される見込みが非常に高い為、Q副部長とRが強引に推進しており、既存顧客へ新システムの導入に関するアンケートを実施した際には、「システム会社の販売代理店か」と抗議を受け、物議を醸したばかりであった。
更に問題はシステムだけに止まらず、担保授受に伴う金利もマイナス金利を想定していなかった為、契約書の差し替えが必要な例も多発し、現場を混乱させていた。
契約書の問題は、収益の柱であるデリバティブ取引を簡易に実施する為、法務部の関与を必要とせず、決済業務部デリバティブ業務課契約管理グループが担当しているが、ブレーキ不在でアクセルだけの歪な構造になっている。
また、リーマン・ショック後に不招請勧誘の禁止で縮小した通貨オプションの後釜として仕組債の担当者は収益性が高い為、多数在籍しているのに対し、CSA業務は英文が強制適用されており、人材不足が顕著で外資系証券出身の契約担当副部長(非管理職)が実質一人で切り盛りしており、契約内容の見直しに加えて、新規契約さえも机上に滞留し、ボトルネック化が喫緊の課題であった。
このような惨状をOから確認していた為、並行稼働期間のシステム不具合を徹底的に実施し、担保授受が逆転した場合に発生する不具合、マイナス金利時に金利計算機能が利用できない等の不都合を報告したが、Rによる弥縫策だけでお茶を濁し、システム自体の改善は無視されたまま予定通り実施が承認されて、彼とPが決済業務部デリバティブ業務課に異動する人事が発令された。
社長への提言(誰が為に)
グループ子会社との経営統合が宣言され、中期経営計画に盛り込まれ、具体的な施策として「銀証連携の更なる推進」と「仕組債組成の内製化」及び「営業人員の拡大」が取り上げられていますが、複数部署の経験から鑑みて、優越的地位の濫用及び個人携帯の使用等不適切な事例が散見されております。
また、仕組債は基本的にボックス圏(一定範囲で価格が安定)と考えるストラドル若しくはストラングルの売りであり、一定範囲外になると利益が限定される反面で損失は限定されない一方で高コストとなっている典型的な不機嫌な商品です。グループ子会社で販売した高金利通貨を対象とした仕組債の損失を考慮すると見直しが必要と考えます。システム開発を抑制すると共に面子に拘らずに両者のシステムの優劣を判断すべきと考えます。既に執行系、記録系システムに付加価値は存在しません。安易に資産管理システムを外注するのではなく、当社が法人向けに提供している債券管理システムの優位性を活かして個人にも門戸を広げるべきです。また、営業人員の拡大も供給ありきでなく、質を向上することで自然と需要が高まる人材育成策を実施すべきです。
彼と私とZ副部長による三者面談が緊急開催され、開口一番「前回の警告が意味することを理解して貰えなかったようですね」から始まり銀行との不適切な事例を全否定し、個人携帯の使用は貸与携帯の不携帯若しくは充電切れ等の緊急事態であると断言(実際は意図的と思われる悪質な事例も散見されたが、重要情報の交換は面談で実施し、証跡を残さないという本末転倒な暗黙のルールが総務課長若しくは内部管理責任者に通達)された。
彼が複数部署で見聞した研修受講時の不正に関しても全社員への覆面調査が実施されたが、実際は広範に研修時間を悪質な短縮、解答例を配布が見られたにも関わらず、視聴時間の短縮を厳禁化する通達だけだった。
内容は精査されない狂言回しのように総務課長若しくは内部管理責任者に通達された結果、馬鹿正直に報告された事例は皆無であり、「言われなき誹謗中傷には、毅然とした法的手段も辞さない」と迫り、「それ以外の提言も根拠に乏しく株主に委託された取締役会の専権事項であり、経営権に対する重大な干犯行為である」と時代錯誤な科白で一刀両断されてしまった。
最後に私にも寝耳に水であったが、「Y副部長はグループ子会社との経営統合を主幹するので、Wさんを特別扱いはせず、第一人事課が担当します」と一方的に宣言して閉会となった。
此処で抗っても無駄である分別程度は理解しているが、彼に対する私の態度は生温いと実質的には更迭を言い渡されたのであり、彼は更生の見込み無しの烙印を押されたのも同然であった。
彼の掲げる正義は、銀行の立場から見ると収益の源泉に対する全面否定であり、看過できない存在となっているので、当社の現状を考慮すればX常務にとっても苦渋の選択であったことを鑑みて甘受した。
その後、彼から「決済業務部と法人業務部の歪な関係及びQ副部長、RとOの確執に絡み、異動対象であることは覚悟しての行動であったが、Pを巻き添えにせぬよう配慮頂きたい」と依頼を受けたが、「完全に手を離れており、確約は出来ない」と正直に言うことが精一杯の誠意であった。
情報収集及び分析能力に秀でた彼は、差し迫った状況を冷静に把握した上で過激な一連の行為によって、私を危険地帯から疎開させたが、Pの処遇が唯一の懸念材料として重く圧し掛かっていた。
様々な懸念材料が放置され、寧ろ新システムの導入こそが唯一の解決策と喧伝し、中央突破を企図した為、現場の混乱は尋常ではなく、新参者である彼とPは、蚊帳の外に置かれる結果となった。
朝夕二回の課会と随時開催されるグループ・ミーティングの際は、無理矢理用意された席で電話番をするだけであり、逆境に慣れた彼でさえ、平常心を維持することが困難であり、期待を裏切られたPは荒み、法人業務部顧客を引き継ぎも決済業務部の担当者である2名の女性とも摩擦を起こし、急遽彼を中心にPが補完する体制に変更された。
業務知識及び業務効率の観点からも法人業務部が有為にあったので、Pが新システムだけでなく、フォルダ管理等も揶揄するように感じた2名が双方向でなく、一方的に習得するのでなければ、我慢出来ないとQ副部長に強訴したのが理由であった。
しかし、Pの不満の矛先は彼に向かい、契約関係及び担保授受に関する業務も担当者全員をCCに入れ、証跡の残らない電話は極力避けるように伝、全金融機関への店頭デリバティブ証拠金規制の強制適用の期日が迫っており、対象外であった金融機関からの照会も増加していた。
残念ながら、金融法人部及び投資銀行本部は相変わらず無知若しくは無関心であり、追い詰められたPは、本来は上司であるQ副部長に相談すべき事案であるが、契約担当副部長しか対応できない為、Pの個人的なリスクを伴う組織の管轄外で相談する機会が増大する悪循環が生じてしまっていた。
