葵の上奇譚 現代編 中務教授の苦難? 3
※相変わらず妄想大噴火してます。(時空もちょっとクロスオーバーしております)
大学の近く、こんもりとした林の奥にある宿泊付きレストラン(オーベルジュ)『元祖フレンチ懐石』に引っ越した中務将仁は、夜、離れに用意された一室で、静かにパソコンに向かい、生徒からの提出物をチェックしていた。
「お食事お持ちしましたー」
「ああ……どうも……え?」
そう、ここ食事も頼めばつけてくれる『元祖フレンチ懐石』まさに謎のメニューではあるが。はじめは懐石という名のとおり、毎日食事が順番に運ばれてきていたが、マリアを通じて、旅行客ではないので、もう少し軽めの家庭料理で良いと言うと、翌日の朝からは『英仏屋』の女子寮のメニューのおすそ分けといった呈のメニューになり、中務教授は露骨にほっとしていた。(毎日毎晩、何時間も食事に時間をかけるのはきつかった。なぞ懐石だし)
そんな訳で日本人的には、たまに『おかゆ、生クリームを添えて』『ウナギのゼリー寄せ』など、無言になる料理はあったが、まあ、平穏に暮らしていた。
が、今耳に入った声は、どこかで聞いた声……。そう、大学でよく聞く声。
「……まさか…まさかそんな訳はないか……」
そんな独り言を言いながら、中務教授は離れのドアを開けると、目の前に立っていたのは、自分の料亭の板前を数人連れた、大学一の美貌を誇る弘子さんだった。
「~~~~」
「和食もたまには食べたいと思ってはるかと……じゃあ、準備していってちょうだい」
「はいっ! 若女将!」
「あのすまないが、生徒から特定のプレゼントは断って……」
「え? あら~? バレンタインに誰かに良いモノもらわはったん違いますの?」
「あ! いや、それはおすそ分け!! ただのおすそ分け! 君のはやり過ぎ!!」
「これは、うちの料亭の試食会のおすそ分けです!」
弘子さんは、慌てている教授を無視して、てきぱきと指示を出し、止める間もなく最高級の京料理の下準備が始まっていた。
二人分……。
「アンケートを取って帰りませんと。せっかくなので、ご一緒させていただきます!」
「~~~~!!」
この押しの強さ、まさに弘徽殿女御に違いない。弘子だし。
少し怖い気もしたので、なるべく考えないようにしていたが、葵が転生する少し前、中務教授は、そんなことを無言で考えながら、弘子さんと向かい合わせで無言のまま食事をしていた。
〈翌日の大学〉
弘子「教授! 昨日はお食事ご一緒できて楽しかったですー!」
中務「いや、それは君、誤解をまねく言い方はっ!」
千歳「え? 弘子先輩が? 教授とデート?!」
誰かのせいで、ウワサは瞬く間に広がってゆき、葵が転生してしまったあと、仲睦まじい? 仮面カップルが爆誕するのでした。
中務「嘘だろ……」
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