そうだ、お礼してもらおう。
怖いことは無理にしない主義
無事に亀を助けた浦島太郎。亀を撫でてやると、なんと亀が話し出しました。
「ありがとうございます。浦島さん、お礼に竜宮城に連れて行ってあげましょう」
「え、どこそこ?」
亀はふふ、と笑って、海の方を指(ヒレ)さしました。
「竜宮城は、海にあるんですよ。美味しい食べ物もいっぱい。助けてくれたお礼に招待します!」
「ふ~ん」
何やら険しい表情をしている浦島。どうしたのでしょう?
「それってあれ? 泳いでいかなあかんの?」
「まあ、そうなりますよね」
「あ~──ええわ」
なんと浦島、この誘いを断りました。亀は困惑します。
「なんでです? 人間が竜宮城に行けるなんて滅多にないですよ?」
「それがなあ」
浦島、照れくさそうに微笑みました。
「海、怖いねん」
「ああ、なるほど……」
亀は爬虫類らしからぬ渋い顔をして、コクコクと頷きました。
「なんか、藻とか絡みつくの気持ち悪いし、暗闇からニュッとデカい魚とか出てくんの想像したらもう……いやあん!! 止めて! 想像させんといて!」
浦島はそう叫ぶと、身を捩りながら海とは反対方向へ駆けていってしまいました。
「まあまあ、そういうこともあるよなあ……うん。海が好きで釣りに来てるけど、海に入るのは怖いっていう人も、おるよなぁ……」
亀は必死に自分を納得させ、「ありがとう」という言葉でしか感謝の気持ちを伝えられなかった自分を責めないようにしましたとさ。
めでたしめでたし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます