Ⅱ‐9 レントゲン

レントゲン/白く映える


 死んだ猫の想いがぐにゃりと床に横たわる

 旧い町の坂をのぼって来る女性の被っている大きな麦藁帽子に目がいって

 いつのまにか、それが背後にあった

 わたしが行ってしまった

 

 昨年死んだ姪はくにゃりとした子供だった

 石畳が何処までも続いて周りが壁ばかりなので一体何処にいるのか惑って

 気がついたら、外側から見ていた

 世間を置き去りにして


 叔母は小柄な叔父にびしゃりと叩かれ続けて

 世間体だけを気にする叔父は叔母の着物に隠れるところばかりを叩き叩き叩き

 斜向かいの、愚かな町の医者は

「転んだのですか?」と問う


 生き返ったあなたはカチャリとスプーンを落とし

 その音はわたしを素通りして第二番目のわたしの耳の上を横を斜めを掠め

 知らぬうちに、そこからも遠ざかり

 闇の中に溶け込んだ


 種明かしで、この歌詞をレントゲン透視すると、こんな感じだ。


 いきかえったあなたはかちゃりとすぷーんをおとし

 おばはこがらなおじにびしゃりとたたかれつづけて

 さくねんしんだめいはくにゃりとしたこどもだった

 しんだねこのおもいがぐにゃりとあしによこたわる


 そのおとはわたしをすどおりしてだいにばんめのわたしのみみのうえをよこをななめをかすめ

 せけんていだけをきにするおじはおばのきものにかくれるところばかりをたたきたたきたたき

 いしだたみがどこまでもつづいてまわりがかべばかりなのでいったいどこにいるのかまどって

 ふるいまちのさかをのぼってくるじょせいのかぶっているおおきなむぎわらぼうしにめがいって


 しらぬうちに、そこからもとおざかり

 はすむかいの、おろかなまちのいしは

 きがついたら、そとがわからみていた

 いつのまにか、それがはいごにあった


 やみのなかにとけこんだ

 ころんだのですかととう

 せけんをおきざりにして

 わたしがいってしまった

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