第6話 四尾の狐
皆が泡を追いかけまわしているが、あまり長い間濡れたままなのはよくないので、他の洗っていない子も順番に洗っていく、ただ皆、体が泡だらけになると他の子たちのもとへかけていってしまう、あわあわでお揃いなのがとてもうれしそうである、ひとまずシャンプーは終わったので川ですすいでもらおう。
「はーい、ずっと泡だらけだと風邪ひいちゃうから川で体を洗って~!」
「え~、もっとあそぶ~」
「髪の毛をキラキラにするお薬はもう一回洗わないといけないから早く洗わないとお昼ご飯が食べられなくなっちゃうよ~」
「お昼もご飯食べられの?」
「うん、私のスキルで作るからお昼までに帰って準備しないとね」
「朝も食べたのにお昼も食べれる!すごいの!」
「だから体を洗ってね」
「「「うん!!」」」
皆が一斉に川に入って体の泡を流していく、猫とか犬は水を嫌がる子が多いって聞くけど、言葉が通じるって偉大だな~、いや、普通の子でもお風呂を嫌がる子とかもいるからこの子たちの素直さに感謝かな
…って小さい子が一人水に流されていく泡を追いかけて行ってる!もし深くなってて溺れたりしたら!!
「危ないから奥へ行っちゃだめ!!」
自分でも驚くほどの声が出た、泡を追いかけている子も他の子もビクッとして動きを止めた。
「うぅ…うえぇぇぇぇっ…」
怒られたと思った泡を追いかけていた子が泣き始めると、他の子たちもつられるように泣き出す子が出始める、そして泣いている子を見て悲しくなったのか残りのミーコちゃんたちも泣き始めた。
「「「うわぁぁぁん…」」」
「ああ、ごめんね!怒ったんじゃなくて、奥に行ってもし溺れちゃったりしたら危ないから大きな声が出ちゃったの、ごめんね、びっくりしたよね」
皆をギュッと抱きしめてあげる、ワイシャツがずぶぬれになったがそんなものは気にしていられない。
しばらく抱きしめていると皆が泣き止んだ、というか抱きしめられているのがうれしいのかニコニコである。
「えへへ」
「それじゃあ改めてキラキラのお薬で体を洗おっか」
「「「うん!」」」
もうみんなの泡も流れているので、ペット用のコンディショナーを使って仕上げをすることにした、え~っと使い方はっと…直接塗り込むタイプか。
「よし、それじゃあ頭から洗っていくね、よいしょっと」
コンディショナーをたっぷり手に付けると一人ずつ洗っていく、コンディショナーなのであまり泡立つこともない。
「あわあわしないよ?」「ほんとだ、あわあわしない」「ざんねん…」
さっきみたいに泡でもこもこになると思っていたのかちょっとがっかりしている感じがする、うん、私ももこもこのほうがぬいぐるみみたいでかわいらしいと思うよ。
「よしっと、それじゃあお薬がなじむまでちょっと待っててね、あ、そうださっきのキラキラが出てくるやつ貸してあげるからちょっと遊んでて」
さて、待ってる間に私の服も洗濯しちゃわないと…昔は普通の石鹸で洗濯とかもしてたらしいから大丈夫だよね、うん、さすがに下着だけで洗濯は恥ずかしいから何かつけないと…何度もお世話になってる馬用の服でいいかな、そういえばスキルで作ったものって持続時間とかあるのかな?今のところ消えてなくなったとかないけど…まぁ、その時はその時か、というか消し方とかわからないからどうせ出しっぱなしにするしかないしね。
とりあえず馬用の服をマントのように羽織ってからワイシャツを脱ぐ、う~ん昔は洗濯板っていうギザギザの板を使って洗濯してたらしいけど、使えそうなペット用品とか知らないしなぁ…もみ洗いしかないかな。
パーカーとワイシャツを水につけて石鹸をこすりつける。
「ゴシゴシっと…んしょ…んしょ、これは重労働だぁ」
「ユーコ、あのねキラキラでないよ?」「あわあわでないの」「でない」
あちゃー、段ボールだと力加減とか難しいかぁ、どうしようかなぁ…あ、そうだ!