彼は意を決して、Q副部長に現状及び懸念事項を説明して、適切な管理及び指導を依頼したが、「一人一人がプロとして責任を持って、業務を推進するのが前提であり、グループ内で対処出来ないというのは無責任だ」と一喝され、「Pがクラス2であることも考慮しない」と宣言された。
同僚の2名の女性にその旨を伝えると「自分の保身だけで、相談しても問題を複雑にするだけのQ副部長を飛ばして、部長に相談するのがデリバティブ業務課の常識ですよ」と呆れられてしまった。
そのような状況下にあり、後ろ髪を曳かれながら、彼は以前から予定されていた長期休暇で一週間留守にした。
久しぶりに出社すると彼の席だけ、グループ内に配置されており、専門端末で隔絶された以前の席にPが孤立しているので、理由を尋ねたが一様に口は重く、単純に一席だけ空席が出来たからだと型を押したように答えるだけだった。
相変わらず課会とグループ・ミーティングには二人とも招集されなかったので、孤独以上に贖罪意識に苛まれる毎日であったが、或る日不意にPから「久しぶりに飲みに行きましょう、念を押して置きますが、汚歴史は勘弁して下さい」と冗談交じりに誘われた。
休暇中の出来事を淡々と語り始めたが、軈て感情の起伏が激しくなり、嗚咽交じりに伝えた内容は、人事異動後の差別的な処遇を改善するようにQ副部長に直談判を試みたが、暖簾に腕押しでお話しにならない挙句、法人業務部顧客業務が滞ると引き継ぎ担当が断りもなく帰宅してしまったので、Q副部長に報告すると「グループ内で解決して下さい」と突き放された為、以前に交換した個人の携帯電話に連絡した結果、本人からの申し出により突然座席変更が発表されて、有無を言わさずに実施された。
皮肉にも愁嘆場に水を差したのは、グループ・リーダーからPの個人の携帯電話に連絡があり、「これって典型的なダブル・スタンダードって奴ですよね」とPが涙を拭って、赤い目のまま強がって見せた。
法人業務部に所属していた時から、PはQ副部長、Rと一緒にCSA業務を担っているという意識が強く、それ以上に契約に絡む実務を殆ど一人で取り仕切っている契約担当副部長を含めて、リーマン・ショック後に強化されたデリバティブ規制に対する全般的な指針を決定している一員であるという甘い陶酔感に浸って、複雑な組織や人間関係に無頓着であった。
デリバティブ業務課を率いるQ副部長は関連知識が乏しく、会議にもRが同席していなければ覚束ない状況であり、RはQ副部長の無知による全幅の信頼を利用しながら、新規システムの開発を牛耳ることが出来るので、一蓮托生の共犯者として悪代官と越後屋のような関係が成立していた。
一方で、契約担当部長は英文契約書の唯一の権威として祭り上げられ、属人対応になっていることを懸念して、法務部の関与若しくは人員の増強を常に具申しているが、非収益業務であり、不招請勧誘禁止となった通貨オプションや稼ぎ頭の仕組債とは異なり、専門性が高く、人材不足もあって認められず、今回のマイナス金利による想定外の不備も孤立無援の状態に置かれ、業務遂行に懸念と不満が高まり、一触即発の状況であった。
臨界点を超えて表面張力のみに依存する状態に二人は投げ込まれ、否、より厳密に言えばPは投げ込まれたが、彼は敢えて飛び込んだのであった。
放置され続けた挙句、強制的に排除されるに及んで、PはOに「Wに裏切られた」と報告し、初めて此処までに至る過程を具に説明され、掌の上で踊らされていたことに気付いたようだが、後の祭りであった。
その内容については、彼(そして私)にとって殆どが周知であったので、繰り返すことも無いが、OとQ副部長の確執は源流を辿れば傍若無人を極めた所謂「黒目のガイジン」の行状を健全な市場の観点から問題視し、改善を求めたのがOであり、追い詰められ新天地を求めて来たのがQ副部長であった。
先んじていたQ副部長は、赤信号が点滅していた通貨オプションを鼬の最後っ屁の如く取り組み、死屍累々の上に収益実績を築き、不招請勧誘禁止となった為、矛先を仕組債に向けて組成の内製化を推進する所謂「黒目のガイジン」の捲土重来を旗印に虎視眈々と狙っていた。
遅れ馳せながら入社した、Oは仕組債の本質を知悉しており、富の簒奪以外の何物でもなく、顧客との良好な関係を阻害すると論陣を張ったが、収益という名の甘い誘惑の前には風向きも芳しくなかった。
それに追い打ちを掛けたのが、金融機関に対する店頭デリバティブ証拠金規制の強制適用であり、Oは契約担当副部長と結託し、全社的な取り組みとして周知徹底して、地域金融機関等への啓蒙で将来的な囲い込み、地方活性化の起爆剤とし地域拠点の強化を訴えつつ、反対にデリバティブは原資産に依存する従属的な手段であり、単独資産では無いとの立場を主張したが、目先の収益にしか関心がなく、極端な事なかれ主義と本社機能の肥大化による既得権の壁に小田原評定を重ねた挙句、臭い物には蓋とばかりに法人業務部の発足と共に追い遣られてしまった。
OはPに問われるまま、OとR副部長に纏わる因縁だけでなく、彼が決済業務部に流れ着いた経緯も伝えていた。
Pは「水臭いじゃないですが、Oさんとは奥歯に物が詰まったような関係でしたが、Wさんが来てからは風通しが良くなって、お互いに気が付いたことを隠し事なく話せる関係になったと思っていました」彼は素直に頭を下げて謝ったが、「同情されるのが一番嫌です、可愛そうな奴とか保護すべき対象と特別扱いされたくないです」と言われると、彼は何も言えなかった。
「法人業務部に居れば安泰で現在のような境遇に陥ることも無かったのに、実際はどうであれ、口先だけでも嘘も方便で賢く立ち回らなかったのですか」とPが聞くと「以前に追い詰められて同僚を(実際は隣の管理職)監視したこともあったが、魔が差したとしか思えないが後悔しか残っていない」と彼は答えた。
彼は「一番重要な職務は教育と指導なのに疑って監視するのは、管理職として失格だと思う」と続け、Pは「最初に配属された機関投資家営業部では接待と飲酒の強要があり、日本語が不得手な母の病気もあって勤務時間への配慮を依頼すると人事部付にされ、次に配属された法務部では会社印及び社長印の管理を殆どワンオペで対応させられた上、問題が発覚すると上司が逃げた為、口封じに異動させられてしまいました」と溜まった感情を吐露した。
彼も「最初の件は(自分には)無関係だけども契約書の管理が問題視されたのは、企業情報管理部で内部告発した結果なので申し訳ない」と謝ると「管理職も業務に疎かったので、大きな問題になる前に逃げ出せて、結果的には良かったです」とPも本音かお世辞かは不明だが笑顔で答えた。
