ミラクル番外編 葵・テレジア奇譚 6

※テレジア奇譚のオイゲン公と、ちょっと年齢がずれています。(本当はこっちが正解。そして弘子テレジア(1717年生まれ)が生まれる前です。今は、1712年です。)


〈 ザヴォイエン・将仁まさひとのやかた 〉


叔父の様子がおかしい、そう聞いた彼は、明日にでも様子を見に行こうと思っていたが、彼は彼で、色々と用事があったので、先延ばしにしていたところ、従者が飛び込んできた。


「オイゲン公が、お見合いをなさっているそうです! お相手は、リヒテンシュタイン侯国当主、アダム富裕侯のマリア・テレジア姫君です!」


ザヴォイエン・将仁まさひとは、思わずコーヒーを吹いていた。


「え……姫君? お見合いのお相手の姫君は何歳? 出戻りの再婚?」

「年頃! 超年頃の18歳です! 今日、のぞき見してきましたら、超美人な姫君でした! 金色の巻き毛がふわふわしてて、エメラルドみたいな瞳で……」


「のぞき見はするな……叔父は何歳だった?」

「1663年生まれですから……49歳です!」

「31歳年下か……年の差は大丈夫だな、それに相手の家柄も財力も十分。後妻業で騙されているわけでもなさそう。私より若い叔母が、この年になってできるとは……まあ、あるある話か! 叔父の結婚が決まって、後継ぎでもできれば、私の見合い話も落ち着くかもしれん……」


「よかったですねえ……そういえば、自分の結婚がまだだったと、やっと気付いてくれたんですねえ。話が決まるといいですね!」

「でも、オイゲン公、女子に受ける顔か、受けない顔かといえば、受けない顔なので、きっとたぶんダメですね。尊敬できる方なんですけれど、18歳の美人で良家の姫君は、ちょっと高望み、背伸びをし過ぎ……戦況はかなり厳しいですね……」

「…………」


ザヴォイエン・将仁まさひとの吹いたコーヒーを片付けながら、従卒たちは、気楽なうわさ話に花を咲かせていた。


「援護射撃に行った方がいいかな?」

「そうですねえ……」



〈オイゲン公のベルヴェデーレ宮殿の客室〉


「31歳年上……ワンちゃん将仁まさひとさまかも? でも、違ったら……どうしよう? 変な汗が止まらない!!」

「カマかけてみましょう!! はずれても、けっこういいひとそうですよ? 英雄ですし?」


紫苑・マルゴは、オペラ座に行く葵・テレジアの身支度を手伝いながら、『ファイト!』そんな風に、こぶしを握り締め、葵・テレジアは、「他人事だと思って……」そんな風に、平たい目で、鏡越しに紫苑を見ていた。


どんどん思わぬ方向に、話は広がっていたのである。




〈その頃の六たち〉


弐「はい! ハトが出ます!」ちっちゃな箱から魔法でハト出してる。

六「お前は……奇術師じゃなくて、詐欺師だ」

弐「失礼な! 陰陽師ってバレちゃー魔女狩りで死刑だよ?」小声。

六「……ハトが全部消えまーす」やる気のない声。


こちらも転生したふたりは、能力をいかして? 奇術師として、オペラ座の前座仕事をしていた。

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