「『獣具生成』金属製のブラシ!」
ふと思いついたので目の詰まってないタイプの金属製のブラシを生成した、頭で思い浮かべたものがペット用品であれば思い浮かべた形で生成できるので便利だ。
「えーっと木の枝を挟んでわっかにして針金をねじってっと…う~ん小さいから力が入れにくいな、あ、ミーコちゃん、これちょっとねじってくれないかな?」
「ねじるの?よいしょよいしょ…できた!」
「やっぱり手が小さいから細かい作業がしやすいんだね、他の針金も同じようにしてくれないかな?」
「うん!いいよ!よいしょよいしょ…」「わたしもやる!」「わたしも!」
「かわりばんこでお願いね」
「んしょ、んしょ」「よいしょ…できた!」
「うん、ありがとう、いい感じにできたよ!」
手伝ってくれたみんなをいーこいーこしてあげると屈託ない笑顔を見せてくれる。
「あとはこれを外側にたおしてっと…できた!」
出来上がったわっか付きブラシを石鹸で作ったシャボン液につけてから軽く振ってみると無事シャボン玉ができたのでそれを持って軽く走ってみる。
「ほらこうやって走るといっぱいキラキラが出るよ!」
「わぁ!すごいすごい!」「キラキラだぁ!!」
ミーコちゃんたちがキラキラした目で見てくるのがとてもかわいらしいがふと冷静になってみると…
『その者、馬の衣をまといて半裸で異世界の野を駆け回らん…』
へ、変態だぁ!!完全に変態の所業だ!
「は、はいミーコちゃん、ちゃんとかわりばんこで遊んでね、私はやることがあるから」
「うん!みんなであそぶ!」「「あそぶ!」」
ミーコちゃんたちはシャボンブラシ(今命名)を持ってかけていった、すぐそこが村だし迷子とかはならないだろう、さ!早く洗濯して日のあるうちに乾かさないと!一日中半裸マントで過ごすなんてありえない、元世界なら通報案件だよ!
川に浸かったままになっているトレーナーとワイシャツを大急ぎで洗っていく。
「人間…この森は我のなわばりだ、なぜこのような場所に人間がいる」
せっせと洗っていると上のほうから声が聞こえてくる…なんかこのパターン多いなぁ。
「先ほど近くでチビどもの泣き声が聞こえた故来てみたが、人間、貴様がチビどもに何かをしたのか!!」
さっきのは溺れたら危ないから声が大きくなっただけであの子たちに危害を加えるなんてありえない!そう思い抗議をしようと声のした方を見上げると、そこには長い白銀の髪をなびかせ白い着物のような服をまとった美人さんがいた、そしてその頭には三角の耳と背後に太くて立派な四本の狐の尻尾のようなものがあった。
「き、キツネ?」
「我は長き年月を生き、今は四尾であるがやがて九尾へと至りこの森を守護する神獣…普通の狐と一緒にされるのは業腹ではあるが…」
https://kakuyomu.jp/users/hutabasinobu/news/16818023214247669366
そこまで言った瞬間木の上にいた神獣様?の姿が掻き消え、同時に首を後ろから強い力で掴まれた。
「カ…くぅ…」
「今はそのようなことはどうでもよい、今一度問うぞ、チビどもに何かをしたのか?答え次第では…」
そう言うと首への力が強まり、掴んだ手の爪が徐々に伸び首に食い込んでいく。
「ち…ちがっ!…たしは…」
す、すごい力…うまく声が出せない…このままじゃあ…
「「ユーコ!」」
そこにシャボンブラシを持って走り回っていたミーコちゃんたちが戻ってきた、ダメ…巻き込まれちゃう…こっちに来ちゃダメ…
「ダメ…あぶな…」
やはり声はうまく出せず、みんなは私のもとへ走り寄ろうとしていた。
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