第30話 良い人の末路

昨日付けで、店舗勤務の佐久間さん(仮名)が解雇された。

理由は店舗の売り上げ不振による会社都合だが、正式決定は僅か1週間前。

もちろん違法だ。

配置転換の打診などなし、金を払うでもなし、有給消化を認めるでもなし、訴えられたら100%負ける。

そう、訴えられたなら……。


労働者の保護、正義の実現には金と手間がかかる。

よほど意地にならない限り、訴えたりしない。

何しろ生活があるから、諦めの傘で涙雨を凌いで終わりだ。


経営者は「売り上げなくして権利なし」と言うスタンスで、更に法に暗い為、問題がある事さえ認識していない。

だが、余計な事言えば吊るし上げをくらうのは分かっているから「違法ですよ」とは誰も言わない。


経営者は佐久間さんの1年以上前の些細なミスで取引先に謝らされた事を蒸し返したり彼女を批判していた。

正直、残業代を請求したり、店舗の休憩時間が短い事の改善を求めたり、だったのが災いしたと見ている。

何しろ彼女より安いとはいえ、冒険者社員の契約を切るのが普通だから……。


零細の遵法意識など分かってはいるが、吐き出さずにはいられない。

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