第2話 二席の会合

七年前、私に対する経営企画部へ異動する辞令が出た際に一番槍で連絡があったのは彼で、引き継ぎや歓送迎会の日程が埋まるのを見越して、「今晩、適当なところで切り上げて一緒に飲もう」と誘ってくれた。


親の七光りと周囲から見られることを懸念していた私に、「言いたい奴には言わせておけば良い、間違いなく適性がある」と慰めてくれた彼を心強く感じ感謝していた。


老婆心から日頃から感じていた彼が組織や上司を度々批判することに対し、「職責の範囲で全力を尽くすべきで、時間と労力を無駄にすべきではない」と私が助言すると、「倹約と忠誠は美徳であるが、度が過ぎると不況と全体主義だ」と彼は不機嫌に答えた。


「内部通報する前に、直接本人と話し合うのが筋で卑怯ではないか」と反論すると、「闇討ちのような卑怯な真似をせず、事前に本人と話しているからこそ、人事面で報復を受けているのが実情だ」と静かに答えた。


「内部通報制度なんてA常務のお手盛りで天に唾を吐くようなものだ」と私が食い下がると、「あれだけ熱望していた経営企画部の存在を否定するのか」と彼は冷やかに問い返してきた。


「本社はA常務、リテールはB常務、プライベートバンクはC常務の専横により、会社が停滞して有為な人材が流出していると提言しても敵を作るだけの自己満足だ」と当たり前過ぎて中身のない反論を試みた。


「王様が裸であれば、恥ずかしい思いをするので誰かが教えてあげるべきだが、王様の耳がロバの耳であったとしても、遺伝の問題であり、本人の努力ではどうにもならないので、個性として尊重して黙っているべきだ」と彼は淡々と答えた。


「皆が心配している」私の発言に対して、「X課長(後述)の差し金か」彼は一言だけであり、「X執行役(彼にとっては永遠に課長であるようだ)も含めて」と言い澱んだ私を悲しそうな眼差しで一瞥し、「辞令が出ただけなのに、同窓の情実か」と問われると「それは関係ない、個人的な関心で調べていたんだ」と答えた。


「一応は事情を聴いているようだが、配属後に詳細を調査してから、もう一度議論する方が建設的だ」との発言を潮に本来の趣旨に立ち返り、改めて楽しい酒を酌み交わして別れた。


配属後、X執行役に会合内容を報告し、彼からの内部通報を過去に遡って調査することの承認を依頼すると「彼を(友人として)色眼鏡を掛けて判断するのではなく、客観的且つ徹底的に調査して見透かされない準備が出来るのであれば、三人で腹を割って話そう」と言質を得ることが出来た。


過去分を精読して、判別するのには数週間を要したが、殆どはパワーハラスメントであり、親会社銀行傘下となり、社会の状況も変化した現状では考えられないことが横行していていたことが、実体験を踏まえて同調出来るものばかりである。


例を挙げると、成績が思わしくない者の椅子を取り上げ直立不動で電話を掛けさせ、「一階でスカート穿いて(二階が男性中心の営業課であり、一階は女性中心の投資相談課であった)営業して来い」更には、上司が配偶者に「成績低迷で課の足を引っ張っているので、何とかするように発破を掛けるか、適性がないので職業変えるように言ってやって下さい」と電話をするような例もあり、事務ミスに対して100ページ超のマニュアルを書写させる日勤教育も真っ青な手口も多数見られた。


不思議なことにその全てが彼に向けられたものでなく、同僚若しくは後輩等弱い立場にある者に対する行為であり、本人が受け入れていることを内部通報する必要があるのか疑問にさえ感じた。


次に目立つのが経費及び残業時間の不正であり、彼が名古屋支店にいた際に電話で話していたことと重複していたが、改めて感覚が現在とは異なることを痛感した。


対象者がX執行役(当時は課長)であり、これに関しては当時の慣習から言えば特に悪辣な場合ではないことを予め付言させて頂くが、当初は月間成績で残業時間を割り振っていたようであるが、二年目にも入ると新人課長として出費も多く、飲み代を捻出するのが困難となってきたのか赤紙と称して、新人が接待する代わりに交通費の水増しや残業代を黙認するという制度があったようだ。


