04・アジアのリーグ

 世界のサッカー界は、驚くべきスピードで進化を遂げている。

 それはアジアでも例外ではなかった。

 

 ワールドカップでのアジア出場枠が、次回から今までの4.5枠から8.5枠に増えた。

 それが、中東やら東南アジアの野心を刺激したのであろう。

 彼らは今までの彼らではなかった。


 今までは、日本・韓国・オーストラリア・イラン・サウジアラビアとだいたい出場枠が決まっていた。

 それが単純に倍になるのだ。我も我もと思う国が出てきてもおかしくない。


 インドネシア・リーグは、世界で一番盛り上がっているリーグと言っても過言ではなくなってきた。

 サポーター同士の抗争で死人が出たり、スタープレーヤーの年俸は一億円を超えている。


 イランのテヘラン・ダービーは8万人収容のスタジアムに、12万人が駆け付けることで一定の知名度を保っている。


 サウジアラビア。

 それまでは、チームが運営していたところを、急に国が運営するようになった。

 端折って言えば、クラブ運営費が国家予算で出るようになったのだ。

 サウジアラビアという国名は、『サウード家のアラブ』という意味である。

 その、王家が本気を出せば、世界各国のスーパースターも買えるということだ。

 一方で、サウジアラビア・リーグは、人気チームは数万名の観客動員が見込めるが、そうでないチームは数百名らしい。

 そのギャップと、生活習慣の違いにより、次々と金で集められた傭兵たちはサウジでの生活にギブアップを始めている。

 サウジアラビアリーグは金に釣られてキャリアを捨てる選手か、キャリアをほぼ終えて年金を貰うための選手のリーグになるかもしれない。


 そして、中国。

『金でサッカーは強くならない』ということを見せつけてくれたチームだった。

 監督の李鉄は、付け届けがなければ選手を起用しないことを暴露されている。

 習近平が国策としてサッカー強化を掲げていたが、それも失敗に終わった。

 前述のとおり、『中国人はサッカーには向いていない』のだ。


 どのリーグにも言えることだが、プロ化は良いことづくめである。

 しかし、そのリーグの年俸が高ければ高いほど、本場である欧州に進出しようとする選手が減っていくのも事実。

 そういう意味では、Jリーグはいい塩梅になっているとは思う。


 しかし欧州進出は、国内リーグの空洞化も心配される。

 欧州で一定の成果を伴った選手が、Jリーグに戻ってきて還元するというのが、今の日本の流れである。

 香川真司選手などは、その好例であろう。


 モデルとして、日本のプロ野球、NPBがある。

 野球ファンは、自チームの選手が活躍しすぎるとメジャーリーグに行ってしまうというジレンマを抱えている。

 だが、正式に手続きを踏んでメジャーに行った選手は、日本人全員が応援しようという空気を作っている。

 そして、メジャーではあまり華々しい業績を残せなかった選手も、日本のチームに戻ってまた活躍する。

 まるでNPBがメジャーリーグの下部組織のようであるが、野球ファンはそれに一定の納得をして、それでも自分の贔屓のチームを応援することを忘れない。


 それはとても良いことである、と筆者は思うのだ。

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