Ⅰ‐8 ……じゃない

 G Cadd9 D Em7 Am7 G/B

 Cadd9 D Dsus4 G Cadd9 D Em7

 Am7 G/B Cadd9 D Dsus4


 Bb Dm7/D# Dm Gm7 C7sus4 ×2

 Bb Dm7/D# Dm Gm7 C# G# Bb

 Bb Dm7/D# Dm Gm7 C7sus4 ×2

 Bb Dm7/D# Dm Gm7 C#sus2


 D#m D#sus2 D#m Gm7 Gm7 G/B ×2


 Gm7  Gm ×n


(繰り返しかも?)


 Bb Bb/C Bb/D# Gm7


 例えば、こんなふうではなくて、次のような感じの曲だったら、わたしは今得ている優しい友人の代わりに儚い恋人を持っていたのだろうか?


 C Em Bb A7 Dm7 Bm7 E7 Am7 D7 F/G

 C Em Bb A7 Dm7 Bm7 E7 Am7 D7 F/G G7

 Bm7 E7 Am Am7 D7 G Em7 A7 D7 Dm7 F/G Fm/G C

 F#m7 B7 Eb/Bb Am7 Dm7 Dm7/G Ccau/F#(Ccau/G#?)


 F E7 Am Dm7 G C C7 Caug/F#(Ccau/G#?)

 F E7 Am Dm7 G 7 G7 C


 会いたくて会えないから震えたり、会いたくて会えないから見てほしかったり、会いたくて会えないから星の数を数えたり、会いたくて会えないからあなたを思ったり、会いたくて会えないから揺れ惑ったり、会いたくて会えないから唇を噛み締めたり、会いたくて会えないから涙が止まらなかったり、会いたくて会えないから素直な自分でいられなかったり、会いたくて会えないから眠れぬ夜にあなたのぬくもりを思い出したり、会いたくて会えないから言葉にできなかったり……していれば、もしかしたら、ものすっごーくメジャーなバンドに成れていたのかもしれないけど、でもやっぱり、それはなかったことなんだなぁ、と思うよ。


 コンビニで安い焼酎と第三のビールと不健康な酒の肴を買って五分ほど歩いてタオの住む二階建ての木造のアパートに到着。

「まあどうぞ」

 促されるまま。思ったよりも男臭くない部屋の中に入り、

「まあ座って」

 と勧められるままタオがスイッチを入れてくれた炬燵の座布団に座り、恐る恐る足を入れる。

「寒いね」

 普通に云ったつもりだが、わずかに声が震えている。

「カヲルさん、いつも独りでやってんの?」

「あそこには滅多に行かないけど、基本、そう」

 タオの不可思議な興味津々顔がくすぐったい。

「あたしの詞とかヘンじゃない。でも、ヘンて云っても理性超えてぶっ飛んでるわけじゃないし、普通程度のヘンさだし。一緒にやってくれる人、ほとんどいなくって……」

「いや、おれはいいと思うよ」

「そお、ありがとう」

「ま、ま、いっぱい飲んで……」

「あ、うん、ありがとう」

 最初はビールで乾杯する。

 それから焼酎のお湯割りにいったが、タオに歌をせがまれる。

 だから歌う。

 だけど夜中だから小声で……。

 だけど、もう愛してしまったから真剣に……。


もしもびっくり


 今もし太陽 消えたら たぶん十分後には ぼくはいない

 地球も火星も土星も 飛んでみんな迷子

 でも神様が望んだのなら それは仕方がない

 みんな一人ぼっちで生きろ


 今もし衛星 消えたら 多分一秒経っても ぼくらは元気

 飛球も加勢も怒声も きっとみんな同じ

 でも潮の満ち干がなくなって あああ、地球びっくり

 子供 生まれなくなり 破滅


 一瞬だ 絶対だ そうなんだ 

 永遠だ 相対だ ああなんで?

 発散だ 蒸発だ そうなんだ 

 分散だ 凝結だ ああなんで?

 

 きみはもういない……

(適度に繰り返し……)


 でもかみさまがのぞんだのなら それはしかたがない

 でもしおのみちひがなくなって ラララララ


 小声で曲を歌い終わると、わたしは急に昔の自分の――共作の――曲をタオに聞かせたくなる。

 それで云う。

「まあ今は、だいたいこんなふうだけど、そうじゃない時期ってのもあったんだよね」


放射


 luna……    あなたは光り

 stella……  あなたは輝き

 aqua……    あなたは煌き

 ignis……   あなたは爆ぜる


 luna……    あなたは狂い

 stella……  あなたは燃え尽き

 aqua……    あなたは干上がり

 ignis……   あなたは消える


 Caelum……

  宇宙(そら)を駆けて行(ゆ)く数多(あまた)の魂が、

 Glacies……

  祈りの宝石として結晶し、そして割れる!


 luna……    季節は巡り

 stella……  心は戸惑い

 aqua……    わたしは溺れて

 ignis……   あなたは熔ける


 Caelum……

  宇宙(そら)を駆(か)けて行く(ゆ)数多(あまた)の塊(かたまり)が、

 Glacies……

  命の宝石として結晶し、そして枯れる


「カヲルさんは昔何か……誰か、亡くしたんだね」

 教えてもいないのにタオがそう云い、

「可愛想に……」

 と、わたしを背後から抱きしめる。

 でも、それは異性愛じゃない。

 でも、あたしはそれで構わない。

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