当時はバブル崩壊後も証券マンの金銭感覚は麻痺しており、私の上司であった課長(現在は支店総務課長)に至っては、課会も割り勘で徴収した上で自分だけ領収書を切って、実質二重取りしていた下衆だったので、牧歌的な時代であったと妙な郷愁さえ感じてしまった。


更に二人を弁護させて貰えば、集中配属で無い場合はもっと悲惨であり、先輩に麻雀で鴨にされ、給料やボーナスが右から左に充当され、連日の飲み代で首が回らなくなる場合や当時は借受けや前受けといって現金の授受の機会があったので、不正を働いてしまうことさえ日常茶飯事で存在していた。


そのような環境の中で「強盗と殺人以外であれば何をやっても数字を上げたものが正義である」や「数字が人格である」といった論理が罷り通っていたのも事実である。


恥ずかしい話であるが、前述の類例が大多数を占めており、それらを排除すると五例だけが目を引いたので彼の文章をそのまま引用する。


名古屋支店では変額年金の販売に先行して各課に一人と管理職のみが変額販売資格を先行取得しましたが、管理職が同行訪問したという体裁で資格未取得者にも過大な販売予算を掲げ、申込用紙に資格者が後から押印するだけの形骸化した販売が横行して保険者及び被保険者との面談や自筆記入(同一筆跡及び遠隔地居住者等)が疑わしい例が散見されます。募集状況を確認すると全社的に黙認されていると思われます。(1)


公益法人等の開拓とIPO(新規公開株)に関して他社競合もあり、一概に否定するわけではありませんが、担当者等(公益法人の場合は関係省庁からの天下り、学校法人及び宗教法人は銀行出身者)への過度な配分例が散見されますが、市場の公平性を歪めるだけでなく、背任行為を教唆していると懸念します。勉強会や運用規程作成等を全社的に強化することで信頼を得る地道な営業姿勢が必要と考えます。(2)


大阪府下の支店に配属され、養老院が住所となるご夫婦の口座を引き継ぎましたが、「電話で話している限り理解力が懸念されますが、四半期ごとに継続的に投資信託の乗り換え販売を実施しています。課長に親族との同席が必要と思われます」と進言しましたが、「いらんことするな、しょうもないこと言うなら予算免除も(配属後三か月が通例)取り消すぞ」と脅されています。(3)


シンクタンクに海外留学生のインターンを受け入れていますが、卒業後三年間に亘り正社員ではなく、低賃金の雇用契約としています。本人に確認すると「社員を希望しているのですが、その場合は支店に配属される可能性が高いと言われているので、仕方がありません」と言っていますが、事実ではないと思われます。経費削減を前面に押し出している一方で、社長、常務及び部長で昨年度は二週間の米国出張、本年度は欧州出張をしておりますが、出張報告や成果物が還元されていないだけでなく、訪問先も日本法人が存在していたり、本社所在地であるボストンでなく、出張所であるミラノでオペラを見たりとお手盛り出張になっております。実務担当者を出張させる方が有為且つ士気の向上に繋がると思われます。(4)


売買手数料中心の収益構造と単独担当制度(による引き継ぎ)が最大の問題であり、「お客様より上司様」が顕著となっています。ヘッジファンドのベンチマークによるハイウォーターマーク制度を採用して顧客収益と利益相反を生じない収益構造を構築すべきと考えます。(5)


この五例を持参してX執行役に報告すると「思ったより少し時間は掛かったけど初回にしては上出来、上出来」とご機嫌の様子であり、「もう一例は現在進行中なので、Wと三人で話そう」と提案されたので、「こちらに呼びましょうか」と答えると「あんまり公にしたくないし、Wとも久しぶりなので飲みながらにしよう」と彼に電話を一本入れて手早く決めてしまった。


