第15話 猫シャン
「ユーコ、なにしてるにゃ?」
用を足し終えてトイレから出てくると通りかかったミャムにそんな事を尋ねられた、え?女の子にそんなことを言わせる?プレイか何かですか?
「え、えっと、おしっこをしてたんだよ。」
「にゃ?おしっこは外でしないと縄張りがわからないにゃ」
ぬぅ、また説明から始めないとならないのか…
「えっとね、私たち人間はおしっこの匂いとかで縄張りを主張したりしないの、だから外でするより安全な小屋とかの中でするんだよ」
「家の中ですると家が臭くなるにゃ!」
「臭くならないように特製の砂を敷いてるから大丈夫だよ」
「臭くならないにゃ?」
いうが早いかミャムは私の横をすり抜けトイレの中へ入っていった、人が入ったトイレを嗅ぎに行くのは本当にやめてほしい。
「ほんとにゃ、ちょっと匂いはするけどそこまで臭くないにゃ!」
換気用に作るときに何カ所か隙間を開けてもらっているがやはりそのくらいでは匂いは消しきれないらしい、一応固まった猫砂はスキルで生成したナイロン袋の中に入れて先日教わったアイテムボックスの中に捨てているが、まぁ相手は獣人だしね…
「早速してみるにゃ!」
そう言うとバッとスカートのように巻いている布をあげると猫トイレにかがみこんだ、今まで外でやっていたしおしりも体毛でおおわれているから恥ずかしくはないのかもしれないけど、せめてそういうのは私がちゃんと外に出てからやってほしい。
「にゃ~、安全かどうかはよくわからにゃいけど、砂が散らかったにゃ」
あ~、あれ普通の猫用のトイレだもんね、なるべく大きめの物を選んだんだけど人間サイズの獣人が砂かけしたら散らばっちゃうよね…後でほかのトイレにも箒とか置いとこうかな。
「後で片づけておくよ、この特性の砂は匂いを吸ってくれるから容器の横についている道具で軽く砂をかぶせるくらいで十分だよ」
「う~、次は気を付けるにゃ」
猫は臆病な性格の子が多いから慣れればトイレも気に入ってもらえると思うけど、まぁ強制するようなものでもないし、ちょっとづつ慣れていってもらえばいいかな。
「そういえばミャムはこんな朝早くどうしたの?」
「あ、そうにゃ、小屋に行ってもいなかったからユーコを探してたにゃ!ユーコ、この前食べたお魚がまた食べたいにゃ!」
まさかの朝ごはんの催促だったか…やはり猫はマイペースだな、まぁそんなところも猫のいいところだけどね。
「わかった、すぐに用意するから私の小屋にニャミナも呼んでおいて」
「わかったにゃ!すぐ呼んでくるにゃ!」
そう言い残しすごい速さで走り去っていった。
とりあえず川で手を洗ってこないと…あ、ミャム手を洗ってない…小屋の水がめで洗ってもらうか。
川で手を洗うとお皿替わりに使っている大きな葉に猫缶をもりもりと出してゆく、その横に果物も添えた、おまけにカリカリもちょっとだけ盛っておく、猫缶は缶が危ないけどこれが気に入りそうなら袋を渡しておいてお腹がすいたら食べてもらえばいい。
一通り盛り付け終えるとアイテムボックスに収納して自分の小屋へと戻る。
「おまたせ~、っとミャム表の水がめで手を洗ってきて、おしっこした後手を洗ってないでしょ」
「にゃ~?」
「はい、そこ首をかしげない!もしかして手を洗ったことないの?」
「ないにゃ!濡れるのは嫌いにゃ!」
「え!ちょっと待って!もしかして体も!?」
「毛づくろいしているからきれいなもんだにゃ!」
聞き逃せないことを言ったのでミャムに近寄り首のあたりを確認する。
「ぎゃあ!ノミがいる!朝ごはんはお預け!川で水浴びをしてもらいます!」
「にゃあ!嫌にゃ!水浴びは嫌いにゃ!」「水浴び嫌にゃ!」
「水浴びしないとご飯抜き!他の子たちにノミが移ったらどうするの!」
「ぐぬぬ、ご飯抜きは嫌にゃ…」「しかたないにゃ…」
二人とも苦虫を嚙み潰したような顔でしぶしぶと了承した、そんなにいやか?
