第12話 新たな種族

 最終的にトイレは10個建てたられた、村人は大体100人ちょっとらしいから10個もあれば十分だろう。


 今はその建設で消費した板材や丸太を補充する作業をしている、まぁ、丸太といっても私が一人で持てるくらいだからそれほど太くも長くもない、工具もなしにどうやって切り倒すのかと見ているとビーバーのように木の幹にかじりついた、二人で両側からカリカリと削り取ってゆく、幹の周りを円を描くようにカリカリと、そして仕上げとばかりに幹に飛びつくと反動で木が倒れてゆく、軽くズンとお腹に響くような振動があり木が倒れる。

 木とは言っても2メートルくらいの長さなら私が一人で運べる程度の太さと重さしかない、とはいえ今は枝打ちもしていないし5、6メートル位の長さがある。

 あ、そうださっき作った鎌のような削蹄道具なら枝打ちや皮をはぐのに使えるかもしれない。


「ねぇ、枝を落としたり皮をはぐならこの刃物を使ってみていいかな」


「はもの?うーん、いーよ」「いっしょにやろ」


「うん、ありがとう、でも刃物は危ないから少し離れていてね」


 みんなが他の木に取り掛かるのを確認してから枝打ちを始める、まぁ何人かはちょっと離れたところでこっちをじっと見ているが…刃物が珍しいのだろう、私はDIY女子とかそういったものではなかったためこういった作業はやったことはないが、ようはトイレを建てるときに使った丸太のようになればよいのだから枝を落として皮をはぎ、適度な長さに整えればいい、さすがに鎌で木を両断することはできないからそこはほかの子に任せることになるけど…


 それほど太い木ではないので枝も鎌を振り下ろすだけで簡単に落とすことができた、皮を剥ぐのは削蹄の動画で見たように足にのせようかと思ったけど明らかに支点より先のほうが長いので寝かせたまままたがり鎌の柄と峰?を持って引くことで皮を削いでゆく、2、3回削いだ時に危うく太ももを切りつけそうになったので削蹄動画でつけていたエプロンのようなものも追加で生成した、動画で見る限り普通に切れて穴が開いてるようだったので、対刃性というよりは刃が滑った時に逸らしたりする用の物なんだと思う。


 せっせと皮を削いで一本終わる頃にはもうお昼を過ぎてしまっているようだった、他のみんなはもう丸太の加工を終わらせている、一人一人の皮をかじる速さは刃物を使ってる私よりも遅かったけど、やはり複数人でやると速さが違うなぁ…でも刃物の近くに顔を持ってこられると恐怖でしかない、うん、安全第一!ヨシ!


「よし、それじゃあお昼ご飯にしようか」


「わーい!ごはん!」「ごはん!ごはん!」


「じゃあ手をきれいにするために川まで競争しよう!」


「かけっこ!」「かけっこ!かけっこ!」


「それじゃあ、よーい…スタート!」


 みんな一斉にかけていく、大人も子供も、やはりみんな子供っぽいが楽しそうなのでこれはこれで幸せなのかもしれない。


 最初は2足歩行で駆けていたが、スピードが乗ってくるとみんな4足で駆け始めた、すると皆グングンとスピードをあげていく、うわ、速いなぁ、私じゃ全然追いつけないよ。


 そして小川で手を洗うと皆で私が生成した果物にかぶりつく。


「おいしーね」


「うん甘くて美味しいね」


 さすが現代日本で品種改良された果物たち、美味しいね、ここでも栽培できたらいいんだけど、ただ種とかなくなってる品種もあるし、野菜とかだとF1種とかあるけど果物はどうなんだろう?

 美味しい果物がたくさん栽培できるなら国を作るときに特産として収入源になるかな?

 …ってカエデがどこまで本気かもわからないのにそんなことを考えても仕方ないよね、とらぬ狸のなんとやらってね。


 皆で果物を食べ終えると川で顔を洗い、次は板材を作る作業をする、今度使うのはさっき丸太にした木とは別の種類らしい。

 加工の手順を見ていると木を倒すまでは丸太の時と同じだったがそのあと切り倒した切り口を見ながらゴロゴロと転がし始めたそして半回転位したあたりで止めると再び切り口のところにかじり付いた、そして何回かカリカリと音を立てたと思ったらそこからペリペリとはがし始める、まるでさきいかやチーズのようにペリペリと板状に裂けていく、もしかしたら竹みたいに縦に繊維が走っているタイプの植物なのかもしれない。

 となればこの鎌が火を噴くのではなかろうか?刈ることと裂くことに関しては鎌とか鉈は最適だからね。


 早速寝かせてある木に鎌の刃を立てる。


「…ふん!…ぐぎぎ…え?なんで?皆あんなに簡単そうにやってやってるのに…」


 木を相手に悪戦苦闘していると男の子がやってきた、えっと…副隊長のリック君だったかな?