Pが「就職に際して不利になるから両親の反対を押し切って帰化したのに、結局は蝙蝠扱いされて嫌な思いばかりして、皮肉な話ですが、今では中国人の方が投資銀行等で重宝されているので、本当に皮肉です」嗚咽から号泣に代わった。
彼は「同情は傲慢であり、共感は不可能であり、受容のみが唯一の手段」であり、「皆一緒が心地良いではなく、皆違って皆良い」を実践するとPに決意表明をした。
Pが「会社に逆らっても、天に唾するのと同じなので止めて下さい」と懇願すると、彼は「Oさんはどう言っていた」と尋ねた。
Pは「Wさんの考えがあるので、止めることは誰にも出来ない」と答えたので、彼は得意の「裸の王様」と「王様の耳はロバの耳」の理論を用いて説明した。
概ね納得したようであったが、Pは「優越的地位の濫用なんて赤いきつねも青いうさぎもやっているので、やらなければやられるだけです」と食い下がったが、彼は仕組債の問題点及び銀行員による販売行為を断罪し、捨印が慣習的に見過ごされていることが異常と切り捨て「赤信号皆で渡れば怖くないではなく皆で死ぬが現実で実際に市場の信頼性が歪められている」と言い切った。
捨印を
当たり前だと
思うのが
一般人と
銀行の溝
彼の母親が貯めたヘソクリで購入した自社株を三洋電気で大損させた同期の話にも言及するとPは「人間の屑ですね」と吐き捨て、彼は「罪を憎んで、人を憎まず」と呟いて、日本人の行動規範が「りょうしん」にあるという自説を説明した。
さらにPが「でも研修時の不正は最終的に理解出来たら、それで良いじゃないですか」と言い張ったが、「神は細部に宿ると言われているが、その程度も守れない人に大切な資産を任せられるか、それに一般会員は継続教育に苦労しているのに、組織的な不正は由々しき事態と世間の常識に照らして考えろ」と彼は珍しく語気を強めた。
彼は「大声出してごめん、悪い癖が出てしまった」と素直に謝罪すると、「WさんとOさんがどうして出世しないのですか」とPが尋ねるので、「それが解れば苦労しないが、Oさんの場合は中途入社だからだと思うが、自分の場合は空気が読めないのと人望が無いことが原因かな」と彼が一笑に付したが、「Wさんはいつも自慢話ばかりだと言いましたが、嫌な経験が多すぎるから、数少ない過去の栄光に縋らなければ、平常心を保てないのに酷い言い方をしてごめんなさい」とPは頭を下げた。
ある意味図星であった為、冗談を返せば済むのに、何も言うことも出来ず重苦しい空気のまま散会した。
翌日、彼は契約担当副部長と面談し、契約担当グループの状況を確認するとデリバティブ業務課が、リーガル・リスクを内包する組織形態に対して疑念を持っており、収益重視で仕組債等の契約書を人海戦術で熟す一方、英文契約書に関しては所謂ワンオペで人材を育成しようとしない会社方針と望みもしない名ばかり管理職をQ副部長のリスク回避だけが目的で露骨に押し付けられており、業務が山積して身動きが取れない状態に不満も臨界点に達しているようだった。
Q副部長及びRが推進している契約書管理システムに関しても共有フォルダでアクセス権を制限すれば事足りることなのに態々システム開発を推進し、会議招集されて要件定義等で忙殺されることに懸念を抱き、それよりも熟し切れない本業に時間を割き、人員の増加を部長に直訴している事実と法律と英語が堪能であるPを手元に置いて自分の手で育成したい意向も確認した。
また、法人業務部の柵で、金融法人部からの要望がPに集中している理由を突き止めるべく本人にも確かめたが、リテール専業から親会社銀行の肝煎りで無理矢理ホールセールを急造したことによる業際の空白地帯が生じている事態が根本原因であると判明した。
具体的に説明するとCSA業務への理解が著しく乏しいだけでなく、プロフィットセンターでなくコストセンターであることも災いしており、臭い物に蓋をするように関連部署間の押し付け合いが激烈であり、業務管轄だけでも金融法人部はプライマリー業務専業であり、事業法人営業部の管轄であると主張するが、事業法人営業部は金融法人なので管轄外であり、法人業務部の管轄(結局、Pに収束)であると主張しており、事務全般については事務統括部の主張は、リテール専門部署なので決済業務部(当然、Q副部長は断固拒否)若しくは法人業務部と主張して担保授受についても資金部も事務統括部と同様の主張を繰り返すだけなので、契約担当副部長及びPにブーメランのように戻って来てしまう構造になっている。
彼は無責任ではあるが、Q副部長の元では心許ない為、Pに他部署からの照会は極力回避し、どうしても対応が必要である場合は、証跡の残らない電話でなく、担当者と部長及びQ副部長をCCに追加することで過度な責任を担保しないように伝えたが、Pは不満そうに「顧客本位と言いながら、結局保身ですか」と問い、彼は「能力と権限は別問題だ」と突き放すように答えるしかなかった。
意を決して彼は再度Q副部長に対して、CSA業務全般、特に他部署との調整を管理職として関与するように依頼したが、「面倒な業務は引き受けない前提であり、そのような主張を繰り返すのならば、法人業務部に引き取って貰わなければならない」と断固拒否の構えを明確にした。
社長への提言(デリバティブは派生商品)
決済業務部デリバティブ業務課に所属していますが、金利及び為替、株式、CDS(CreditDefaultSwaap:信用リスクの転移)とCSA及び(個人向け)店頭デリバティブ担保管理に細分化され、システムも連携されていない為、様々な弊害が起きています。グループ単位で行動していますが、店頭デリバティブ担保管理のように昼休憩も不十分な業務もあれば、CSAは午前及び午後各一時間程度で終了する業務で不公平感が課題となっています。本来であれば、デリバティブ特有のリスクよりも対象商品のリスクに依存する為、管理も簡易且つ効率的となります。また、デリバティブ管理課の傘下に契約管理グループが存在する組織形態は、マーケット・リスク及びクレジット・リスクだけでなく、リーガル・リスクまで拡大してしまっております。更に、集積部門である仕組債等を人海戦術で熟す方針による弊害で、英文契約書は担当副部長による所謂ワンオペであり、甚だ内部統制が効かない組織形態となっております。
全金融機関に対するデリバティブ証拠金規制の強制適用への期日が迫っており、現状の体制では覚束ない状況であり、金融法人部及び事業法人営業部に対し、当社が先行する債権管理システムと合わせて、地域金融機関を啓蒙し、囲い込む手段として積極的に推進すべきと考えます。
