02・ロベルト本郷

 キャプテン翼の主人公・大空翼。

 彼の誕生日は7月28日。

 だが、生年はあまり知られていない。

 翼くんは第6回全日本少年サッカー大会に小学6年生として参加していることからして、1970年生まれであることが推測できるのである。

 実際に生きていれば、今年54歳なのだ。


 その師匠である、ロベルト本郷。

 ブラジル・ポルトガル語では、頭文字のRは発音しないため、ブラジルではホベルト・ホンゴーと呼ばれていたであろう元ブラジル代表10番。

 彼はどんな選手であったのだろうか?


 実は、ロベルト本郷がブラジル代表で10番を背負っていたであろうとき、実際に10番を背負おうとしていたのは、1978年のワールドカップでは背番号8であった鹿島アントラーズの英雄・ジーコであった。

 フィクションであるとはいえ、ロベルト本郷はジーコを押しのけて10番を勝ち取るだけの実力を持った攻撃的ミッドフィルダーであったのだ。


 ジーコと同世代・同い年だとすると、ロベルトは1953年生まれだと思われる。

 もし、ロベルトが実在していれば、1982年のブラジル代表は、ロベルト本郷、ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾによる『黄金のクインテット』によってワールドカップ優勝を飾っていたことは想像に難くない。

 この大会でブラジルが敗退してしまったため、サッカーはより守備的になったと言われる。

 ロベルトがいれば、サッカーの歴史すら変わっていた可能性があるのだ。




 そしてロベルトが、日本に残した翼がひとりでも世界一の選手になることができるように書き上げた、自分のサッカーの知識と技術を詰め込んだ、通称【ロベルト・ノート】。

 彼がクズの本懐として翼を置き去りにしてブラジルに帰国した際、翼に残したこのノート。

 これによって、日本サッカー界が狂乱に巻き込まれることとなる。


『翼よ、ミッドフィルダーになれ』

 まず最初に、このノートでロベルトが翼に残した言葉。

 このひとことにより、現実の日本中のサッカーの巧いやつらは、こぞって攻撃的MFになってしまったのである。

 その副産物が、中田英寿さんや、中村俊輔さん、小野伸二さんだったりする。


 ロベルトはポルトガル語だけでなく、日本語をも自在に操ることができ、そして読み書きもできる。

 翼のために、ノート1冊分の本すら日本語・漢字で書くことができる。

 日系ブラジル人として、サッカーの能力だけでなく、高い教養を持っていることも、そこから理解できる。

 翼のために涙を流し、翼の父に恩があるからと翼の師匠になり、大空家が離散するかもしれないという理由で翼をブラジルへ連れて行くのを躊躇った。

 酒に溺れ、自殺を試みるクズだけど、とても人情に厚い人なのだ。

 サッカーに絶望し、翼というみずからの弟子を世界一にすることに生きる希望を見出したロベルト。

 そして、それに応えようとし、実現した翼。

 ふたりの絆は、涙が出てしまうほど強い。




 ロベルトのプレースタイルとしては、攻撃的MFである翼を少し弱くした感じだと考えられる。

 サイクロンは身に着けられなかったし。

 しかし、ジーコを越えているので、高速ドリブルからのスルーパス。そして百発百中のフリーキックとシュートを持っているだろうとは考えられる。

 ファミコン版で【コインブラくん】が出てくるが、あれは本名がアルトゥール・アントゥネス・コインブラであるジーコであるとともに、ロベルト本郷の現役時代だと私は思っている。めっちゃ速い!!!


 現代サッカーでいうと、カカーを強化した感じと思われる。

【必殺技】として『ドライブシュート』と『オーバーヘッドキック』を持っていることは確実。

 ひょっとすると『ごういんなドリブル』と『ヒールリフト』も持っているかもしれない。

 酒癖が悪く、負傷癖があるだろうから、【ガッツ】は750くらいと予想される。

 ウナギの蒲焼きが好きなので、もうちょっと高いかもしれない。

 ジーコと同じで、PKは大事なところで外す可能性があるけれども……




 もし、ロベルト本郷が網膜剥離に陥ってなければ。

 翼の父・大空広大が彼を救っていなければ。

 酒に溺れていなければ。

 日本サッカー界は、ロベルト本郷が苦境に陥って、人生を諦めたある種のカスになっていなければ、ワールドカップに出場できていなかったかもしれないのだ。


 世界に一番影響を与えた日本の漫画と言われる、キャプテン翼。翼をロベルトが見出していなければ、その物語は始まらなかった。

 彼が【ウイスキー1本分の価値】を見出した翼vs若林の勝負は、大袈裟ではなく、まことに日本どころか、ワールドサッカーの転換期であったかもしれない。

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