会談は当日業務終了後に行われたが、当然の如く旧交を温めるといった悠長なものではなく、緊張感が空気に漂っている環境下であった。


X執行役が「察しの良いWなので、こうして三人が首を揃えて集合する意味は十分理解しているだろう」と口火を切ると「内部通報の件ですか、殆どは無視されている状況ですが巌を穿つように記録し続ける必要があると思っています」と彼が答えた。


「勘違いと誤解があるようなので、それから説明するが、内部通報制度はご存じの通り経営企画部が窓口となって関係各部署に対応を依頼する方法が採用されているが、その為に従事している者は存在しないので、多忙な業務を熟しながら時間調整しながら対応している。それで対応が遅れていることは否めないが決して無視している訳ではない」とX執行役は語気を強めて言い放った。


 「持参した書類を用意しろ」と私に指示したので、まずは五例の書類をX執行役に手渡した。


 「具体的に言えば、この五例以外に関しては、はっきり言ってお互いにとって時間の無駄であり、Wの好きな貴賤に関係なく一日二十四時間は最大の制約条件なので時間泥棒が最も罪深いに矛盾する行為ではないか」とX執行役が理路整然と機先を制して、彼の土俵では戦わないことを宣言した。


 個別例に対する議論を以下の通りであるが()内は、過去に私が彼と話した内容の補足であり、営業に関しては全く報われることがなかった個人的な鬱憤が大いに含まれることは否めない。


 (1)「変額年金販売の販売について」は当事者として聴取に応じたが、問題を拡大させることは出来なかったので、無資格販売は否定せざるを得なかったが、不適切販売は全社的に実施されていたと認め、彼も無資格販売の問題を今更掘り返すことは会社にとっても望ましくないことは納得したようだった。(実際に問題化したのは、数年経ってからだったので、当事者の殆どが異動しており、調査が難航して有耶無耶となってしまったのだが、私の周囲でも取扱開始日以前の書類公布や電話と郵送のみで販売、代筆は当たり前のように行われており、組織的な問題として営業方針が改善されるべき機会であったが、個人的な問題として矮小化されてしまったことが残念で仕方がない)


 (2)「公益法人等の開拓について」は内部通報以前にX執行役は完全に同意して、その方針を採用した結果、安易な開拓と販売を採用しなかったので、盤石な顧客基盤を築く一因となり、大変感謝している。(彼は「初めに仕組債ありき」型の営業とは一線を画して、その当時に産声を上げたファイナンシャル・プランナー資格取得を担当者に提案、運用規程を作成することで個人的な責任ではなく組織的な関与体制を構築の助言、金利収入の要求額と金利水準の見通しを欠かさなかったので、異動によってその恩恵を被ることは僅かであったが、その後、外資系証券の直接販売による手数料の削減圧力やリーマン・ショックで巨額損失が発生し、実際に処分される者も複数出たが彼の周辺は無風状態であった。抑々日本のIPOの価格形成は長期的な成長でなく、創業者利益の実現が最優先されて、一時的な加熱による「初値天井」の後、「成長率の鈍化」若しくは「下方修正」最悪の場合には「不祥事の発覚」という事態もあり、投資家の離反という悪循環に陥っており市場全体の課題である)


(3)「高齢者夫婦の投資信託乗り換え販売について」は晴天の霹靂であり、彼の暴発を後から聞いてその処遇に関しては、重大な規律違反であり、処分せざるを得ないとの立場を強調し、ロッカーを蹴ったが身体への攻撃はないことだけ彼も弁解していたが、概ね受け入れているようだった。(彼の原点は新人の時に休眠口座の顧客を訪問後した際、認知症であったことをある先輩に落胆して伝えたところ「涎が出るような美味しい話じゃないか」と思いもしなかった反応に衝撃を受けて、X執行役と相談した結果、家族の関与という当時は珍しかった代理人制度を率先して推進していたので、上司の対応が衝撃的であり、許せなかったと思われる。彼にとって最大の試練であり、余波は仕事以外にも波及したがこの点に関しては個人的な感想は控えたい)