場所を村の裏手の小川に移し、ズボンを脱いで馬用合羽を羽織る、その間に二人はスポーンと服を脱ぎ一糸まとわぬ姿となった、まぁ、体毛があるので肌は一切見えないけどね。
「はい、まずは水に入って!奥まで水を含ませるよ」
「うにゅ~、水に浸かるとぞわぞわするにゃ」「にゃ~…」
文句を言いながらも猫缶を食べたいがためか大人しく川の中ほどで膝立ちになって肩まで水に浸かっている、さすが獣人といったところだろうか、普通の人だったら流れのあるところで膝立ちでいるのって結構きついんだけどね。
「はーい、頭から水かけるから耳をギュッとして」
頭も洗わないといけないので生成した犬のエサ入れを手桶代わりに水をかけていく、耳に水が入らないようにギューっとおさえている手にすごく力が入っているのが見ているだけでもわかる。
「それじゃあ浅いところでシャンプーをするよ」
「にゃ!これで終わりじゃないのかにゃ!?」「これ以上何するにゃ!?」
浅い所へ移動すると怯えているのか尻尾が股下を通ってお腹のほうへ来てしまっている、ちょっとかわいそうな気にもなるけど身体はきれいにしないと。
「このお薬は体についた虫を落とすことができるからこれでまずは汚れと虫を落としていくよ」
ノミとり用のシャンプーを使って頭から洗っていくやはり汚れがひどいのか泡が立たず顔だけで3回程洗うことになった、顔を洗っている間ずっと尻尾は丸まったままだったが、顔さえ洗ってしまえば自分の体をこするくらいはできるだろう、さすがに自分と同じ大きさの猫の全身を洗うのを一人でやってたら何時間かかるかわからない、自分でできることは自分でやってもらわないと、毎回私が洗うっていうのも難しいしね。
「はい、次は体を洗っていくよ、はいこうやって薬をかけて、ゴシゴシと爪を立てずに体をこする、背中のほうは私がやるから前は自分でこすってね、早くご飯を食べたかったら言う通りにした方がいいよ」
「うにゃ~、こうかにゃ?」
二人とも私がやっていることを見よう見まねで身体をこすり始めたやはり最初は泡立たないが二度目になると毛量が多いこともありもこもこの泡ダルマになっていく。
「にゃ~!なんかもこもこになってきたにゃ!」「にゃ!…にゃ!」
自分の体から出てくるシャボン玉が気になるのかニャミナはシャドーボクシングみたいに泡を躱し猫パンチを叩き込んでいく、ただ激しく動くとその動きに応じてシャボン玉が出てくるわけで…
「「にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!」」
二人してものすごい速さで動くものだから川面がどんどんと泡で埋め尽くされていく、なんというか天然の洗濯機みたいだな…
結局再度顔まで泡だらけとなってしまったので、もう川に潜って泡を落としてもらった。
仕上げにコンディショナーで仕上げる、これで終わったと思っていたのか二人にはものすごく嫌な顔をされたけど。
「これで終わりだから、これで洗うと体の毛がすっごくきれいになるから、ふわふわのサラサラだよ、あ、昨日一緒にいたコリス族の子もこれで洗ってあげたんだよ、ふわふわだったでしょ」
「ふわふわで赤ちゃんみたいだったにゃ!」「ふわふわにゃ」
少し二人の目つきが変わった、やはり髪は女の命ともいう、この二人も体毛がきれいになるというのであればもう少し我慢をするのもやぶさかではないと思ったのだろう。
そのあとは順調にコンディショナーのすすぎまで終えることができた、すすいだ直後は濡れ鼠というか濡れ猫というか毛がペタンとしていてスレンダーな体系だけどすごく引き締まった体であるのが確認できた。
本当はこの後ドライヤーでもかけられればさらにふわふわになるのだろうけど、ここには電気も何もないからペット用の物が作れたとしてもどうにもならない。
二人は身体を振るった後、私が生成したペット用のタオルで全身を拭いている、バスタオルくらいの大きなものが作れればよかったんだけど無理だった、よくお世話になっているお馬様用もよく考えると皆普通の人間用のタオルで拭いていたように思える。
「ホントにふわふわになったにゃ!」「毛が絡まないにゃ!すごいにゃ!」
うんうん、二人の反応は好感触みたいだね、これをきっかけに水浴びが好きになってくれるといいんだけど…しかしお腹の毛がふわふわだなぁ、顔を突っ込んですーはーすーはーしたい…
「あ、そうだ!二人にこれをあげるよ、つけてみて」
そう言って私はノミとり用の猫の首輪を20個近く作った、猫用の首輪なので長さ的に首に巻くのは厳しいが2本か3本つなげれば首にもつけられるだろう、大型犬用なら一本でも行けるかもと思ったが、あれは大型犬の力にも耐えられるようにかなり太めに作られていて、ザ・首輪って感じなのだ、なんか変態プレイの最中みたいになったら嫌なので細くて可愛らしい猫用にした、これならばチョーカー代わりだといっても通用するだろう、こっちの世界にチョーカーとかがあるかはわからないが、少なくとも私の心が安定するのでこっちでお願いします!
「えっと、これはノミやダニが体につきにくくしてくれるバンドなの、これをこうくっつけて…これを首とか手足に巻いてみて、それで結構虫が付きにくくなるから」
「にゅ~、なんか奴隷の首輪みたいでいやだにゃ~」
「でもこれで虫に嚙まれないならましだにゃ」
二人は毛繕いである程度虫を落としていたみたいだが、それでもどうしても頭や首の後ろなどは毛繕いできないので虫が取れなかったらしい。
「ともかく、身体を洗ったにゃ!ごはんにゃ!」「お魚にゃ!」
二人的には毛がきれいになったことよりはご飯のほうが優先らしい、花より団子だね。
「はいはい、それじゃあ村に戻ってご飯にしようか、他のみんなのご飯も作らないといけないしね」
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