03・メディアとの関わり方

 伊東純也選手が週刊誌によって告発されたのも、大きな問題だろう。

 日本サッカー協会は、『彼は離脱しない』と言っておきながら、『彼の意志で離脱する』と言って軸がブレていた。


 思い出させるのは1994年・アメリカワールドカップのアルゼンチン。

 ディエゴ・マラドーナがドーピング発覚(自身は否定)によってチームから離脱・追放され、その後、アルゼンチン代表はベスト16で敗退した。

 ガブリエル・バティストゥータによると、そのときの衝撃は計り知れないものだったらしい。

 それと同じことが今回、日本代表にも起こったのではないだろうか。


 もちろん、伊東選手が完全に潔白だとも今の段階では言えない。

 しかし、この時期に週刊誌が取り上げて日本代表に良い傾向が起こりえるはずがない。


 士気はどん底に落ちた。

 そう言って過言ではないだろう。




 お笑い芸人、アンジャッシュの渡部建さんのスキャンダルが出たとき、週刊誌の売り上げは4億円を越えたそうだ。

 そして、松本人志さんのスキャンダルでは、雑誌が売り切れたらしい。

 週刊誌は売り物だから、それを購入する人が居る限り売れ続ける。


 だけれども、最近の日本では一度失敗した人に対しての私的な制裁が酷すぎるとも思う。

 芸能人のスキャンダルでよくあるのが不倫だ。

 不倫は家族の問題であって、家族が許せばそれで良いと個人的に思う。

 家族が許さなければ、その人は孤独な生涯を歩むだけだ。


 

 まあそれは置いといて。

 伊東純也選手の場合、タイミングが悪すぎる。

 まさか、日本代表の一番の敵が日本国内に居るとは思わないではないか。


 雑誌も、一番売り上げが伸びるときに出したいのはわかる。

 だが、週刊誌は一部の人間を完全に敵に回した。


 伊東選手は、逆告訴をした。

 週刊誌相手ではない。告訴をしてきた女性に対してだ。

 いろいろ意見があると思うが、一度性的合意した後に、『あれはレイプだった』と言われては堪らない。

 これで、キャリアをふいにしたどころか、刑務所に叩き込まれた選手がアメリカには居るらしい。

 恐ろしい世の中になったものだ。




 日本でスター選手になるには、マスコミの後押しが必要だ。

 野球の長嶋茂雄さんなんかは実にメディアと上手くやっていた。

 桑田真澄さんなどは、ドラフトの前後でマスコミの取り上げ方の差に驚いたらしい。

 

 サッカー界では、カズこと三浦知良選手がJリーグを盛り上げるためのスター・システムに乗っかった。

 そのあと出てきた中田英寿さんは、メディアが自分の話した内容を歪曲するということでマスコミと非常に険悪な関係だった。

 強引に迫ってくる記者に対し、『虫けら』と言ったことは有名だし、実際マスコミから蛇蝎の如く嫌われていた。

 それまでは一般のファンなどは、メディアを通しての選手しか知らなかったので、選手のイメージというのはマスコミが作り上げていたものだった。

 前述の桑田さんが、いわゆる『KKドラフト』で、それまで純朴な野球少年から一夜にして国賊・非国民へと化したのは、メディアの負の一面を端的に象徴している。


『インターネットで、メディアという問屋を通さず、直にファンと繋がる』

 これを一番早く取り入れたのが、中田英寿さんであったことは今では当然のように思われる。

『nakata.net』が出来たとき、私も中田さんにEメールを送ったことがあるひとりであったりもする。


 マスコミも、もうちょっと成熟しなければならない。

 人を下げることでなく、上げることで売り上げを伸ばすことを考えては如何だろうか?

 批評で落とすことはあってもいい。

 だが、普通の世界で生きていない人に対して、その人格で批判するのはどうだろう。


 そして、幅広い人間に情報を届けられるように、せめて代表戦は地上波で放送すべきだ。

 さらに、そういう記事を書くのであれば、記名制にするべきだ。




 伊東純也選手が潔白であることを切に願う。

 そして、週刊誌のゴシップで一生を棒に振る人間が出ないことも。


 警察に行くより先に、週刊誌に持ち込むとか……ちょっと、ね。

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