第11話 おしっこのおうち
「それでは早速行ってくる、善は急げなのじゃ」
昨日の夜はコリス族を思う存分愛でてから、朝食の後そう言ってカエデは村を出ていった、まるで空を飛んでいるかのような速さで木々の間を抜けてゆく様は彼女が本当に神獣なのだと再確認させられた、いかんせん昨日はデレデレのとろけたような表情ばかり見ていたから初めて会った時の緊張感なんてすっかり忘れかけていたよ。
「キツネさんすっごく早かったね、ビューーンっていっちゃった」
「うん、本当に早かったね、神獣さんてすごいんだね」
「あのね!こう、木の間をビュンビューンってしてたの!」
うん、一緒に見てたから知ってるよ、でもテンションが上がるとこうやって自分が見たことを身振り手振りで伝えなきゃってなっちゃうのが子供らしくてかわいいなぁ。
さてと、カエデも行っちゃったし今日はどうしようかな…あ、そうだ!トイレを作ろう、せめて小屋を建てないと落ち着かない、ちょうどカエデの見送りでみんなが集まってるから相談してみよう。
「あの、皆ちょっといいかな、手伝ってほしいことがあるんだけど…」
「うん、いいよ」「おてつだいする!」「みんなでおてつだい!」
うん、みんないい子だね、まだ何のお手伝いかも行ってないのに…白紙の小切手を切っちゃだめだよ。
「えっとね、私が入れる高さの小さな小屋を作りたいんだけど」
「おひっこし?」「おひっこしするの?」「村から出ていっちゃうの?」
「ちがうちがう、お引越しじゃなくてトイレ…おしっこをする場所を作りたいの」
「おしっこ?」「なんで?」「おうちの中でおしっこするの?」
うぐ!普通のことのはずなのに字面が何か高度なプレイでもしているような感じがする。
「あ、あのね私たち人間はあまり広いところでおしっこするのは落ち着かないから専用の場所を作るの」
「おしっこのおうち?」「おしっこのおうちだ!」
う~ん、さっきよりはましになったけど、それはそれでどうなんだろう?
「おしっこのおうちというかトイレっていうんだけど、それを作るのを手伝ってほしいの」
「わかった!おしっこのおうちたてる!」「ユーコがいっぱいおしっこできるようにする!」
「もう、おしっこのおうちでいいか…じゃあみんなお手伝いお願いね」
「「「「「うん!」」」」」
皆が大きな声で返事をした後、大きな子…大人の子たちかな?が一斉に散っていった、とりあえず長老さん…チッタだっけ?に今住まわせてもらってる小屋の隣に建てていいかを尋ねると「いーよ」とのことだったので早速建てる場所の縄張りというか地面に大体の広さを決めて線を引いているとさっき散らばっていった子たちが板や縄持ってきてくれた、丸太などは今運んでいる最中らしい、さっき引いた線の近くに板などを運んでもらっているとうんせうんせと一本の小さめの丸太を5人くらいで運んできてくれた、そしてその後にも2本3本と丸太を持った子たちが続いている、それぞれ丸太を建設予定地に置くともと来た方へ戻っていく、おっと、見てないで体の大きな私が手伝わないと…
最初に丸太を運んできてくれた子たちについていくと私が住ませてもらっている小屋よりも大きな小屋が見えてきた、入口も大きく作られており私でも立ったまま入ることができる、その入口をくぐって中に入ると丸太や板、縄、そしてみんなが着ている大きな葉っぱがたくさん置いてあった、聞いてみると葉っぱは着る用というよりは虫よけとして置いているらしい、結構ちゃんとした倉庫なんだと感心しつつ中を見ていると、うんせうんせと皆が丸太を運び出す声が聞こえてきた、おっとこんなことをしている場合じゃない、私用のトイレを立ててくれてるんだから手伝わないと。
「…よいしょっと!」
丸太を持ち上げると何とか一人で持ち上げることができる程度の重さだったので肩に担ぎ上げよっこらよっこらと運んでいく、その横を丸太を持った子たちが通り過ぎてゆく、数は力か…
なんとか一本運び終えたが体中の筋肉が悲鳴を上げている、うん、大人しく組み立てのほうを手伝おう…
土台を立てているところを見てみると、すでに三本の柱が建てられていた、最後の一本も皆が泥まみれになりながら穴を掘ってくれているのですぐに立つだろう、素手で掘ってるのにすごいなぁ…じゃなくて、お手伝い!とりあえず柱を支えよう高さがあるやつは背の高さがある私のほうが適任だろうし。
自分にできそうなことを手伝いながら(ほぼ板や柱を支えただけだけど)夕方頃には私一人が入って少し余裕がある程度の大きさの小屋ができた。
「できたーー!」「おしっこのおうちだー!」「「「おしっこ!おしっこ!」」」
うーん、異世界であっても子供の下ネタへの食い付きは一緒かぁ、いや、野生動物は尿やふんからいろんな情報を得ているってゆうし、元の世界よりも執着が強いのかもしれない。
「ユーコがいっぱいおしっこできるようになった!」「ユーコはおしっこ大事!」
うん、考えすぎだね、普通におしっこって言いたいだけだね。
「みんなありがとう、おかげで落ち着いておしっこできるよ」
皆にお礼を言いつつ中に入って壁などを見てみると倉庫や私が使わせてもらっている集会所よりは簡素なつくりとなっている、倉庫などはまっすぐな板を選んで床や壁に張っているみたいだったけど、この小屋にはいびつな板も使われているそしてゆがみでできた穴から縄を通してさらに板を括り付け隙間を減らしている、工具がない中家を建てる知恵だろう、まぁ、多少隙間風は入ってくるけどトイレなのでむしろ換気がいい方がありがたいかな。
さてととりあえず便器代わりに猫トイレを生成して、そして一番重要な猫砂、もちろん脱臭タイプを生成!猫トイレに入れてっと…最後にウェットティッシュをセットして完成!これで一つ文明の階段を上った気がするなぁ。
少し満足感に浸っているとミーコちゃんたちが次々に中に入ってくる。
「?…ツルツルの箱がある」「すな?すながはいってる!ここでおしっこするんだ!」「おしっこしてみる!」
男の子がさっそくとばかりに猫トイレの中に足を踏み入れる、うーんコリス族の背の高さと足の形だとまたぐのは難しいから仕方ないか…じゃなくって!
