第14話 相変わらず警戒心がない
「とりあえず村に行ってみんなに紹介するよ」
「お願いするにゃ」
そう言って村のほうを向くとミーコちゃんたちが木陰からチラチラとこちらをうかがっていた。
「もう終わったから大丈夫だよ」
ミーコちゃんたちににっこりと笑顔で言ってあげると、木陰からトテトテと歩いてきた。
「へーき?ユーコいじめない?」「いじめちゃメーなの」「メー!」
「ふふ、いじめようとしてた人はもう追っ払ったよ、この二人とはお友達になったの」
「お友達にゃ」「にゃ」
「それでね、追い払った悪い人におうちを追い出されちゃったから村に住まわせてほしいんだって」
「村に住むの?」
「うん、村長さんたちに相談してみようかなって」
「じゃあ、あたらしいおともだちだ!」「「おともだち!」」
ぱぁっと眩しいほどの笑顔になったミーコちゃんたちはミャムたちの周りをくるくると回り始めた、立て続けにお友達が増えたのがうれしいのかもしれない。
「あのね、わたしが村長におねがいしてあげる!」「わたしも!」
「「ありがとうにゃ」」
ミャムたちとミーコちゃんたちは手をつないで村へと向かっていった、あ、おっきな肉球いいな~、私も手をつなぎたい…
「そういえば、さっき追い払った人コリス族のこと嫌ってたみたいだったけど二人は大丈夫なの?」
「あ~あれはガルムスが親たちがしきりにコリス族に手を出すなと言っていたのが気に食わなかっただけにゃ、親への反発もあって抉らせてるだけなんだにゃ」
「反抗期的なものかな?」
「反抗期…にゃはは!確かにそんな感じにゃ、男はすぐ抉らせるにゃ」
「あ、あともう一つ聞きたいんだけど、さっきのガルムス?とミャムたちのしゃべり方が違うのはなんで?ガルムスはにゃーって言ってなかったよね」
「ん~これは子供のころの話し方を引きずってるにゃ、かーちゃんとかから女はこの喋りかたのほうが男受けがいいって躾けられるからくせになってるにゃ、猫人族の女は大体この喋り方にゃ」
赤ちゃん言葉みたいなものかな?元の世界にもわざと舌足らずなしゃべり方をしてた子とかいたなぁ、あざとい系の…猫人族はそれを種族的にやってるってことかな?
「にゃー」「にゃーにゃー」
にゃーにゃー言っていたせいかミーコちゃんたちが真似し始めちゃった。
「か、かわいい…」
「かわいいにゃ!」「小さくてかわいいにゃ!」
小さいこととにゃーがツボにはまったのか二人がミーコちゃんたちを抱きしめた、ぬぉぉぉ!負けてたまるか、私も抱きしめる!
「う~、小さい子がにゃって言うと母性本能がくすぐられるにゃ」
「無性に守ってあげたくなるにゃ」
もしかしたら猫人族は庇護欲が強めの種族なのかもしれない、元の世界でも母猫や母犬が他の動物の子供を育てるなんて話もあったしね。
…しかし幼児とモフモフの競演、いいよね心が癒されるわ~。
「おっと、いけないいけない、まずは村に行ってからにしようか、晩ご飯の用意もしないといけないし」
「晩メシ!晩メシたべるにゃ!」
「狩りの途中だったからお腹ぺこぺこにゃ」
「ユーコの出してくれる果物おいしーの!」「すっごくおいしーよ!」
「それは楽しみだにゃ」
そんな他愛もないことをはなしながら村へと戻り村長に事情を説明すると何の問題もなく二人の滞在は許可された、うん、相変わらずの警戒心のなさだよね。
ただ一つ問題だったのは私と同じくらいのサイズ…あ、身体の大きさね、すごくスレンダーな猫人族よりは私のほうが大きいはずだし、きっと…たぶん…じゃなくて!身長、身長がね私並みだから集会所くらいしか大きい建物がないってことで、まぁ、私としては猫さんたちと住めるのであれば同居大歓迎なわけなんですがね。
「こっちの小さな家でいいにゃ」
「アタシも小さい家のほうが落ち着くにゃ」
そう言うと集会所よりは少し高いところにある今は空き家になっているらしい普通のコリス族の家へとするりと入っていった、元の世界の子供が遊ぶプラスチック製のおうちのアスレチックの入り口くらいの大きさしかないのに…やはり猫は流体って本当だね。
「中もちょうどいいくらいにゃ、狭すぎず広すぎずにゃ」
とのことで空き家になっていたという家が二軒猫人族に貸し出されることとなった、賃料という概念はないらしいが、村のお手伝いをしてねということでまとまった。