(4)「海外留学生(親会社に正式採用され、シンクタンクでの経験及び語学力を活かして活躍中)の雇用及び海外出張について」は人事部も介入して正社員として採用され、出張に関しても担当者としての部長は正当とされたが、社長(実質、引責辞任)と常務(参与への降格)は処分が実施されたことが説明された。(優秀な人材を活用する意識が低い体質は早期退職を実施すると優秀な社員から去り、外資を経験し特定専門職として高収入の出戻り組として再雇用される悪循環と、最大手証券の子会社戦略は親会社以外にも販路を拡大しているのに対し、当社では親会社への依存が顕著で活動が制限されており、高水準の業務を求めると外部にしか選択肢のない矛盾が非常に残念であり、この差異については、戦略に基づいて主体的に検討した結果と横並び意識だけで戦略を持たないまま肥大化した悲劇の結果と考える)


(5)「売買手数料中心の収益構造について」はWとB常務を急接近させたが、結局は換骨奪胎されて喧嘩別れとなった。(私も営業で一番苦悩した議論であり、お客様から「そんなに儲かるなら、お金貸すのでYさんが自分で買えば良い」と言われることが最大の恐怖であり、買って頂けた場合にも手数料の分だけ負けていることだけが確実であり、良心の呵責に苛まれたものである。その後、彼がシンクタンクに出向してファイナンス理論を学習すると、当初は現代ポートフォリオ理論、デリバティブや行動ファイナンスについて熱く語っていたのだが、途中からはコーポレート・ガバナンスに軸を移動した過程を鮮明に覚えている。当時から現在に至るまで、コンプライアンス(法令順守)の名の元に処分される社員が後を絶たないが、彼の言葉を借りれば「コンプライアンスでは机の上に拳銃が無造作に置いてあって、警告も無しに自己責任原則に従って処分されるのに対して、ガバナンスでは危険を伴う拳銃は厳重に保管され、管理職に利用を申請し、内部管理責任者に是非の判断を委ね、部室店長が最終的に許可するので、誰も不幸にならなくて済む」という信念を持っているようだ。蛇足であるが、それまではX執行役に相談していたが、同窓であるB常務に直接談判したことで(X執行役は公益法人部の成功で脚光を浴びたとのだが、言葉は悪いがそれを手土産に営業経験のないA常務の弱点を補完する形で急激に接近して、今の立場を確立したのであった)関係悪化の原因となり、本来の趣旨である長期分散投資が歪められ、原商品(株式及び債券)から投資信託へ誘導するお題目として利用される結果に終わってしまった)


「その五例だけでなく、何度も繰り返している二例だけは忘れないで下さい」と彼が食い下がったのは、研修受講の不正と個人携帯電話若しくは訪問での約定であり、前者は定期的に実施される全社的な研修受講時に酷い例になると総務課長若しくは内部管理責任者が正解例を事前に配布する等の組織包みでの不正が横行していることであり、後者は会社電話及び業務用貸与携帯電話は会話が録音されるので、意に反して約定をそれ以外の方法を利用するのでなく、正々堂々と自分自身を守る為に活用すべきとの指摘であった。


X執行役にとって、追加の二例は些細な例であるようであったが、彼は「神は細部に宿る」と一歩も譲らなかったので、「コンプライアンス統括部に改善を求めていく」との回答を引き出した。(この問題については、私も彼と同じ考えであり、受講時間が極端に短いことが指摘されると会議等による不在時に流すだけ等「いたちごっこ」の状態であり、根本から考えを改める必要があると考える)


事前に用意した五例及び彼が固執した二例についての議論は、彼だけでなく私に対しても彼とX執行役の関係性を時系列で説明する意味を含めていたことに感謝すると同時にこの時点では、彼らの絆を羨ましくさえ感じていた。


しかし、X執行役にとって会合を開催する真の趣旨は私には事前共有していなかった現在進行中の内部通報にあったようであり、「企業情報部についての内部通報について詳細な説明をしてくれ」の一言で過去の議題は事実上の収束宣告であった。