「ユーコ、あのね向きがちがうよ、ほら、ここ!線が見えるの!」


 そう言われて木の切り口を見ると確かに等間隔で線が走っている、なんというかミルクレープの断面のようだ。


「あ、ホントだ線がある!もしかしてこの線に沿うように刃を入れるの?」


「うん!そうするとペリペリ~って板になるの!」


 試しにその線に沿うように鎌を入れてみると先ほどとは違いサクッと鎌が食い込んだ、そのまま鎌を引き軽く抉ってやるとぺキッと裂けるように隙間ができた、空いた隙間に沿って鎌を進め、抉る、進めて抉るそれを数度繰り返すと長い板になった、そのまま倉庫で乾燥させて使うときに必要な大きさに調節するらしい。

 一度コツをつかむと簡単だったのでどんどんと板を作っていく、作るたび皆が運んでくれるので割ることに集中できた、たおしてある木をすべて板にする頃には結構汗もかいたので、軽く汗を流すためにミーコちゃんたちと再度小川に行くこととなった。


「ふぅ、いっぱい汗かいちゃったね」


「うん、いっぱいおてつだいしたよ!」「「したー!」」


「ふふ、そうだね、がんばってたよね」


 そして小川についたとき、川の向こう岸にある茂みがガサガサと音を立てた、やばい動物かもと思うより先に体が子供たちの前に出た。


 コリス族は全員が木材の加工に参加していたはずだし今川を渡る必要もないから、村の子じゃないよね、もしやばい動物だったら『餌生成』で気を引いてる間に逃げられればいいんだけど…


「なんだ?変な気配がすると思ったら、なんでこんな森の奥にクソ人間がいやがるんだ?」


「ホントだにゃ、人間のメスがいるにゃ」


「珍しい服を着てるにゃ」


 茂みの奥から出てきたのは2メートル近くの巨躯とそれにふさわしい筋肉を備えた猫顔の獣人一人とその後ろに私の背丈と同じくらいの背丈ですらりとした体形の同じく猫顔をした獣人が二人いたこの二人は頭髪を伸ばし結わっている、もしかしたら雄と雌で体形がちがう種族なのかもしれない。


 体躯の大きな獣人はかなり使い込まれた肩当や胸当てなどをしている、下半身はズボンというよりは長い布を巻き付けてズボンの代わりにしているように見える。


 細身の獣人は大きなシャツを着ているが胸の下あたりで結んである、動きやすくするためであろうか?なにはともあれお腹の柔らかそうな毛がまろびでている、ふわふわである…ふわふわである!


 ゴホン、その柔らかそうなお腹の下は腰のところで布を巻いており巻きスカートのようになっている、どれもサイズに合わせて作られた服には見えないので、もしかしたら他の種族や人間とかから奪ったりしたものなのかもしれない、いや、見た目で決めるけるのはあれなんだけど、真ん中の体の大きな子明らかに堅気じゃないって雰囲気バリバリなんだよねぇ…


https://kakuyomu.jp/users/hutabasinobu/news/16818093076157839098


「ふん!チビどもに手を出すとあのクソ狐がめんどくせぇが、人間ならぶっ殺しても問題ねぇよな」


「でも何にも持ってないし、殺しても意味ないんじゃないかにゃ?」


「はっ!意味なんてどうでもいいんだよ、この森に人間がいる、それだけで殺されるには十分な理由だろうが!」


「相変わらず野蛮だにゃ」


「あ?何か文句でもあんのか!」


「べつに文句はないにゃ、相手は人間だしにゃ」


「というわけで満場一致でぶっ殺し決定だ、恨むんならこんな森の奥まで入ってきた自分の馬鹿さを恨むんだな」


 えー、明らかに脅してまとめただけじゃん!どこが満場一致だよ!

 でもどうしよう…こんな筋骨隆々なのに勝てるわけないよ、いや、後ろの細身の子でも勝てる気はしないけど!どうしよう…

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