第3話 第1異世界人?遭遇

『ここからでていけ…でていけ』


 相手がだれかはわからないけどこの世界で初めて出会った意思疎通のできる人?だ、せめて町がどこにあるかだけでも教えてもらわないと。


「あ、あなたたちは誰ですか?なわばりに入ったというのであれば謝ります、だからせめて町のある場所を教えてもらえませんか?」


『ここはわれわれのなわばりだ、でていけ』


「ですから、町の場所だけでも教えていただければ、すぐにでも出ていきます」


『ここはわれわれのなわばりだ、でていけ』


 会話が成り立たない…やっぱり幽霊とかそういった類なのかな?


『ここはわれわりぇっいたっ!』


 …いた?向こうの茂みから聞こえたけど…


 ガサガサ…ガサガサ


 木の上か茂みなどから「いたっ」っと声の下茂みに向かて何かの音が移動していってる…ちょっと怖いけど見てみようか…そーーーーっと…


「いひゃい…ひたかんじゃった…」


「だいじょうぶ?」「だいじょうぶ?」


 茂みの向こうには口を押えてしゃがみこんでいる幼稚園児くらいの男の子?とその周りでしゃがんでいる男の子?の頭をなでている同じくらいの年頃の男の子?が二人心配そうにしている、その子たちは大きな葉っぱに穴をあけたものに頭を通し腰のところを蔓のようなもので縛ることで服のようにしていた、そして特徴的なのは頭の上に小さな丸みを帯びた耳のようなものがピコピコと動いていることと葉の隙間から出ているわき腹から下半身にかけて体毛に覆われている、そしておしりのところからは胴回りよりも太さのあるリスのしっぽのような物が生えている…もふもふである、とてももふもふである…


https://kakuyomu.jp/users/hutabasinobu/news/16818023213389704992


「もふもふ…」


「「「!」」」


 ついうっかりと欲望が口からダダ洩れると3人のつぶらな瞳がこちらを見て見開かれた…気がする、クリっとしてかわいい…


「みつかっちゃった!ど…どうしよう!」「どうしよう!?」


 頭をなでていた二人がオロオロとし始めたけど、真ん中の舌をかんだ子がリーダーなのか足元に落ちていた筒のようなものを拾いあげ


「ここはわれわりぇ!うぅ~、ここはボクたちコリス族のおうちがあるから来ちゃメ~~~!!」


 筒を口に当てるとくぐもった声が出たがすぐにまた噛んでしまい、筒を外して叫ぶように出されたその言葉は幼さを過分に含んだ言葉で今までの言葉遣いが無理をしていたのだとよくわかる。


「お前はわるい人間か!?」


「え!え?」


「わるい人間なのか!?」「なのか?」


 リーダーのような子に続くように二人の男の子も声を上げる、こんなかわいくてもふもふな子たちに悪い人認定されるなんて冗談じゃない!


「ち、違うよ!私は道に迷っちゃって町のある場所を探していただけだよ!」


「ホント?」


「う、うん、もちろんほんとだよ!」


 本当は異世界からここに迷い込んじゃったんだけど、この子たちはそんなことわからないだろうし…


「そっかー、びっくりしたー!」


「ねー、わるい人間が来ちゃったのかと思ってびっくりしちゃったよね」「ねー」


 なんかみんな揃って一仕事終えた、みたいな雰囲気出してるけどそんな簡単に信じちゃっていいのか!?


「…え?信じるの!?」


「え?ウソなの!?」「なの!?」


 とたんに3人の瞳がうりゅっとしたように見える


「いやいや、もちろんホントだよ!人間が住んでる町の場所さえ教えてもらえたら君たちのおうちには近づかないよ!」


「まち…しってる?」「しらない」「ぼくもしらない」

「どうしよう?まいごかわいそう」「「うん、かわいそう」」


 うわー、かわいいうえにいい子過ぎる!いい子すぎて心配になっちゃうよぉ。


「ボクたちのおうちに来る?」「「くる?」」


「え?いいの?」


「うん、わるい人じゃないって言ってたし、まいごかわいそう」


「ありがとう、じゃあ連れて行ってくれるかな?」


「うん!」「いーよー!」「こっちこっち!」


 3人それぞれが私の腕を引っぱって行ってくれようとする、後ろから見ると歩く動きに合わせて尻尾がふさふさと左右に揺れてとてもかわいらしい、が、今はがまんがまん、モフモフしたいけど我慢しないと…


「あのねあのね、わるい人はつれていったらだめなの」

「わるい人はボクたちをさらっていっちゃうんだって」

「こわいねー」


 うんうんと三人は頷き合いながら、私の先導をしてくれているが、そういう話を聞かされているのにこんなに無警戒でいいのだろうか?いや、よくない、私が悪い人から守ってあげないと…戦ったりはできないけど事前に警告ぐらいはできるはず、あまり村に人を連れてこないように言わなくっちゃ。