彼の所属する企業情報部は単純に言えばM&A業務を取り扱う部署であるが、当社に関しては沿革が特殊なので説明すると抑々法人に弱い当社は山一證券が自主廃業をした際、部単位で移籍してきた異色の外人部隊であり、特殊装具大手と家電大手の案件でトラブルになり、当時の上司を失脚させて後釜に座ったD常務であり、治外法権を持った独立国のような存在であり、パンドラの箱であったにも関わらず、腫物に触るかの如く放置されたままであり、銀行系子会社となったからには現状の「野生の王国」のままでは管理責任を問われかねないので、彼に露払いをさせようということのようだ。


(問題点)は彼の指摘であり、(具体例)は非公式ながら複数の関係者から聴取した結果であるが、私怨によるバイアスが含まれている可能性もあり、(解決策)は実際に実施された組織改革で整理すると以下の通りである。更に、それぞれの最後()内に私の見解を追記した。


(問題点1)


情報管理が個人情報及び案件情報共に全くされておらず、秘密情報が垂れ流しのままになっている。


(具体例1)


D常務、E部長を筆頭に個人フォルダがアクセス制限されていない為、人事情報等が発表前に漏洩する事案が発生、また案件フォルダも同様の状態であり、機密情報が誰でも閲覧状態になっているだけでなく、案件名も「地域名+カーディーラー」や「地域名+ドラッグストア」等の安易に内容を想起させる名称が散見される。(D常務の人事情報は公然の秘密であり、直談判する者、転職する者と悲喜交々であり、前述の案件は胸先三寸で担当者が割り振られるので多くの愛憎劇を生み出したようだ)


(対応策1)


アクセス権管理ポリシーを作成し、内部管理責任者等が一元管理を実施する。(案件管理システムが刷新され、フォルダに関してもアクセス権管理ポリシーが作成され、既存の案件に関しても稼働中であれば、移行することとなった陣頭指揮を執ったのは勿論彼であった)


(問題点2)


内部管理責任者もプレイヤー兼任であり、評価を考慮するとガバナンスが全く機能しない状況である。


(具定例2)


F課長はTOB(株式公開買付)の専門家であり、当社の数少ない得意分野である為、優先順位が高くなっており、内部管理責任者としての業務時間は皆無と言っても過言ではない。(F課長に内部管理業務を依頼すると「ネグ(無視する)っとけ」が口癖で、「問題があればE部長に相談してくれ」で済ませられてしまうのが関の山であった)


(対応策2)


BS(貸借対照表)だけで事足りる債券、PL(損益計算書)も必要な株式、と違ってM&Aは契約の束である会社全般の知識が必要な為、専門知識と高い独立性を保有する内部管理責任者が不可欠である。(F課長はコンサル業務を統括する業務課長(その後、業務部長)となり、管理室長(その後、管理部長は親会社銀行から管理職を受け入れて管理体制は刷新された)


(問題点3)


管理職もプレイヤー兼任であり、評価は見掛け上の数字だけであり、コンプライアンスは勿論、労務管理及び経費管理が殆ど機能しない状況である。


(具体例3)


全課長が収益第一で全国各地を飛び回っている為、管理業務全般をE部長が一人で面倒を見ている状況であり、D常務のお気に入りは好き放題(繁華街のある地方支店への出張及び豪遊)し、そうでない者は深夜残業代稼ぎに邁進する悪循環となっており、彼が毎度指摘する研修受講時の不正及び個人携帯電話の使用(プライベート・サイドであり、録音対象外にも関わらず)は、「リテール以外に必要なし」と強弁し、是正する姿勢も全く見られない。(具体例2で指摘した通り、問題が顕在化するとE部長が火消に奔走するが、基本的にはお咎めなしだったので、やり放題であり、繁華街のある支店持ちの経費若しくは有力なクライアントからの接待であり、地方支店出張の主要な目的はマイル稼ぎと出張旅費だったようだ)


(対応策3)


