第5話 ジャブジャブあわあわ

「うぅ…重いぃ…」


 おなかの上の重みに目が覚めたので目をやると昨日は腕にしがみついていたはずのミーコちゃんがおなかの上にしがみついていた、いくら幼稚園児くらいの大きさとはいえそこそこに重い、昨日の夜ミーコちゃんがしがみついていた腕以外は今も他の子たちに拘束されたままなので、動く右腕でミーコちゃんの頭をなでてあげる。


「うみゅう…えへへ、くすぐったいぃ」


 目を閉じたままくすぐったそうに身をよじり耳をピルピルさせながら私の胸に顔をこすりつけてくる。

 はい、可愛いので許しまーす、むしろこのくらいの重みはご褒美です!

 

 とてもかわいらしいのでナデナデしながら寝顔を観察していると、鼻がぴくぴくしているのがさらにかわいらしい。


 ……鼻がぴくぴく?+こっちに来てから三日目の朝+二日間歩きっぱなし+着替えていない服=やや…すいません見栄を張りました!けっこう臭い服でした!

 ノォォォォォォッ!!圧倒的ノーである!こんなにおいを幼児に嗅がせ続けるわけにはいかない!


「お、おはよう!ミーコちゃん!皆!」


「…ふぁ~~、あ!おはようユーコ!」「ふあぁ~~~、うみゅ…」「ん~、みゅ~~~」


 ミーコちゃんは目が覚めてもその体制のままギュッとしがみついてくる、うれしいけど今はやめてぇ、私のハートがスリップダメージを受けるから~!

 他の子たちは眠そうにあくびや伸びをしている、かわいらしいのだが私の手足を開放して~!特に足!普段は臭くなんてない、そう絶対に臭いなんてことはないのだが、今だけはちょ~~~っとだけ不安だから放して~!と念を込めていると皆が目をこすりながら起き上がり始めた、セーーーーフ!乙女の尊厳は守られた!


 解放された腕でミーコちゃんを体の上から降ろす、少し不満げな表情をされたが素直に降りてくれた。


「さて、朝ごはんの準備をしようか?」


「あさごはん?」


 朝ごはんという言葉を聞いて不思議そうな顔をしていたので聞いてみると、この村では朝に集めた木の実をお昼に食べるので朝ごはんという習慣はないらしい。


「大丈夫!木の実や果物は私がスキルで作れるから朝からおいしい食事ができるよ!村のみんなを集めてきてくれるかな?」


「うん!」「わかった」「?…わかったぁ?」


 一人いまいちわかっていなさそうな返事をしていたが他のみんなに続いて村の子たちを呼びに行った。


「さてと、今のうちにスキルとかに服をきれいにしたりできるものがないか調べないと…ラノベとかによくある生活魔法とかそういうのはないのかな?『ステータスボードオープン』」


 ステータスボードを確認してみると生活魔法などはなかったが、餌生成と獣具生成のスキルレベルが2に上がっていた、まだ消費SPとやらは0のままなので特にデメリットなく使用できるようだ、というか昨日結構な回数スキルを使ったと思うので何かを消費してスキルを使っている人ってスキルレベル上げるのってすごく大変なんじゃあ…あ、そうだペット用品を作れるんだったら!


「『獣具生成』石鹸!」


 掌の上にコロンと見慣れた低刺激を売りにしている昔ながらの某石鹸が現れた、これって私が知っているものが優先されるのかな?今の時代ならいろいろな種類があっただろうし…ただ私の実家では子供のころからこの石鹼だったのでこれが出てきたのかもしれない。


 それならシャンプーも欲しいとシャンプーを作ってみると、こちらはペット用のシャンプーが出てきた。?この線引きは一体どうなっているのか…まぁ、これも人間が使っても平気だろうし、みんなを洗ってあげることもできるかもしれない、ブラシ掛けだけでもふわふわだったけどシャンプーとリンスをしてあげたらきっともっとふわふわに…


 などと未来のモフモフに思いをはせいていると外からワイワイと皆が集まってくる声が聞こえてきた。


「おっといけない、早く床に敷いた布を片付けて朝ごはんを出さないと」


 とりあえず敷布団代わりの布は適当に重ねて部屋の片隅へ、さすがに全員はこの小屋には入れないから、外で皆の分の果物や木の実を出そうかなと表に出てみると皆が大きな葉っぱを手に広場に集まっていた、おそらくあのはっぱはお皿替わりに使ってるものなのだろう、昔何かの番組でそういうのを見たことがある。


 ひとまず皆の葉っぱのお皿を集めてせっせと果物や木の実を出していく、そうしていると昨日一緒に寝た子たちがやってきて果物が乗った葉っぱをみんなに配るお手伝いをしてくれる、大きな葉っぱを落とさないようによちよちと運ぶさまがとてもかわいらしい。

 それぞれの家族で集まって座っているようだが一番近くの家族に手渡すと奥のほうへと葉っぱのお皿を回していっているようだ、どうやら独り占めするような子はいないようで順調に皆にいきわたってゆく、仲が良くてほほえましい限りである。


 ほっこりとした気分で作業を続け、気が付くと葉っぱは残り一枚、私の分だけとなっていた。

 そうして皆にいきわたったところで長老が一口食べると皆が一斉に食べ始める、男の子も女の子も一様にお口の周りを果汁で染め上げながらパクパクと食べている、昨日からこの子たちを見ていて気づいたのだが男の子と女の子、見た目にはさほど違いがないように見えるが女の子たちは花の茎や細い蔓などで髪の毛を束ねている、花の茎をつけているのはおしゃれさんらしい、昨日泊まりに来た子たちはみんな髪を結わっていたので女の子グループだったらしい。