毎回、等閑若しくは閑等にされるのが、今回ばかりは翌日には回答が来たが、「今回の提言は社長への提言には相応しく無いので、CS(CustomerSatisfaction:顧客満足度)・ES(EmployeeSatisfaction:従業員満足度)提言箱若しくは事務システム改善箱に提言して下さい」とあったので、再度其々に分けて提言するとCS・ES提言箱からは一週間後に「組織再編を含む内容に関しては、直属の上司に相談して下さい」と連絡があり、事務システム改善箱からは二週間後に「リテール専門の窓口であり、本社及びホールセールに関しては直属の上司に相談して下さい」と盥回しにされた挙句、殆ど同時に部長から個別面談をしたいと連絡が入った。
翌週に面談をすると「五課体制で部員が八十名を超えており一人一人のフォローが出来ずに申し訳ない」と部長は頭を下げ、部会には管理職及びグループ・リーダーしか出席していないので、課会及びグループ・ミーティングへの不参加は初耳の話(子会社化されている外国証券業務課を除いてもデリバティブ業務課及び業務管理課が同フロアであり、エクイティ業務課及び金融市場業務課は別フロアなので誤魔化している訳ではなく、実際に後者に常駐している)であり、Q副部長に理由を確認すると約束し、担当業務による極端に不公平があるのは是正すべきと同意し、部長自身も決済業務部立ち上げの際は、当時にデリバティブ業務課はなく、エクイティ業務課で信用担保の実務者であったので、店頭デリバティブ担保管理が二人で計算と承認をするのは厳しいことは理解出来るので、営業経験者である彼が加わることは個人的に賛成であり、契約管理グループも課への昇格が取り沙汰されているので、Pが契約管理副部長の業務を手伝うことも検討する価値があると終始和やかに進んだ。
土壇場での卓袱台返しを何度も経験している彼が、部長を疑わずに信頼したのは、都市伝説に纏わる雑談で、ある地方都市の金融機関の担当者が早朝に鶏小屋を清掃することが最大の仕事だと耳にしたと話すと部長自身が三年間担当であったことを告白し、面白可笑しく話したからであった。
最後に彼から部長に「Pにも直接話して下さい」と依頼すると「糠喜びさせてもいけないから、Q副部長と契約管理副部長の意向を確認してから伝えます」と和やかに面談を終えた。
以前の彼であれば、鬼の首を取ったようにPに吹聴したであろうが、少しだけ大人になったようで、自重したことが功を奏した。
契約管理副部長の反応は、彼の予想以上であり、「隣の島ではあるが、業務量の偏在は気になっており、業務知識の継承も必須であり、無理矢理押し付けられたシステム開発の負担も軽減され、一石二鳥なので大賛成」であった。
しかしながら、Q副部長は、彼だけでなく部長も予想外であったが、「デリバティブ業務課の業務及び人繰りに介入するのならば、グループ子会社との経営統合や既存システム開発に悪影響を及ぼす為、断固拒否します」と頑なであり、「二増一減になるが、必要であれば追加します」と珍しく部長が食い下がると、「ご存じでなければ、報告しますが、業務統合の際にZ副部長からWとPは戦力外として飼殺すお墨付きを頂いています」と突き放すように言い放った。
一般的な組織論で言えば、Q副部長の上席である部長が蚊帳の外にされて、部外者且つ役職が下であるZ副部長が人事を牛耳るのはあり得ないが、私も伝聞であるので参加者等は秘匿せざるを得ないが、私が彼の担当を外れる決定がなされた時、銀行側の求める所謂美味しいポストは、B元常務所管のリテールでなく、A専務の公益法人及び本社部門、C専務のプライベート・バンキング部門とD元常務のM&A部門であり、彼が不正を暴いた後には、着実に銀行受向者のポストが用意されており、本来は一番涎が出る投資銀行部門や商品部門の所謂「黒目のガイジン」と国共合作のような同床異夢による一時停戦合意が実施され、橋頭堡の指揮官としてZ副部長とQ副部長が任命されたようだ。
勝ち誇ったQ副部長は「ご自身でZ副部長に確認して頂いても構いません」と薄ら笑いを浮かべながら答えたが、恥の上塗りになるので自重して「どのような役割を演じたら良いの」と部長が尋ねると「ガス抜きとして話だけ聞いて、Wは狡猾だと聞いたので、言質を与えないようにメールでの遣り取り等証跡は残さないで下さい」と厳命した。
翌週、部長からの電話で「グループ子会社との経営統合や新システムのリリース等色々と問題が山積しているので、引き継ぎを最優先に実施して、それ以外は少し待ってくれ」と言われ、風向きが変わったことを彼は過去の経験から感じ取った。
相変わらず各部署からの問い合わせは、盥回しの上辿り着くのが、Pであり金融法人部から顧客に直接説明する依頼を受けると事務統括部、法人業務部、資金部等の所管部署は得意の京のいけずと奈良の早起きで断固拒否を貫いたので、Pが伝言ゲームのような形で渋々対応するような歪な形で危ない綱渡りの状態が続いていた。
事件が起きた前日に休暇を控えて引き継ぎの準備をしていたPに金融法人部の同期から「カタカナ保険会社がCSA担保を国債で当社への預け替えでなく、日銀システム間振替を利用したいと言ってきたが、責任回避で何処も対応してくれない」と悲鳴に近い問い合わせが入った。
実際にマイナス金利が実現する以前は鷹揚であり、地方銀行及びひらがな保険会社中心の法人業務由来の所謂顧客ではCSA担保の授受は預り金若しくは国債を当社に預け替えして当社内で通常口座と担保口座間で付け替えるだけであったが、外資系であるカタカナ保険会社はマイナス金利発生を伴う預り金よりも保有国債を選択し、且つ当社のリスクを取るよりも日銀システム間振替を採用する方が合理的と判断する至極論理的な判断に基づく当然の帰結であった。
彼とPで手分けして関連部署に依頼をしたが、システム統括部は「当社独自のシステムでないので関与しない」と拒否し、法人業務部は「CSAは決済業務部の管轄になった」と拒否し、事務統括部は「リテール専門であり、ホールセールには関与しない」と拒否され、最後に資金部の国債決済グループが顧客対応は断固拒否であったが、顧客配布用資料がPDFで転送され、金融法人部が説明することで決着したかに見えた。
翌日、彼が出社すると法人業務部在籍時に怒鳴り込んで来た副部長が項垂れたPの同期と一緒に訪れ、「昨日教えて貰った口座番号が間違っているとクレームになっている」と主張するので、資金部の国債決済グループから受信したPDFを元に確認したが、間違いはなかった。