業務管理及び人材育成を中心業務と位置付け、ビジネスジャッジに特化し、コンプライアンスは内部管理責任者に委任する。(管理体制が強化された結果、既存のメンバーは社内外に流出し、銀行出身者及び中途採用者が主流の陣容となっていった)


(問題4)


契約書管理が法務部の管轄外とされているので、管理番号によって保管されているだけで内容に関しては殆ど考慮されていない状況である。


(具体例4)


締結日付順に番号で管理されているが、顧客要請で重要な一文が削除されたり、先方雛形を受け入れたりしているが、D常務御用達の法律事務所に全て相談しているとされているので問題ないと前任者とは引き継ぎをしていたが、実際に弁護士に確認すると包括契約ではなく、顧問契約のみであることが判明して、更に驚いたことに個人契約を締結している例が契約書でなく、案件ファイルにて1名(二件)把握出来た為、F課長に確認するとE部長から「手違いだったので忘れてくれ」と言われ、お互いに不信感が増幅される結果となってしまった。(個人契約を締結した担当者はK常務から寵愛されていたが、支店への異動辞令が出ると出張先から戻らず、そのまま一度も出社しないまま書類を郵送だけで自己都合で退職してしまった)


(対応策4)


法律事務所に雛形の作成を依頼し、想定問答集と変更に関しても担当者レベル、管理職レベル(内部管理責任者以上に関しては会議開催要)等のルールを明確化し、マニュアルにも記載する。(彼が主導で全面採用されたが、法律事務所だけは親会社銀行が懇意にしている先が選定された)


(問題5)


反社会的勢力に該当しないことを確認する手続きも口座未開設の場合は機能せず、重要情報取得の手続き、利益相反管理も考慮されていない状況である。


(具体例5)


F課長及びE部長の見解は、口座開設だけなので、反社会勢力でないことの確認も必須でない、重要情報の取得は担当者がプロ意識を持って行動しており、不動産売買同様に双方代理に関しても禁止されていないので、収益悪化要因であり、到底受け入れられないであり、この結果が内部通報に直結した。(関係部署もその見解を踏襲すると思われたが、親会社銀行からの明確な拒否反応によって、それぞれ主管部署に新規業務が割り振られることとなり、利益相反管理は新設部署によって実施され、図示して申請が必須となった)


(解決策5)


具体例5と重複の為、割愛。


真剣な表情で彼の説明を聞いていたX執行役は「詳細な報告をありがとう。場合によっては関与することでも考えていたが、思っていたよりも根が深く、返り血を浴びる可能性が高いので、社内調査等で時間を無駄にするよりも、包み隠さずに親会社銀行に報告して調査を依頼しよう」と搾り出して、「不満はあるかも知れないが、結論を言えば当社にはホールセールのノウハウは無いので、深入りはするなとだけ、助言しておく」と言って、気詰まりな現在進行中の内部告発に関する議論は終了となり、雑談に終始したが、X執行役は彼に対して過去の反省を踏まえて自重すること、何かあれば私と相談することを念押ししており、彼の「権力必腐」に対する造語である「魅力不腐」は、「お前らしい面白い考え方なので、参考にさせて頂く」と一笑に付しながらも、返す刀で「昔も今も現在の立場を第一に考えて行動するので、W(彼)よりもY(私)が大事であることを忘れるな」と強調しながらも、微笑ましい師弟愛が伝わってきて感動的でさえあった。因みに彼とB常務が同窓であり、前述の通り私とX執行役は同窓であり、B常務とX執行役は新人時代の先輩後輩であり、一般的に流布されている彼とX執行役の確執という噂は真実でないと確信した。


一番印象に残ったのは、名古屋支店営業第五課(新人課)の五箇条であり、彼らに勝てなかった理由が明確になったので、以下に記載する。


一、我々はプロの証券マン、金融マンである


二、証券営業は知的格闘技であり、常に感度の高いアンテナで、最新情報と知識を入手し、自己研鑽すること


三、問い合わせはチャンスである、誠意を持って応対を


四、お客様の為にTAKE=GIVE×GIVE


五、預かり資産は信頼資産

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