「み、みんな、お外に出ておしっこが終わるのを待っていようか!」
「なんで?おしっこみる!」「「「みる!」」」
「だめだよ、ここは一人でゆっくりおしっこをするためのお部屋だからね」
「そっかぁ、ひとりでするためのおへやじゃしかたないかぁ」「うん、しかたない」
何がしかたないのかはわからないけど、多分約束事は守るみたいな決めごとがあるのかもしれない。
後ろでチーっと音が聞こえる気がするが気のせいだということにしてみんなで小屋を出る。
「次はボクもおしっこしたい」「わたしも!」
うん、物珍しいからかおトイレ大人気だね、もともと一人で使うつもりはなかったから、使ってもらうのは全然いいんだけど、何か使用中の目印を作っておかないと、小屋を建てたときの木の板が余ってるけど、さすがにただの板だとわかりにくいよね、うーん、木の板を加工できるようなナイフとかあればいいんだけど…あ!そういえば動画サイトで動物動画を見てるときに削蹄をしている動画があったっけ、結構大きな鎌みたいな道具で爪を削ってやすりをかけていた覚えがある、あれなら獣具として生成できるんじゃなかろうか、物は試し!
『獣具生成!』
動画で見た鎌のような爪切りとやすりを思い浮かべながらスキルを使うと、手の中にすっしりとした重さとともに鎌とやすりが姿を現す。
「うわ!重っ!!」
危うく取り落としそうになりながらもなんとかこらえる、落としてコリス族の子にでも当たったら大変だ。
「わぁ、おっきな鉄の棒だ、ギザギザしてる!」「すっごい!かたいね」
「重いからあまり触ると危ないよ」
軽く注意をしてから余りとして置かれた板を手に取り、鎌の先でがりがりと線を引いていく、とりあえず使っていることが分かればいいのでバツの字にしておいた線を二本ひくだけでいいし、鎌でがりがりした後はコリス族の子が触ってけがをしないようにやすりをかける、やすりが重いので足で挟んでお腹に立てかけて板のほうを動かす、ザリザリとやすっていると周りにいる子たちが真似をして足で挟んだ木の棒に板をこすりつけたりしている、さっきおしっこをしていた男の子も用を足し終えて一緒に板をこすっている。
「んっしょんっしょ!」
ふふ、わたしも子供のころお母さんとかお父さんの真似をしてたなぁ、などどほっこりしつつやすっていると彫りこんだところが大分滑らかになった、うーんちょっと色も付けたいな…染料とかはペット用品ではないだろうし…あ、お母さんとかが子供ころに塗ってくれたヨウ素液みたいなのはどうだろう、動物の消毒用にも使えるはずだよね。
懐かしい消毒液のことを頭に浮かべながらスキルを使うと獣医用なのかかなり大きな容器に入った消毒液が生成された、この大きな容器では彫ったところに直接垂らすのは難しいと思ったのでさっき作った鎌で木の枝を筆のように先を割いていく、そしてそれを筆代わりに彫った溝を染めていく、染料じゃないからそんなに長持ちしないだろうけどバツが目立ちさえすればいい。
染色をし終わると赤茶っぽい色のバツになる、そしてそのバツが彫られた板をみんなに見えるように高めに掲げる。
「みんなー、この板を入り口の所に置いておくからおしっこするときは入口の外に出しておいてね、それで、この板が外に出てるときは中に人がいるから中に入っちゃだめだよ、それでおしっこが終わったら外に出るときにこの板を中に入れておいてね」
「「「はーーーい!」」」
「うん!いいお返事!」
そのあとみんなで一通り使ってみたところ、みんなが意外と落ち着けて良かったとのことで村中に何個かトイレが設置されることが決まった、小屋はコリス族のみんなが作り、私は猫トイレと猫砂、ウェットティッシュ、その予備を生成することになった。
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