Q副部長に報告すると、「朝一番でシステム統括部と定例会議なので、グループで責任持って処理して下さい」と逃げるように出掛けてしまった。
グループ・リーダーに相談すると、「Pが余計なことするから、貰い事故に巻き込まれてしまった」と不快気に顔を顰めながら、「今日は法人業務部分も引き受けるから」と言外に関与を拒否すると何もなかった如くグループ・ミーティングを開催して別室に籠ってしまった。
彼は顧客に対してお詫びと状況確認をすると金融機関間決済口座(参加者コード)でなく、一般顧客管理口座(国債権者コード)を伝えたことが判明したので、資金部の国債決済グループに問い合わせたが、「言われた顧客用書類を送付しただけで、過失はありません」と顧客の要望に応えずに責任回避で埒が明かないので、部長に状況を説明して介入を依頼し解決した。
部長も金融法人部の副部長も組織の問題であり、早急に対応する必要があることを認めて、彼及びPの過失でないと言ったので安心したが、グループ・ミーティングを終えた担当者の1名(クラス2)が、彼の休暇にPが個人携帯に留守電をした時、「Q副部長が大袈裟に騒ぎ立てたので、(業務終了確認をしないで帰宅したことを問題視されることが怖くなってしまい)咄嗟にPに責任転嫁してしまいました」と彼に詫びたことで暗澹たる気持ちとなり、四方八方から迫り来る見えない鬼に対し、掟破りの「ごまめ(弟や妹が幼い場合の特別措置)いじめ」が横行している組織に憤りを感じた。
Pの休暇明け、二人は部長とQ副部長に呼び出され、叱責を受けたが当然の如くPは口角泡を飛ばす勢いで自分の正当性を主張し、彼は時系列に沿って事実を淡々と陳述していたが、分が悪いと感じたQ副部長は、「部長もお忙しいのに二人で自己弁護ばかりされても時間の無駄なので、個別に面談します」と一方的に決定すると、部長は彼の目を避けるように退出し、「まずはPから始めます」とQ副部長の宣言に彼も退出すると同時に部長が周囲に聞こえない声で、「申し訳ない」と囁いて自席に戻った。
面談から戻ったPは両目を白兎のように真っ赤に充血させ、「Q副部長がお呼びです」と掠れた声で、彼に告げると身辺整理を始めたので、後ろ髪を引かれながら面談に向かった。
開口一番Q副部長は、「一銭の価値もない正義感で、意地を張らずにお互いの利益を考えて、共存共栄の関係を築こう」と猫撫で声で懐柔を試みたが、彼に対しては逆効果であることは明白であり、「疾しいことは一切ありませんので、承服しかねます」と彼が売り言葉に買い言葉で返答すると、「コンプライアンス統括部のZ副部長から自己主張の強くて扱いにくい中国人のPと問題児であるWの生殺与奪は一任されている」とQ副部長が仄めかすと、「お二人はレイシスト(人種差別主義)であるだけでなく、重大な越権行為、つまり人事権の専横です」と彼が指摘すると「能力を惜しんでの温情を仇で返して、正義感に逸った短慮を後悔しても金輪際許しません」とQ副部長は荒々しく席を蹴るように退室した。
結果的に悪代官と越後屋の悪巧み、Z副部長はコンプライアンス部長、Q副部長は決済業務部長を目論むクーデターであったが、Z副部長は格下の売買管理部長に横滑りの栄転をし、後ろ盾から切り捨てられたQ副部長は無知で「お飾り」と部長を嘲笑いながら、システム開発を人質に憎悪と妥協を介在とした薄氷の均衡による産物である冷戦を現状維持することになった。
戦後処理として、彼は業務引き継ぎと周辺業務を他部署に押し付ける敗戦処理を熟し、人員不足の店頭デリバティブ担保管理グループにエクイティ業務課から増員され、代わりにPがエクイティ業務課に異動となったが、Pが退職すると騒いだ為、驚いた部長による介入もあり、無事に事を運んだ。
後日譚としてCSAグループの担当者が澱んだ職場を厭い退職し、人員不足による業務継続を危惧した契約管理担当副部長が契約管理課に昇格する直前に早期退職に応募し、担当役員による度重なる慰留も振り切って退職した為、後任の課長が短期間で転々とする異常事態が発生してしまった。
皮肉な話であるが、結局彼は金融機関のビジネス・モデルの矛盾と限界に誰よりも早くに気が付き、警鐘を鳴らし続けたのだが、空気を読まないことで、周囲に警戒され、「狼少年」として阻害され、排斥され続けたが、時代が彼に追い付き、彼の提言は妄言若しくは虚言と言われながら実現されている。
彼はアナリスト及びファイナンシャル・プランナー資格取得に向けて(X常務を介在して)切磋琢磨し合い、金融ビッグバン解禁の際には、英文会計を一緒に勉強し、彼は米国公認会計士をグァムで受検するも挫折し、私は手堅くBATIC(国際会計検定)に切り替え、以降は耳学問に留まるが、ファイナンス大学院ではデリバティブに早々見切りを付けると、コーポレート・ガバナンス(企業統治)に転じ、コンプライアンス(法令順守)の矛盾を指摘し、逸早く行動ファイナンス(現在では行動経済学として認知)を提唱して心理学を受講していた。
彼の強力な庇護者であったX常務が、「言動が突飛過ぎて、周囲が付いて行けない、ホップ・ステップ・ジャンプでなく、いきなりジャンプするので、理解するよりも信頼するしかない」と嘆息し、理解者の皮を被った利用者であったB元常務は、「生まれるのが、二十年早ければルール無用のバトル・ロイヤルの勝者は三羽烏でなくWであり、二十年遅ければ常識として受け入れられる」と驚愕した都市伝説も尤もと頷かざるを得ない。
営業成績が伸び悩んだ私を鼓舞し、傷付き打ちのめされ、辿り着いた境地を吐露した短歌を唐突だが開陳する。
タラレバを
捨ててタイから
マスにする
コトダマ宿る
マスマスカワル
彼は見た目こそ冴えないが、不屈の闘志を持って自分を鼓舞し続けて、弱気な自分を律していた。
カエルべき
周囲でなくて
まず自分
カエル気持ちを
カエルとカワル
実際に彼を一番評価していたのは、Z部長であり、彼が築き上げた企業情報管理部をホールセール管理部に昇格させ、ホールセール部門の中核とし、商品・法人コンプライアンス部、ホールセール人事室、ホールセール法務課等を矢継ぎ早に実行した反面、銀行との不適切な関係、副部長が内部管理責任者であり、複数部署兼任等によるフロントの暴走を制御できないガバナンスの不備は黙殺し、GHQの絶対的な権限により「従順ならざる唯一の先住民」として警戒し、陰に日向に徹底的な弾圧を加え続けた。
