ミラクル番外編 葵・テレジア奇譚 1
(あのハッピーエンドを迎えた2人がいま再び!)
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『葵の上奇譚とマリア・テレジア奇譚のクロスオーバー』
※ザヴォイエン公子→エマヌエル・トーマス・フォン・ザヴォイエン、オイゲン公の亡くなった兄の息子、甥(有能なオーストリア皇帝軍陸軍将校。『通称:鉄血将校』(これはモネのつけた呼称)です。フランスの伯爵位を持ってはいるけれど、父がルイ14世の不興を買ってフランス軍を追われ、叔父のオイゲン公を頼って、オーストリア皇帝軍陸軍に仕官。
※たぶん、マリアテレジア奇譚、本編とは、関係がありません…いまのところ
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ザヴォイエン公子26歳、いや中の人の、中務卿、中務教授は困って、追い詰められていた。
もう生まれ変わりには、すっかりなれていたが、なぜか今回は、日本を遠く離れたヨーロッパはルイ14世の時代のフランスに生まれていたからである。
運が良かったのか、悪かったのか、フランス貴族の家に生まれたはいいが、再び葵の上に出会えることもなく、その上、父がルイ14世の不興を買って、フランス軍を追われてしまった。
幸いにして、オーストリアの英雄、オーストリア皇帝軍のトップに、父の弟である叔父のオイゲン公がいたため、彼を頼ってオーストリアへ渡り、子供のいなかった彼には、息子がわり、いや、自分の後継者として、実に快く受け入れられ、オーストリア将校として、頑張っていた……ここまでは良かった。
「エマヌエル!! いい縁談話が、やっと見つかってね!! 見て、この肖像画!!」
「~~~~」
自分を後継ぎと決めた叔父は、「絶対に最高の結婚相手を探すから、期待してくれ!! こうご期待!!」
などと、忙しい戦争や仕事の合間にも、私のところに、何枚も何枚も肖像画を持ってきていたが、「肖像画って、盛っている場合が、ほとんど……」そんなことを言って、逃げ回っていた。
そんなある日、叔父が宮殿と言い張っている、宮殿にしては小さい瀟洒な邸宅に、あいさつに顔を出したところ、なにやら至極ご満悦な顔の叔父と、もうひとりの人物がいた。
「エマヌエル、いやいや、ちょうどよかった!! 紹介しよう、こちら、リヒテンシュタイン侯ヨハン・アダム・アンドレアス殿!!」
「……おうわさは、かねがね……」
アダム富裕侯……名家な上に、富裕侯と呼ばれるほどの大金持ちである。変な汗が背中に流れ、予感は当たった。
「こちらの姫君! 五女のマリア・テレジア姫君!(※同名のマリア・テレジア大公女はまだ生まれていません) とっても素晴らしい姫君でね! しかもちょうど、侯と一緒に、ここに滞在中なんだよ! ウィーンにオペラを見にきていたんだって!! 超偶然だね!! それで、肖像画お見合いを、お前が怖がってとか、話をしていたら、ちょうど姫君がご一緒だし、一度、顔を合わせてみてはどうかね? とか、話が弾んでね!!」
「…………」
『うそつけ……リヒテンシュタイン侯の姫君なんて、高嶺の花、不相応、話が良すぎるだろう……』
エマヌエルこと、
「まあまあ、そう、あせらず、いま、うちのマリア・テレジアを……」
リヒテンシュタイン侯が、そう言って、二階につながる階段を見上げると、アダム富裕侯の姫君にふさわしく、豪奢なドレスで着飾った姫君が、スロープに手をかけて……足を滑らせて、階段から降ってきた。
「マリア・テレジア!!」
「姫君!!」
『間に合うか?!』
駆け寄って、姫君を抱きとめようと、腕を伸ばしたまま、あっけにとられる。姫君は階段の上でクルリと回ると、ひらりと地面の上に着地していた。
「あー-、その、うちのマリア・テレジア、その、ちょー-っと、元気すぎるというか、なんというか……いや、でも、かわいいから、うちのテレジアは!! いま、ここで、縁談を決めてもらったならば、持参金もどんとつけちゃう!! オーストリアのうちの別邸もつけちゃう!!」
そんなアダム富裕侯の、言い訳めいた、うわずった声と、「ああ、それで売れ残っ……むっ!」そんな、叔父の言葉が、うしろでしていたのも、彼には聞こえていなかった。
「……葵の上」
「
そんな訳で、ふたりは再び巡りあったのだった。
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