 そのまま手を引かれながら歩くこと10分ほど、木の幹の上に丸太の足場を作りそこに少し小さめの木の小屋の屋根に大きな木の葉を乗せた家が十数軒ある。


「わぁ、かわいいおうち」


 小さなおうちを眺めていると窓のところにチラチラとこちらをうかがう影が見える、というか隠れているつもりだろうけどかわいらしいお耳が丸見えである、ふふ、子供って自分から見えなければ相手から見えてないって思ってるよね。


「ミックにーちゃ、そのひとだーれ?」


 ほっこりしていると少し低いところにある小屋から、案内してくれた男の子たちより一回り小さな子がとてとてと歩いてきた。


「この人は森でまいごになってたからつれてきたんだ」


「まいごなの?かわいそう…」


 この村には天使しかいないのかな?などと気持ちの悪いことを考えていたらさっきの小さな子が私の前で一生懸命背伸びをしていた。


「ん~~~~~~~……」


 どうしたのかな?と目線を合わせようとかがんだらいきなり頭をなでられた


「よしよし、いーこ、いーこ」


「あーーーー!もう!かわいい!!」


 天使のあまりの天使っぷりに感極まりつい抱きしめてほほをすりすりとしてしまった、今まで気づかなかったが顔にもうっすらと産毛のような物が生えているようでふわふわもちもちとほほが幸せの感触に包まれる。


「えへへ…くすぐったいよぉ…元気でた?」


「うん、もう元気いっぱいだよ!」


 よかったぁと天使はほにゃっとした笑顔を浮かべたのでもう一度ほっぺをすりすりしてやった、かわいらしすぎる罪でほっぺすりすりの刑である、甘んじて受け入れるのだ!ふはははは!とか、あほなことをやっていたら周りをコリス族に囲まれていることに気づいた。


「あなたは悪い人間ではないのか?」


 たくさんいるコリス族の中から顔の産毛が長く伸び、あごひげのようになっている子が前に出て問いかけてきた、見た目的には子供にしか見えないがもしかしたらこの子はこの村の長老的なものなのかもしれない。


「はい、この子たちにも説明しましたが事故に巻き込まれてこの森で迷子になってしまいました、町に戻れればよかったんですが、この子たちもわからないとのことでこの村まで案内してもらいました」


「事故…それは大変ですね、しかしわしもこの村からあまり離れたところまでは行ったことがないので町の場所は知りませんな」


「そうですか…図々しいお願いですがしばらくこの村においてくれませんか?あ、そうだその代わりといっては何ですが食べ物を提供することができます」


「たべもの~?おいしい?」


 ついうっかり抱きしめたままにしていた子が聞いてきた。


「うん、たぶん皆が食べてもおいしいと思うよ、少し食べてみる?」


 そう聞くと腕の中の子がうん!と元気よく返事をしたので餌生成でブドウを作って一粒あげてみた。


「うわぁ、甘くってすっごくおいしい」


 もっともっとと腕の中で騒いでいる子に一粒ずつ餌付けをしていると周りにいた子たちが羨ましそうに近づいてきた。


「ボクも欲しい…」


「わたしも…」


「わしも食べたい…」


 ち、長老さんもですか、いや最初っから皆に渡すつもりだったから問題ないけどね、とりあえずそこからはせっせと果物を作りまくった、ブドウや桃、バナナ、リンゴにイチゴなど思いつく限りの果物を作っていった、いろいろと作ってみたところでてくるのは私がいつも食べていた元の世界の品種改良された甘くておいしいものばかりだった、んーこれ外来種だよね、大丈夫かな?大丈夫だよね、ちゃんとした世話をしないとそんなに増えないよね。


「わぁ、おいしいね」「おいしい、おいしい」「すっごくあまいね」「わしも色々食べきたけどこんなにおいしいものは初めてだよ」


 そんなこんなで私が出した果物で宴のような騒ぎになった、村の子たちに聞いてみたがコリス族はお酒は飲まないらしい、作り方も知らないし売ってくれる種族との付き合いもないらしい、それでも皆ワイワイととても楽しそうにしている、こういった和気あいあいとした宴ってお酒とかなくてもいいもんだなって思える、そう、会社勤めの強制参加の飲み会なんかとは比べるまでもなくね。

 などともはやどうでもいい元の世界の出来事を頭から追い出そうとしていると、腕の中の子がおいしいよとイチゴを満面の笑みを浮かべながら差し出してきたお口の周りは果汁ですごいことになってしまっているがまさしく天使のほほえみである、うん、今は嫌なことなんて全部忘れてこの幸せを満喫しないとね。

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