一時的な小康状態を取り戻した時機を逃さず、彼は部長面談で持論である金融機関へのデリバティブ証拠金規制の強制適用及び債券管理システムを武器にメガバンクのお荷物化している地域金融機関へ攻勢を提言したが、従来通りの人材不足でグループ子会社との経営統合を最優先せざるを得ないとの回答であったが、転んでも只では起きない彼は、金融法人部の副部長も巻き込んで、関連部署をCSA新システムに関与(責任回避の為、抵抗を受けてユーザーより一段下のオブザーバーとしての資格)させることを皮切りに、Pが悪戦苦闘していた空白地帯となっていた業務を最低限だけ解消させると共に、Pが事前に準備したマニュアルも有効活用することで一矢報いることが出来た。
Q副部長の意向もあり、その後も彼がデリバティブ業務課の一員として遇されることはなかったが、当初の予定通り彼もPの後を追ってエクイティ業務課に異動することになった為、久しぶりにPに連絡すると折り返しメールで返信があった。
【報告】退職に至る経緯
ご無沙汰しています。
先程、お電話を頂きましたが、周囲に人がいた為、水臭い対応で申し訳ありませんでした。
事前にご相談させて頂くべきか悩みましたが、足手纏いになることを避けたいと思い、結局今日に至った訳ですが、水面下で退職する方向で部長と合意しています。
デリバティブ業務課からエクイティ業務課へ異動した際、納得出来ず退職を申し出ましたが、部長の真摯な説得を受けて、その時点では思い止まりましたが、残念ながら部長も業務移管直後の退職を避ける為、空手形を切りましたが、実務担当者、グループ・リーダー、課長、副部長に担がれた傀儡であり、相談しても実効性に乏しく、その場鎬に終始して、板挟みとなって双方の立場を悪化するだけであることを実感した半年でした。
デリバティブ業務課のQ副部長だけは恨んでも恨みきれませんが、エクイティ業務課に関しては構造的な問題であり、個人的には憐みこそあれ、恨みは一切ございません。
皮肉にも業務を引き継がれることが予想されますので、思い込みに基づいた偏見も含まれることを承知の上で参考にして頂ければ、幸いです。
最初に配属されたのが、市場業務グループで銘柄マスター登録、約定訂正、市場外取引及び株式市場全般を担当しており、体系的とは言い難く、木に竹を接ぐような種々雑多な業務を墨守している為、マニュアル等の文書化されておらず、判例法でなく慣習法が併存している混沌としております。
銘柄マスター登録は、各取引所の所報を印刷し、A3の所定用紙に書き写し、所定用紙の内容に基づいて、自席PCで専用OSに入力し、記録ノートに記載して、再鑑を依頼するという一連の流れとなっていますが、笑い話ではありません。
最初にエクセルに入力すれば、その後の無駄な作業を解消出来る上に実効性のあるダブル・チェックになると指摘すれば、「今まで誰でも出来たことを自分が出来ない言い訳をするな」と信じられませんが、物差しで打擲されて、フォルダ整理もツリー構造になっておらず、容量不足でフォルダがエクイティ1とエクイティ2に分離されており、同名ファイルも多数混在しているので、改善を求めると「ショートカットを作成しているので、勝手に変更するな」と罵詈雑言を浴びます。
一律に適用されているのであれば、百歩譲って、歯を食い縛って覚えますが、身内では庇い合い、新参者の失敗は非国民の如く、排斥しますが、副部長、課長、グループ・リーダーは殆ど会議に出席している為、実務担当者に丸投げしており、営業店からの対応も盥回しになっています。
一月足らずで、信用・貸借取引グループに異動となりましたが、貸借取引も外資系からの専門家集団であった為、属人化が蔓延しており、ジャーゴン(職業用語)とオノマトペ(擬音語)及び指示代名詞が多用され、「あれ、エンド前にグルッ(ロールと表現することもあり)とこっちに飛ばしておいて」等の意味不明な指示があり、マニュアル作成を依頼すると、「糞忙しいのに、何が嬉しくて、そんなことする必要があるの」と罵倒され、(日本語の理解が悪いと)語尾には、「アルヨ」と片言で嘲笑されました。
部長の介入で残る外国株式・先物オプショングループを打診されましたが、決済業務部に限らず居場所が無いと判断し、退職に向けて粛々と行動している次第です。
負け惜しみではありませんが、自分の選択に関して一切の後悔はありません。
ご存じの通り、小学生の時に中国の農村部から来日した為、誰よりも自由で明るくて楽しい日本を愛しており、バブル景気の恩恵も受けていないので、現状の停滞には胸を痛めて、「日本人はもっと自信を持って、世界に発信して欲しい」と願って止みません。
「近頃の若い者は」と排斥するのは、古今東西を問わずに何処の社会でも見られる現象ですが、日本では入口を精査し、徹底した品質管理で均一性を維持する成功体験が足枷となり、欧米流の間口を広げて、自主性を重んじて多様性を追求する価値観の転換に適合出来ずに苦しむ過渡期にあり、日本は必ず蘇生すると信じています。
このような考えに至ったのは、法人業務部でWさんとOさんとご一緒に仕事をさせて頂いて、「悪貨が良貨を駆逐する」を実地に経験することが出来、欧米追従ではなく、アジア若しくはオセアニアの大学院への留学準備をしています。
P拝
Pは有給休暇を最大限利用して、退社した為、彼とは殆ど接触の無いまま、Pの希望で送別会も見送られたので、真意は闇の中であったが、以前は裸眼であったが、眼鏡を掛けて、随分窶れていた。
エクイティ業務課に着任後、彼はマニュアル、フォルダ等の状況を確認して、Pの指摘を検証した上で、既に無駄であるとは知りながら、他に方法が無い為、Pの無念を晴らすべく投稿した。
社長への提言(悪貨が良貨を駆逐する)
法人業務部から決済業務部にCSA業務統合により異動しましたが、関連業務が未整備且つ無責任な状態で放置されています。
グループ子会社との経営統合は、規模の拡大を追求するだけでマイナス面が大きい上に駆け込みでの無意味なシステム投資(契約書検索システムは登録が二重の手間であり、費用対効果でマイナス)も横行しています。
面子に拘らずにガラパゴス化している自社システムを放棄し、グループ子会社で利用されている最大手が開発したシステムへの移行も検討すべきです。
人件費の高騰及び重複店舗の統廃合だけでなく、社長も中期経営計画で宣言した本社部門に所属するベテラン社員の営業転換は「現代の姥捨て山」であり、計数管理だけに堕して、叱咤若しくは排除するだけで指導及び育成を含めた本来の役割を放棄したまま高禄を食み続ける管理職の在り方を見直すことが肝要です。
先行きの不透明さによる疑心暗鬼で、階層間の対立が顕著となり、職場環境の悪化も目立っております。