 一通り家族での食事が終わると昨日の子たちが集まってきた、みんなお口の周りが果汁でベタベタだったのでスキルでウェットティッシュを生成してお口の周りをふいてあげる。


「ん~~~~、ぷは」「わぁ、お口きれいになった」「ん!」


 お口を洗わずにきれいになったのが不思議なのかキャッキャとはしゃいでいるが一番小さい子をよく見ると、頬袋なのかほっぺをプクプクにしてお口をもぐもぐとしている、どうやら食べている最中にお友達が集まりだしたのでほっぺに入るだけ詰め込んで急いできたようだ、見ているとぷくぷくのほっぺがモッモッと動いてとてもかわいらしい。


「ふふ、ゆっくり食べていいんだよ」


 そう言ってあげるとコクリと頷きまたモッモとほほを動かし始めた、ホント小動物のようでかわいい。


https://kakuyomu.jp/users/hutabasinobu/news/16818023213754772104


「あ、そうだこの近くに川とか池ってないのかな?服とかを洗いたいんだけど…」


「ふく?ふくはわかんないけど体を洗ってる川があるよ!」


 あー、確かに服とかじゃなくて葉っぱだもんね。


「じゃあ、その川に連れて行ってくれる?」


「うん!すぐ近くだよ!」「こっち、こっちにあるの!」


 みんなで競うように私の手を引いて案内をしてくれる、うんみんな喧嘩とかせずにもつ指を分けてくれてるのは微笑ましいんだけど、地味に指裂きになってるからね、結構痛いんだよそれ、痛みに耐えながらついていくと村の境になるのか5メートルほどの川幅がある川があった、これだけの川ならシャンプーを多少使っても問題ないよね。


 早速上着の洗濯をしようと服に手をかけると皆が興味津々といった感じでじっとこっちを見ている、女の子ばかりとは言え少し恥ずかしい…それにお見せするほど立派でもない、いや、どちらかといえば慎ましやかな…いやいや小さいことを気にしていてはいけない、いや!違うよ!小さいことを気にしてるんじゃないよ!細かいことは気にしないということだよ!ここ大事!大事だからね!!ゼーーハーーー…

 ああ!私の苦悩の舞を皆が不思議そうな目で見ている!注意をそらさなくては!


「み、皆も一緒に水浴びしよっか?」


「うん!水浴びする!」「する~!!」


 皆は一斉に葉っぱの服を脱いで川の中へと入っていった、そういえば服というものを知らないのになんで葉っぱを服みたいにしてきてるんだろう?


「ねぇ、ミーコちゃん、この葉っぱってどうして着てるの?」


「あのね、その葉っぱをつけてると悪い虫にガブーってされないの!ガブーってされるとすっごく痛いの!」


 なるほど、この葉っぱは虫よけなのか、だから男の子も女の子もおんなじ葉っぱを着てたんだね、ん~、でも髪を結わうものでおしゃれをしてるってことは着飾るという概念はあるってことだよね…うーむ、ひらひらの服を着せて思う存分愛でてやりたい…ま、今はその土台となる原石を磨き上げてもっともふもふにしてあげなくっちゃ、そしてついでに洗濯もしないと…あれ?なんか逆転してる?


「ま、そんなことはどうでもいいとして、ねぇみんな、私みんなの尻尾や体の毛がとてもきれいになるお薬を持ってるんだけど興味ないかな?」


「おくすり?ってなに?」


「あ~、そうか服とかもないんだもんね知らないか…えっと薬草とかあるのかな?怪我したときに塗る草とか、おなかが痛いときに飲む葉っぱとか…」


「あるの!とっても苦いの!」


「ふふ、やっぱり苦いのかぁ、お薬っていうのはねその体にいいところだけを集めたものなんだよ、だから薬草とかより効果が高いし飲みやすいものもあるんだよ、そしてこれは髪の毛をきれいにするお薬」


「毛づくろいよりきれいになる?」


「うん、ふわふわのキラキラになるよ」


「わぁ!おくすりすごい!」「「すごい、すごい!」」


「それじゃあ、髪の毛キラキラにしたい人!」


 そういって手をあげると皆がまねをするようにピンっと手を挙げた。


「「「はい!!」」」


 全員がやってほしいみたいなのでひとまず皆にいつも通りの水浴びをしてもらった、濡れてないとなかなか泡立たないからね。


 そしてある意味文字通りの濡れ鼠状態になった皆を一人ずつシャンプーで全身を洗っていく、初めてのシャンプーだからかなかなか泡立たないので洗い終わった子から川で一度すすいできてもらう、そしてもう一度シャンプーで洗うと全身が泡に覆われてもこもこになった。


「うわわー、もこもこになっちゃった、あはは、すごーい!」


「ふふ、ホント泡だらけになっちゃったね」


「あわあわ~」「あわ~」「あわ~!」


 もこもこになったミーコちゃんの泡に手を突っ込んで楽しそうに遊んでいる、あ、そうだ!手についた泡を集めてっと…ふーーーー。


 指で作ったわっかに息を吹きかけると大きなシャボン玉ができるが指から離れる前に割れてしまう。


「あ~、キラキラ割れちゃった…」


「ん~、何か筒みたいなものがあればいいんだけど…あっ!」


 ふと思いついたので獣具生成で猫の爪とぎ用の段ボールのようなものを作り出す、紙だからすぐダメになっちゃうだろうけどとりあえず一回使えればいいや、段ボールの片側にシャンプーの液をつけ息を強く吹くと小さなたくさんのシャボン玉が噴き出した。


「わーーーーー!!キラキラがいっぱいだ!」「すごい!すごい!」「きらきら!!」


 皆がシャボン玉を追いかけ始め、それがはじけるとビクッとする、人間の子供っぽさと小動物っぽさが合わさってすごくかわいらしい。

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