「それではこれよりミャムとニャミナの歓迎会をひらきます!」
「かんげいかい…にゃ?」「なんにゃ?」
「う~ん、これからよろしくお願いしますって意味を込めて皆で美味しくご飯を食べて仲良くしましょう、って会かな」
説明しながらスキルで果物をどんどんと生成していく、スキルレベルが上がったことで一度に複数作れるようになったんだよね、最初は一個づつだったから時間がかかったかかった。
「にゃ!果物が出てきたにゃ!」
「アイテムボックスにゃ?」
む、今聞き逃せない単語がありましたよ。
「アイテムボックスって何?もしかして収納魔法的なものがあるの?」
「?…アイテムボックスから出しているんじゃないのかにゃ?」
「これは私のスキルで作ってるんだよ、だから作ったら出しっぱなし、さっきの猫じゃらしも部屋のインテリアになっちゃうかな~」
「アイテムボックスのスキルはほとんどの言葉をしゃべれる生き物なら使えるはずにゃ」
「親から教わらなかったのかにゃ?」
「あはは、私の生まれた国では使ってる人はいなかったかなぁ」
元の世界にはスキルなんてもの自体がなかったからね、コリス族のみんなも小首をかしげている、もしかしたらカエデに守られていたことで他の種族との交流がなく誰も知らなかったのかもしれない。
「こうやって、アイテムボックスに入れたいものを見にゃがら箱にしまうイメージで『アイテムボックス』にゃ」
そう言うとミャムが持っていたモモが一瞬で消えた。
「おお!すごい、本当に消えた!」
「出すときは出したいものをイメージして『アイテムボックス』にゃ」
消えたモモがミャムの手の上に再び現れる、これは便利だ!
「アイテムボックスはたくさん物が入るし、入っている物が腐りにくくなるにゃ、動物とかも一応入れれるけど相手の同意がいるから基本的には無理にゃ」
へぇ、動物も入るんだ、ふふふ、普通は無理でしょうが私はテイマーさんだからね、きっといけるはず、いろんな動物をテイムして集めてわんにゃんパラダイスを作るのだ!
まぁまだテイムスキル覚えてないけど…
「…!このモモすっごく甘いにゃ!」「こんなに甘いのは初めて食べるにゃ!」
うまいにゃうまいにゃと言いながらガツガツと果物を食いまくる二人を見ているとちょっと猫缶とかをあげてみたくなった、実はスキルレベルが上がった時に植物系の食べ物だけではなく、肉や魚の身のような動物系の餌や人間が加工した物なども生成できるようになっていた、しかも私がよく知っているような有名メーカーの猫缶やカリカリと言われるようなドライフードも生成できた、カリカリとかはさすがに食べないかもしれないけど猫缶は見た目的にもツナ缶のようなものだし人間の私から見ても食べ物として見れるしね。
というわけで早速二人に見えないところで猫缶を生成してお皿替わりに使っている大きな葉っぱの上に移し替えてみる、もし猫缶が気に入って直接食べたりしたら口とかを切って危ないからね、あまり缶の状態は見せない方がいいだろう。
「ねぇ、こっちも食べてみる?」
「にゃ?なんにゃ、これ?」
「うーん、魚の煮物ってところかな」
「魚!魚は大好きにゃ!」「食べるにゃ!」
葉っぱをバッとひったくるように受け取ると奪い合うように食べ始めた、お試しにと三缶分を盛ったのだが一瞬でペロリと平らげられてしまった、まぁ、猫缶なんて猫の一食分だもんね。
「魚なのに泥臭くないにゃ!」「美味いにゃ!」
一瞬で食べ終えた二人は名残惜しそうに手をペロペロとなめていた、大きな虎や豹を思わせる風貌だけどこういった猫っぽい仕草を見せられるとやはり可愛らしく思えるのだった。
「これは川の魚じゃなくて海の魚を使って作るものだから泥臭い匂いがしないんだと思うよ」
「海!聞いたことがあるにゃ!すっごく大きな池にゃ!」「魚がいっぱいいるにゃ!」
あ~、この辺森の奥地だって言ってたから海とか見たことないのか、島国の日本でも今みたいに鉄道とかが普及していないころは海を見たことがない人も結構いたって体験学習で行った老人ホームのおばあちゃんが言ってたなぁ。
まだ手をペロペロしてる…もう!しかたないにゃあ、お代わりを出してあげる!たんとお食べ!
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