過去に送付した【デリバティブ業務課】及び添付ファイル【退職に至る経緯】と合わせてご検討よろしくお願いいたします。
職務を通してではあったが、彼とO及びPとの邂逅は私にとっても本物であり、突然の事態も局地的な暴風雨の如く過小評価していた私は冷血漢と謗られても致し方ないが、グループ子会社との経営統合に絡む人事制度の調整は銀行を交えた三者会合は銀行本体の合併に伴い地場証券が寄せ集められた為、前時代的な手数料至上主義、採算度外視の小型多店舗経営で恒常的な赤字体質であり、要職は銀行出身者に独占され、無気力且つ一体感に欠けているが、同一労働同一賃金に伴って給与水準の上昇だけでなく、協会健保から単一健保へ変更を伴い、労務費の高騰は明白であり、彼の受け売りであるがファイナンス理論の観点から言及すればグループ子会社の売却がグループ全体の利益であるが、「失敗を認めずに糊塗し続ける銀行体質」の典型例であるが、徒労に終わると確信しながら、四面楚歌の状況下で孤軍奮闘し、心身共に疲弊しており、彼等のことを思い遣る余裕さえ皆無であった。
エクイティ業務課は、副部長が市場部(場立ち)出身の叩き上げであり、株式決済における重鎮であり、三社会(旧四社会)と五社会(含むメガバンク系)及び業界団体(含む地場、ネット専業)や監督官庁や取引所の会合で席を温めることがなく、課長は支店総務出身で経験が浅い為、山一證券の場立ちで、外資系を経て入社した日本株担当グループ・リーダー(以降、日本株GL)を頂点に副リーダー(来年定年予定)を筆頭にして、クラス2(彼女)が1名、クラス1が2名の本社一筋の女性4名であり、Sが業務全般を指揮していた。
会議にも通常は、副部長と課長がニコイチ(二人で一人)で参加しているが、システム関連となると熟知している日本株GLも参加せざるを得ず、副リーダーは「偉い人は会議が仕事だから」と揶揄しており、微妙な雰囲気を感じ取った日本株GLは極力参加せずに融和を図るよう細心の気遣いを見せていた。
日本株GLは業務改善に熱心でOと親しかった為、Pの退社にも心を痛めており、彼の提言に関しても可能な限り、4名にも承諾を得ながら推進していたが、不幸が重なってしまった結果、システム不具合で日本株GLが緊急会議に召集された為、彼女が長期休暇明けに、「ショートカットが反応しない」と騒ぎ、副リーダーが、「月次フォルダに纏めたから、老眼(の私)には有り難いよ」と軽口で言うと彼女は、「勝手なことしないで下さい」と彼に詰め寄り、副リーダーが、「後で日本株GLから説明するから」の忠告も聞く耳を持たず物差しで殴打と言うには脆弱過ぎるので、敢えて言えば只管彼を打擲し続けるのだった。
興奮した彼女を個室に隔離すると、副リーダーが、「業務経験も長く、一番精通しているので、甘えて負担を掛けてしまった」と彼に詫び、「前任者(法人業務部へ異動)が意地悪して、(彼女にだけ)各種変更を連絡しないことも多々あり、敏感になっており、(メール送信等)配慮すべきでした、本当に申し訳ありません」と重ねて陳謝した。
残りの2名も「管理職が会議中に(営業店から)面倒な質問が来るので、(彼女に)丸投げしていた」と「彼女が頼りになるので、結局甘えていました」と各々彼に頭を下げるので、Pの退職に絡む義憤も「罪を憎んで、人を憎まず」と考えると共に構造的な問題に暗澹たる思いが交錯した。
会議終了後、日本株GLは彼女を聴取し、「本社への風当たりが強く、(昇格人事の抑制)焦りでPに対して、辛く当たってしまった」と「今後、(グループ子会社との経営統合)人員増が予想され、彼の(指導・育成)ことも負担に感じていた」と正直に話して、「一緒に仕事をするのは心苦しく、(子会社への)出向を希望している」ことを淡々と伝え、彼としても異存はなかった。
表面的には穏やかに解決し、送別会では、「入社以来、株式専門なので、不安がないと言えば嘘になりますが、新たな挑戦に期待の方が大きいです」と挨拶した彼女の笑顔は憑き物が落ちたように爽やかであり、和やかな雰囲気であったが、管理職の面々はQ副部長に厄介者を押し付けられた苦々しさを噛み締めていたようだが、空気を読めない彼には気付くのは無理であった。
その後も日本株GLとは良好な関係で、銘柄マスター登録業務の改善は今後の課題として、彼は関与せずに立会外分売(買付)や公開買付、ブロックオファー(トレード)とETF買付(解約)等の市場外取引を担当していたが、複雑且つ多岐に跨る為、副リーダーも彼女も補助的な業務に留まっていたが、決済業務だけに特化しており、業務知識が狭いことがボトルネックと判明したので、内部向けFAQ(よくある質問)と関係部署向け回答テンプレートを作成し、反復業務のVBAマクロ及びエクセル関数の利用とヒヤリハット(ハインリッヒの法則)抽出で徹底的に「見える化」を推進した。
些細なことだが、ETF組成で親会社銀行株式の除外忘れ等のミスをエラーメッセージで警告されるようにするだけで、市場外業務は全く関与出来なかったクラス1の2名も戦力となり、日本株GL及び副リーダーの残業時間を削減することが可能となった。
また、約定訂正処理については、精神論で克服するという悪しき習慣である厳罰化により処理が複雑且つ本社による一括処理の為、営業店、決済業務部更に顧客対応も悪影響が及んでいる。
システムの導入に際して、システム統括部が開発者で決済業務部が利用者で要件定義から導入まで推進していることも事務ミス等発生の大きな要因となっている。
これらの問題については、日本株GLも十分理解しているが、決済業務の存在意義に絡むので、銘柄マスター登録業務と同様に棚上げすることで合意した。
一方で、「声の大きい者と長い者には巻かれろ」的な後ろ向きで疲労感だけが漂う業務に関しては、構造的な問題であり、泣き寝入りするしか仕方が無いと日本株GLも諦め気味であったが、彼は相談をして提言することの了解を取り付けた。
社長への提言(泣く子と地頭の弊害)
公開買付及び立会外分売等の関与者及び利益配分は投資銀行本部及び銀行は収益ダブルカウントである為、五月雨の如く追加される一方で事業法人本部及び営業店は収益比率を明確にする為、前者では情報管理の観点で問題があり、後者では情報共有されない非効率が横行しています。
また、所管部署が不明確であり、何の権限も無い決済業務部にゴリ押しされることでも業務遂行に重大な問題となっております。
要因として、東名阪とそれ以外の地域の管轄は異なり、周知徹底されていない弊害が散見されます。
卑近な例ではありますが、ETF在庫を一掃することで、年間数億円の削減効果があったことは事実ですが、費用の削減であり、収益の増大ではありません。
一方でエクイティ部は、特定専門社員が多く、如実にボーナス査定に反映されますが、決済業務部では、月に数回であった残業が、数十回に労働強化が如実に反映しています。
付加価値なく、管理会計上の濡れ手に粟で高給を食むのはモチベーション低下の要因と看過出来ません。
効果を否定しながらも声を上げ続ける彼の性分は、個人的には理解できるが、Z部長及びQ副部長を刺激し、確実に彼を囲繞する包囲網は狭められていた。
彼は良かれと思い、銀行の友好先である飲料会社共催パーティーでカラオケ大会に参加することを部長に打診したが、部署としては協力出来ませんので、業務時間以外で支障の無い範囲で検討して下さいと素っ気ない反応であった。
空気を読むと断念することが、妥当であるのは明白であるが、残念ながら彼は部員全員に案内のメールを送信したが、当然誰一人参加しなかった。
往生際の悪い彼は、同期全員にも案内のメールを送信し、営業店は多忙で無理なのは、当然としても本社も当日及び練習に参加出来る者は限られ、数人しか(因みに私も上司に相談したが、一蹴されてしまった)に参加の意向は示されなかった。
断念の案内を数人の同期に連絡すると同僚に声を掛けてくれ、勇気付けられた彼は、ブラインド・サッカーのボランティア繋がりで経営企画部(X常務担当)CSR室及びボランティア参加者で参加人数に達することが出来ただけでなく、ブラインド・サッカー公式「ブラサカジャパン」ロゴ入りTシャツを全員着用し、日本代表メンバーのサインボールを鈴の音にTOKYO2020や当社及び飲料会社名を人文字で表現し、CSR室長の手話で「世界の国からこんにちは」を熱唱し、参加者には概ね好評であったが、自己宣伝以外の何物でもないと物議を醸したことも事実である。
グループ子会社との経営統合が実施され、英文を読むことが出来る彼は、外国株グループに異動になるが、その際に日本株GLからの忠告として、決済業務部の複雑な事情、具体的には生え抜きである投資信託業務課及び業務管理課の課長及びエクイティ業務課の担当副部長は、バック部門として安定雇用を重視しており、金融市場業務課(債券)及び外国証券決済課の課長及びデリバティブ業務課長兼任のQ副部長と懐刀であるRは、所謂「黒目のガイジン」出身者であり、ミドル部門に進出し、特定専門職としての高収入とシステム刷新による利権を目論んでおり、好条件の出向先を獲得したい親会社である銀行と共謀して揺さぶりを掛け続けており、外国株担当グループ・リーダー(以降、外国株GL)は後者の急先鋒であり、要注意人物であると教えてくれた。
有り難い忠告であったが、実際には彼に出来ることは限定されており、副リーダーも存在せず、外国株GLの意向を忠実に熟すクラス1が2名だけであり、外国株だけでなく、先物オプションも担当しており、挙句の果てに新規公開(IPO)及び公募・売り出し(PO)も担当しており、外国株GLも所謂「黒目のガイジン」としての専門分野であり、引受業務部等の関連部署と結託して、属人対応を先鋭化させて、典型的な帝国建設若しくは塹壕効果を発揮し、外国株及び先物オプションもエクイティ部等の関連部署とRを巻き込んで、システム開発を牛耳って管理職も不可侵の領域を築き上げていた。
業務継続性に疑義を感じ、具体例を指摘すると外国株GLは口頭で引き継ぎも「一回しか説明しません」と言ったきり、その後彼に「メ×ラ」や「ツ×ボ」及び「モ×ロク」と罵倒したので、管理職に報告したが、外国株GLに反旗を翻されると業務が滞る為、介入を拒否したので、部長自らが調査することになったが、外国株GLは「目が悪い」や「耳が遠い」及び「記憶力が低下」と虚偽の説明を鵜呑みにした調査結果を報告した。
当然、彼は猛反発をして、社内での問題解決は無理であると悟り、過去の経緯も含め、洗い浚い親会社グループの内部告発窓口に連絡した。
銀行内にも情報網を張り巡らすZ部長は、逸早く察知し、万全を期して講じた対策の一環として彼への圧力をQ副部長に一任したことが、以前であれば何ら問題も無かったのだが、皮肉なことに彼が提唱する内部統制に対する時代の要請によって、「策士、策に溺れる」結果となった。
彼の抵抗により、部長昇格の機会とシステ変更による基盤強化の野望を台無しにされた為、憎悪の塊となっており、M副部長が更迭された当時の論法で彼を罵倒した結果、親会社グループの内部告発担当も把握することになり、恣意的な人事異動だけでなく、機微情報の漏洩も含めて重大な問題とし取り上げられることになった。
窮地に追い込まれたZ部長による一世一代の大芝居に疑いを持たずに食い付いてしまったのが私であり、X常務の助言を仰がず、彼との連絡も断絶していた為、決済業務部での彼の位置付けも理解せず、欺瞞に満ちた奸計の片棒を担いでしまったことは、返す返す痛恨の極みである。
Q副部長から私にグループ子会社との経営統合及びPの退職に追い込んだ彼を最低評価が妥当であると説明させた後、Z部長は私のグループ子会社との経営統合での役割を称賛し、警戒を緩めた私に秘密を打ち明けるように所謂「黒目のガイジン」が跋扈しているホールセール部門を親会社銀行主導に取り戻す為、彼を異動させることを切り出した。
常々ホールセール偏重の金融業界の変革を訴えており、彼のリテール志向が強いことを理解していたので、確認するとシンクタンク側に彼への拒否反応が大きいこととパブリック部門よりもプライベート部門の情報量は充実しており、法人関係情報を制限すれば共有可能であり、裾野拡大も期待していると理路整然と説明した。
冷静に考えれば、シンクタンクで彼と対峙した当事者は一掃されており、怨恨が残る筈もなく、彼との関係が先鋭化しているのは、所謂「黒目のガイジン」であり、単身敵地に送り込む罠と判断されても仕方がない。
最低評価による減俸と次年度には降格対象となるにも関わらず、私の説明に何ら異論を唱えず、従容として産業調査部への異動と親会社グループへの内部告発を取り下げた。
言い訳がましいことを敢えて承知で言わせて貰うが、この時点ではZ部長の深謀遠慮に気付く筈もなく、有り難い申し出に対して、納得の上で説得したのであって、彼の追い落としに加担する心算は毛頭なかった。
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